ここが平賀津波の研究室……
ずいぶんとガラクタめいた物まで置いていますのね。
部屋の主はどちらに……ああ、見つけましたわ。
もしもし、失礼いたします、平賀博士。

……なんだ君は。
ああ、御所にわらわらといるという、あの……

確かに帝さまの奉仕女官ですが、特定の虫のように言うのは止めて下さい。
あの……本当に猫が話しているのですね。

にゃははは、わたくし久重は津波様の科学力の結晶ですから、津波様のお言葉をお伝えするのなど朝飯前です。

……ぼそ……

にゃひっ！？　い、いえいえ、滅相もない！
津波様のお言葉をお伝えするという大事な任務を舐めてかかっているなどということは、決して――

……ぼそっ。

はいぃ、本題に戻らせていただきます。
こほん。で、えーと……何の用ですか？

はあ、実は私、東郷長官の大切な忘れ物を届けに参りまして。
司令室の場所はどちらでしょうか？　忘れ物とは何だと思われます？

ふん……東郷くんの忘れ物か。
それも『大切な物』と。

はい。

海軍長官の大切な物ときたら、答は決まっている。
予算だろう、予算だな？
それも研究開発費に違いない。
さあ私に渡せ。渡すのだ。たちまち立派な技術開発をしてやろう。

いえ、お金ではありませんが。

なんだ、つまらん。
予算があれば、あれをこうして、そうして……ぶつぶつ……

それであの、何だと思われます？

ん？　東郷くんの個人情報に興味はない。
司令室への道順は、外の通路にいる者に聞け。

はあ、それでは……失礼しました。

さて、通路に戻りましたが……あらっ、宇垣さくらと山下利古里が！
御所で会うこともある者ですし、慎重に接しなくては……

おお、女官殿。
海軍司令部に何か用ですかな？

ええ。
先日、東郷長官が御所に忘れ物をされたので、届けに参りまして。

まったく、あの男は……
帝のお住まいたる御所に私物を忘れるなど、たるんでいる。

はっ……東郷が御所に忘れ物とは。
よもや、先日の御前会議の折にわしがくれてやったブルブルワーカーではあるまいな！

ぶる……宇垣長官、なんと？

ブルブルワーカー、様々な箇所の筋肉を鍛えられる鍛錬マシーンだ。
あの軽ーい男はもっと鍛錬に励んで軟派を治すべきだと思ってくれてやったのだ。

宇垣殿、いつの間にそのような……素晴らしい心遣いです。
実は私も、正しく生きる為の十か条をしたためて、先日東郷に……

その書状なら……私、見ました。

っ、な、なんだいきなり。

東郷さんはそれを開いて目を通すと、
「はっはっはっ、利古里ちゃんは可愛いな」
と言って再び畳んで懐にしまっていましたよ……
それからは一度も見ていません。

それはそれは……

くっ、まったく、いっそ果たし状でも送ってやろうか……

おとーさんとけっとーするの？

うわっ、あ、いや……

まあっ、東郷長官のご息女ではありませんか。
こんな所を当然のように歩いていていいのですか？

ふふふふ……
真希ちゃんは時々遊びに来るのです。
秋山さんが止めても東郷さんが止めても無駄なのです。
無駄無駄……

おとーさんならこっちー。
でも、けんかは、メ、だよ。
なかよくしないといけないの。

い、いや、本気で果たし状を書く訳ではっ……
いや、怖気づいたのではない、この子の前で争う訳にはいかんというだけだぞ！

はあ、はい……

そうだ、この女官殿が東郷殿への忘れ物を届けにきたのだ。
案内してやってくれ。

ええっ！？

いいよー、じゃあいっしょに行こうね、おねーさん。

ああっ、そんな、私も本人と対面するつもりはっ……
あ、いえ、あああー。

（うう、噂によれば、東郷毅は智将で勘が鋭いとか……
　深入りしては危険ですのに、司令室まで来てしまって。
　早めに引き揚げなくては……）

わざわざ御所からお越し頂いたのに、本人が不在で申し訳ありません。
忘れ物を届けて下さったとうかがいましたが……

はあ、はい、その通りで……
このハンカチなのですが、手縫いでお名前が刺繍されていますから、大切なものかと。

あーちゃん、これおとーさんのお名前？
なんて書いてあるの？

失礼、しばし拝借します。
真希ちゃん、これはね……ん？　Ｔ．ＴＯＵＤＯＵ？

あらっ！　あらあら、まあまあ、私としたことが！
てっきり東郷長官のものかと！　勘違いでしたのね！？

とうどうさんって書いてあったの？
じゃあまちがいなんだ……

それでは私、失礼いたします！
どうもお騒がせいたしました！

あっ……はい、そうですか。

（計画通り！　さて、退散退散……）
……わぷっ！？

おや、失敬。
ん？　御所の……

しし、失礼いたします！

ふう……
あぶないあぶない、東郷毅本人にぶつかってしまうとは……
今ので何か嗅ぎつけられていないことを祈らないといけませんわね。

ふんふん……
何を嗅ぎつけると？

きゃーーーーーっ！！
しっ、柴神様！？

これ、街中でそんな大声を出して……
耳がきーんとなったぞ。

あっ、し、失礼いたしました……
お散歩なさってらしたのですか？

うむ、すると女官の姿が見えたのでな……
そなたはおつかいか？
……ん？　ふんふん……そなた、もしや……

いっ、いえいえ、私はちょっとした勘違いで海軍司令部まで来てしまっただけで、その……
決して悪事を働こうという訳では……
あの……申し訳ございません、嗅がないでくださいー！

ふむ……そうかそうか。
勘違いであったのなら仕方が無い。
用事が済んだのであるなら、ともに御所に帰ろうか？

は……はいっ、ありがたき幸せ……

うむ。いたずらはほどほどにな。

はう……

現在そちらの皆さんに知られている国ですと、
　日本帝国：１
　ドクツ第三帝国：１
　ガメリカ共和国：９
　エイリス帝国：11
　人類統合組織ソビエト：６
　中帝国：３
となっております。
エイリス帝国は最も栄えた時代には19星域も支配していたのですわよ。

さるがっそー？　とは何ですの？　ちょっとそこなスタッフ、説明なさい。
はあ、なるほどなるほど……皆さんの世界の不可思議な海域ですのね。
こちらの世界の宇宙ではワープ事故があれば即座に行方知れずですので、さるがっそーだらけみたいなものですわ。
新星域については、最新の発見が二十五年前で、それ以前はガメリカ星海域の発見までさかのぼりますから……そうそう見つかるものではございません。

私思いますに、申し上げると隠しにならないのではございませんこと？

のちのちの情報公開をお楽しみにだそうですわ。

殿方の好みも多岐に渡ることでしょうし、一概には申せませんが、少々なら登場するやもしれません。

んまー！　なんとまあ、とんでもない！
この日本帝国の国民に帝さまに不満を持つ不届き者など、いようはずがありません！
だってだって、あんなにもお可愛らしくて、あんなにもお優しくて、あんなにもお素敵な帝さまなのですもの！
少しばかりの不利益がなんだというのでしょう、そもそも私たち日本人は――

…………

あら……？　なんだか中略されたような気もしますが、まあよいですわ。
そういった次第で、私の主観ではそんな事態などありえませんが、一応、日本帝国では法に触れない限り思想の自由は認められております。

日本星域の主星「日本」の首都にありますわ。
宇宙空間へはそれなりに迅速に出られますが、何ゆえ地上に築いたかと申しますと、それはやはり、人間は地上で生きる生物だからですわね。

相撲の興行は現在も行われておりますが、大昔に賭博事件が発覚して以来、国技からは外されたそうですわ。

1008歳でチュウリップの名札はいたしませんでしょう。

宇宙線病を患ったそうで、ああ見えても大変なのだそうですわ。
日本帝国を守る為、長生きして頂きたいものですわね。

日本帝国で取材が行われた日、住まいの鍵が故障して出られず、お休みだったそうですわ。

平賀津波の発言を代行している「久重（ヒサシゲ）」ですわね。
久重は機械の類ではなく、生の猫ですわ。
平賀津波の手によって知能強化と声帯改造を受けており、主の小さな小さな声での発言を骨伝導で把握して発声するとか。
時々、本猫の意思での発言もするようですわよ。

岩砕木ですか、私の倍は生きておりますわね。
私が物心がついた頃には、すでに史羅家に仕えておりましたの。
史羅家が代々帝女官を輩出しているように、岩砕木家は代々史羅家の護衛などを勤めておりますのよ。

…………

岩砕木は無口なのですわ。

宇垣さくらはもともと、そして現在も海軍所属ですわ。
外務長官を拝命して以来、提督の仕事は休んでいるそうですが、軍籍は抜いておりません。

殿方でしてよ。
滅多なことを口にしてはなりません、小澤祀梨が寄って来てしまうではありませんの。

それを口にしたら……戦争ですよ……
それと海軍と陸軍は――あ、山下長官が睨んでいます。
撤退……

まずは落ち着かれますように。

とある者に非常に怒られるのではないかと……私の想像ですけれど。

こちらの……世界でも……戦場ジャーナリストの……仕事は……あるよう……ですわよ。

あーあー、テステス。マイク良好。
特ダネの予感！

まあ、そんな事実が……
私、「視力が悪い眼鏡っ娘萌え」とやらに決まっていると思っておりましたが、調べて参りますわね。
……という話があるのですけれど、伊達眼鏡はありなんですの？

・・その時次第・・
あまり深く考えたことないです

なんという適当さでしょう……
それでは、こちらの世界のハニワは？

伊達眼鏡、駄目！　駄目ったら駄目。
女の子はみんな視力悪くないといけないの！

ではこの写真、岳画殺の伊達眼鏡については？

それはそれ、これはこれ。

こちらの世界のいちばんえらいハニワはいかが？

………眼鏡で不幸な娘が最高です。うへはへひはは・・

ひとまず私、難を逃れたようですわ。

なにぶん、三年前から作っているようですので……
どうしましょう、ほとぼりが冷めるまで寝かせておきます？

ただのえろげなのでだいじょうぶ
ところで体当たり攻撃する謎の漁船をつくったんですが
…絵がまにあわないので本編に入らない？　ざんねん