−−−−
ストーリー

「本当に好きな人との交わりは、
 そうでない人との交わりよりもずっと良いものになる。
 相手が愛おしいと思う気持ちは、どんな媚薬にも勝るのだから」

それは、経験上では誰だって知っていることだ。
一つになれる喜び、躰が溶けていくような悦楽。
幾千万の言葉を交わすよりも通じ合えたと感じられる抱擁。

その気持ちを、ほんの少しだけ助けてくれるのが、蕩果という薬だった。

セトル=ジャンとリズが蕩果を使ったのは、
互いに許し合える想いが何より先にあったからに他ならない。
だから、恐ろしいほどに蕩果が効いた次の朝、二人は幸せを感じていた。
何もかもさらけ出して求め合える、そういう相手と結ばれたことが嬉しくて。

──けれど。

未来を奪われ、絶望に囚われた時、
あふれるほどの愛おしさが残酷な欲望へと姿を変える。
歯止めが利かなくなった二人に引き寄せられ、あるいは巻き込まれ、
隣人、友人という形で均衡を保っていたはずの関係が脆くも崩れ去っていく。

あなたが欲しい、という言葉の裏にあるもの。
剥き出しになった情念が辿り着く先は、破滅か、それとも──。

−−−−