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津崎悟が、妻の香苗の妊娠に気付いたのは、寒さも深まってきた12月のことだった。 「どうして黙っていたんだい?」 香苗は答えない。 「別に君を責めてるわけじゃない。ただ、どうして教えてくれなかったのか知りたいだけなんだ」 香苗はうつむいたまま答えない。 「・・心配なんだよ。君は、しっかりしてるけど、その分自分一人で何もかも背負い込み過ぎる。・・それだけが心配なんだ・・・」 悟の真剣な眼差しが、香苗の心をこじ開ける。 「・・不安・・だったの」 香苗の声は震えていた。 「・・計算してみたら・・妊娠したのは、夏頃だから・・・」 ああ、そうか。悟は納得する。 「・・あなたとは・・あまり、してなかったし・・・。もしかしたら・・彼との子かもしれないって・・・」 香苗は顔を上げる。瞳には強い意志がある。 「・・中絶するつもりはなかったわ。産まれてくる子に罪はないもの。・・でも、もし彼との子だったら、この子は、私の裏切りの証になる・・・」 香苗は悟の眼を見返す。 「・・悟。あなた、愛せる?」 悟は、その瞳が、奥にある想いが、なぜだかとても・・・ 「・・何を・・言ってるんだ・・・?」 腹立たしかった。 「愛せるに決まってるだろう!?」 激昂した。久しぶりだった。 「愛せるさ!当然だろう!?誰の子供だってかまわない!君の子だ!愛せるに決まってるだろう!」 激しく渦巻く感情が、そのまま言葉になっていく。 「君の髪が好きだ。君の目も、鼻も、耳も、口も、手も、脚も、体も、声も、匂いも、ぬくもりも、心も・・・全部好きだ。君のすべてが好きだ!大切だ!愛してるんだ!」 視界が滲んでる。格好悪いな。 「・・君の子だ・・愛せるさ・・当然だろう・・・?」 香苗が何か言おうとする。でも、言葉が上手く出てこない。 「・・あなた・・私ね・・・」 悟が一つ息をつく。目を擦って、香苗を見る。 「・・私・・・」 悟が笑う。 「大好きだ。世界で一番、君を愛してる」 手を握る。ぬくもりが寄り添う。 「・・ありがとう・・・」 それ以上、言葉はいらなかった。 「・・なんて事もあったなあ」 病院の一室。悟、香苗、そして、新しい命。 「結局、僕と君の子供だったね」 二人は可笑しそうに笑う。 「あんなに心配して損しちゃったわね?」 優しく微笑む。香苗は、夫のこの表情が一番好きだった。 「たとえ、僕の子じゃなくても愛せるって言ったのは、本気だよ」 悟は恥ずかしそうに頬をかく。 「それにしても・・本当に、そんなに・・してなかったのに・・ね?」 腕の中の小さな命。 あの子にも教えてあげなくちゃ。 その彼から香苗に手紙が届いたのは、それからもう少し先の事。 end end ※これは「妻みぐい2」香苗エンドの、なんというか、アナザーストーリー?みたいなものです。勝手に子供一人増やしちゃってるんで、元ネタからかなりかけ離れちゃった感がありますね。 |