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誕生
縁側で絵を描いて待っている。
車が止まる音。
人が降りてくる気配。
玄関での人の声。
描きかけの絵をそこに置き、駆け出す。

「おかえりなさい、お父さん、お母さん」
「ただいま、二藍」

「赤ちゃんは?」
「ここにいるよ」

「寝てるね」
「ああ」

「名前、決めてないよね?」
「お前が決めると言っていたからな」

「ふふ」
「まったく…言い出したらきかんからなぁ。
 ……で…決めたのか?」

「うん」
「なんて名前にするんだ?」

「朱華。お父さんが、この前私に買ってくれた晴れ着の色。私、あの色大好きだから」
「そうか…朱華か…」

「駄目かな? お母さん」
「ん…綺麗でいいと思うわよ」

「じゃあ、決まりね、お父さん」
「ああ」

「ふふ…よろしく、朱華。二藍おねーちゃんだよ。
 おむつ換えてあげるね。あ、ミルクも飲ませてあげる。お風呂も一緒に入ろうね。
 おっきくなったら、遊んであげる」
「まあ…笑ってるわよ…寝ているのに」

「名前、気にいったのかな」
「そうかもな」

「私…この子がお婿に行ったら泣いてしまいそう」
「おいおい…今からそんな事言って、どうするんだ…」

「だって…」
「ふふ…そんな事言ってたら、朱華の方が、二藍ちゃんべったりの子になってしまうかもしれないわよ」

「そうなるといいな、私…いっぱい可愛がるの。
 二人で…ずっといてもいいよ。
 だって、弟だもん」

三人が笑う。
一人を見て笑う。
ほっこりとした日が差す庭で…


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