C H A R C T E R S
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リズ リジエンヌ・エイパ (愛称リズ)

軽い気持ちで使った蕩果が恐ろしいほどに効き、
我を忘れてセトル=ジャンと求め合った時、
リズの心は幸せに満ちていた。
何もかもさらけ出し愛し合える、そういう人と
巡り会い、結ばれたことが嬉しかった。

だが、効きすぎた蕩果を怖がったリズは、
もう蕩果を使うことはないだろうと思っていた。
彼女が欲しいのは、快楽ではなかったから。
セトル=ジャンと共に生きていく未来だったから。

──その封印は、じきに解かれる。
奪われた未来、閉ざされた明日。

そして、残酷な欲望に溺れていく。

「もう、その悦びだけあればいいって、
 そういう風に考えてしまう自分がいて……」


セトル=ジャン・ストニ

何もできなかった。
自分は無力なのだと思い知らされただけだった。

リズと共に築き上げてきたものが砂上の楼閣に
過ぎないと悟った時、彼の中に残っていたのは、
愛おしさだけだった。
──離れたくない、愛し合っていたいという
想いだけだった。

「それだけあればいいんだ、もう……。
 楽でいいよ、考えることもない……」

セトル=ジャン・ストニ

クリストフ・レノンセル クリストフ・レノンセル

欺かれた訳ではなかった。
伯爵は、セトル=ジャンとリズに逃避行を薦めた
時から何一つ変わってはいなかった。
前もって伝えられていた別れの時が来ただけだった。

そう解っていても、受け入れられない。

「清濁併せ呑む、という言葉もある。君らも
 子供ではないのだから、納得ずくで聞き入れて
 欲しいんだがね」


フィデル・フィッド

彼の想いは、セトル=ジャンと同じだった。
ただ、リズが幸せになるように、と。

だが、リズの幸せを願うが故に、
二人の仲を認めようとはしなかった。

「恋に落ちた人間は必ず運命を口にします。
 自分たちの関係が特別だと思い込もうとする。
 ですが、特別な恋などこの世のどこにも
 ないんです」

フィデル・フィッド

トマ・トリュオイ トマ・トリュオイ

彼は、何も知らない。
セトル=ジャンとリズの関係も。
自分の想いが欺かれたことも。

「返して下さい。私の一番大事な人です。
   ……そう誓い合った女性なんです」



ベルナデット・ヴォヌハース

満たされぬ想いを抱えたまま、独りで生きてきた。
満たされていた過去の記憶にすがって、
現在と未来を否定して。

それが幸せなのだと思っていた。
自分にとって最善の選択だと思い続けてきた。

けれど、抗えない。
誰かに支えて欲しいと寂しがる心。
抱き締めて欲しいと疼く躰──。

「悪いというなら、私なのよ……。
 情けない女だった私が、全部……」

ベルナデット・ヴォヌハース

オルガ・エアレ オルガ・エアレ

他者を──男を避け続けてきたのは、
決して口には出せない過去があったからだった。

それを、よくあることだと言い切るのは簡単だ。

だが、彼女の心と躰に残った傷は深く、
癒えるどころか膿んで、今も痛み続ける。

なのに、オルガは微笑む。楽しそうに。

「離れたくなくて、溺れたくて……ね。
 求めすぎて壊れそうだったのでしょう……?
 だから、今、私が居るの……」


ジェレミー・アブルゥエ

想いを寄せる女の心が、今もまだ、
死んだ男との想い出で満たされているのは知っていた。

だからと言って、諦められはしない。
彼女はまだ生きている。自分の手の届くところに居る。
守ってやりたかった。自分なら出来ると思っていた。

「守りたいし、愛したいし、愛して欲しいよ。
 お前だって一緒だろう? セトル=ジャン……」

ジェレミー・アブルゥエ

テオ・アルトー テオ・アルトー

潔癖と言うには、まだ彼は幼かった。
穢れを知らないから、清らかで当然だと言えただけ。
正論と真実は常に同じものだと思っていた。
愛情と欲求は別のものだと信じていた。

けれど、皆、いつかは穢れていく。
望む、望まないに関わらず。

「僕は、早く……大人になりたい……。
 大人になれば、こんな想いは
 上手に片付けられるはずなんだ……」


カティア・トレン

???

カティア・トレン

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