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中 編 諸行無常の響きあり 「はぁ〜・・・」 「ん?どしたの和美ちゃん?」 愛する和美の深い溜息に、早苗は和美の顔を覗き込んだ。 だが、和美はその早苗を睨み付けると・・・ 「・・・裏切り者」 「ぁぅ?!」 さて、荒木家で行われる「闇鍋パーティー」の日がやって来たわけであるが、まだ開 始時間には少々早く、メンバーはまだ全員揃っていなかった。 家主の龍は、パーティーに必要な食器や箸の準備など、あれこれと準備に追われてお り、綾子はその手伝い。 また、この手の宴会が大好きなハズである、龍の祖父で、更には和美達の通う日那高 校理事長である陽炎は、幸いなことに(?)出張中であり、この場に姿を見せてはいな かった。 現在、和美と早苗の他に龍宅の和室にいるのは・・・ 「和美先輩、ごめんなさいですぅ〜」 「・・・裏切り者ぉ〜」 「はうぅ〜?!」 その和美の一言に泣き出しそうになっている磨鈴と・・・ 「和美御嬢!申し訳(グリグリグリ!)ございやせん!」 「う〜ら〜ぎ〜り〜も〜のぉ〜!」 「へへぇえええ〜!(キュババババ!)」 畳にドリルの如く額を擦り付けている大下であった。 それにしても一体ナニが和美をココまで追い込んだのであろうか? 「はぁ〜・・・こんなコトなら、休めば良かった・・・」 再び深い溜息と共に、テーブルに突っ伏す和美・・・ 「・・・ぁう〜」 「・・・はぅ〜」 「・・・はぁ〜」 その姿に、皆も各自の手にした「モノ」と、落胆している和美の傍らに置かれたビニ ール袋からはみ出している「コンニャク」と「インスタントラーメン」の姿を交互に見 比べて、和美同様に深い溜息をつく・・・ そんな、これから宴会であるというのに、随分と重苦しい空気に包まれてしまったそ こに、器や割り箸を持った綾子がやって来た。 「まぁ。和美さん。どうなされたのですか?」 「綾子・・・みんなが裏切ったのよぉ・・・」 「え?!一体ナニをですか?!」 「あのね、みんなが・・・ん?まさかとは思うけど・・・綾子、あんた今日の食材だけ ど、モチロン『まともなモノ』を持って来たわよね?」 「え・・・今日の食材ですか?」 「そう。今日の・・・まさか・・・」 「あ、あの『羽目を外す』のも、たまには・・・」 「綾子!『羽目を外す』のと『理性が外れる』のは違うでしょう!?」 「ちょ、ちょっとだけです。ちょっとだけ『冒険』しちゃいました・・・」 「そんな・・・綾子は・・・綾子だけは『良識のある人』だと思っていたのにぃ!こう なったら(ダッ!)私もとびっきりの『食材』を買ってきてやるぅ!」 「あ?!和美ちゃん!ドコ行くの?!」 財布を握りしめて部屋を飛び出していった和美に、取り残されたメンバーの間を、気 まずい空気が流れる。 「あぅう・・・和美ちゃんに悪いことしちゃったかなぁ・・・」 「えぇ・・・まさか和美さんだけが・・・」 「和美先輩・・・」 「悪いことしやしたなぁ・・・」 と、そんな飛び出していった和美とは入れ違いに、ナニやら紙袋を片手にした由香里 が、怪訝そうに後ろを振り返りながら入ってきた。 「こんちわ〜・・・って、どしたんだろ?」 「あ、由香里ちゃん。早かったね」 「ねぇ早苗。和美のヤツどうしちゃったわけ?凄い勢いで飛び出していって・・・あや うく鬼タックル喰らうトコだったわよ?」 「・・・あのね。さっき和美ちゃんが『今日の闇鍋に入れる食材は、ナニを持ってきた のか?』って話をしてたんだけど・・・」 「そりゃダメでしょ?言ったら闇鍋の意味がないモン♪」 「うん。早苗もそう言ったんだけど・・・」 「実は、和美さんは『ちゃんとした食材を持ってきたのか?』って言う意味で聞かれた らしかったのです・・・」 「ふ〜ん・・・んで、みんなナンて答えたわけ?」 「早苗は『うん。今日のお昼に一生懸命に作ったよ☆』って言ったの」 「・・・あ、あんたの手作りか・・・」 「あっしは『自分の好物を持ってきやした』と言っただけなのですが・・・」 「・・・大下さんの好物・・・村田さん並に危険な香りがする・・・」 「私は『一度、やってみたいことがあったんです』って言ったですぅ・・・」 「磨鈴ちゃん・・・な、ナニをしてみたかったわけ?!」 「・・・私は『ちょっと冒険しちゃいました』って言いました」 「・・・綾子の冒険は怖いからなぁ〜・・・」 「そう言う由香里ちゃんは、どんなの持ってきたの?」 「え?・・・あ、あたしは・・・むぅ」 黙りこくってしまった由香里に、明確な回答が出ていないのにも関わらず、彼女もま た、ただ者ではないことを改めて認識していた・・・ そして、運命の時・・・夜の7時。 まだ多少の遅刻者はいるモノの、荒木家の和室では、今回のパーティーの発起人であ る由香里が、烏龍茶の入ったグラスを手に立ち上がり、挨拶を始めたところであった。 招待者の中でまだ来ていないのは、村田と悦美と智子である。 ちなみに、先程に飛び出していった和美は、荒い息とコンビニの袋と共に、ちゃんと 時間までには帰ってきていた。 さて、立ち上がった由香里は咳払いを一つすると・・・ 「え〜、コホン。まずは・・・まぁいつものコトだけど、あたしの急なワガママにも関 わらず、この闇鍋パーティーを開催してくださった龍さんに拍手ぅ〜♪」 「わ〜♪(パチパチパチ☆)」 「ん?和美、随分とノリがいいわね?」 「へへ・・・吹っ切れたのよ」 「ふ〜ん・・・まぁいいや。そして次に、今年の春から我々の新しい同志となった磨鈴 ちゃんにも拍手ぅ〜♪」 「てへ☆」 由香里に紹介され、磨鈴を初めて見る美貴と龍が磨鈴をしげしげと見つめる。 「へぇ〜。この子が大下さんの彼女の・・・」 「ほぉ〜、君が磨鈴君か」 「えへへへ♪初めまして。楠木 磨鈴と言います」 「私は奥山 美貴。みんなと同じクラスで剣道部よ♪」 「俺は荒木 龍だ。今年から日那大の商学部に通っているよ」 「奥山先輩に荒木先輩、よろしくお願い・・・はれ?荒木先輩って、ドコかでお会いし たような気がするんですけどぉ?」 「ん?そうだったかな?」 見つめられ、はにかみながら挨拶をしていた磨鈴であったが、今度は逆に、磨鈴が龍 の顔を覗き込む。 そんな暫くも龍の顔を覗き込んでいた磨鈴であったが・・・ 「えーと、確か前に・・・みゃああ?!羅刹様!闇の精霊がぁあああ?!」 「どうしたの・・・あ゛?!」 「みゃあああああああ!怖いですぅ〜〜!」 「お、落ち着くのだ磨鈴!これはアッシュではない!龍なのだ!別人なのだ!」 「美貴・・・俺、そんなに怖い顔してたか?」 「さぁ?」 龍の顔を見るなり、火がついたように泣き出した磨鈴を大下に任せると、由香里は皆 の方に向き直る。 「え〜と・・・そーいや、そうだったわね・・・大下さん。磨鈴ちゃんのこと、お願い しますね。そんじゃ、続いて今回の闇鍋についての『ルール』を説明します」 「へ?闇鍋にルールなんてあるの?部屋を暗くして、材料を入れるだけじゃないの?」 「違うわよ美貴さん。まぁ、説明するわね。まずは部屋を暗くする・・・」 「ふむふむ・・・」 「次に、材料を躊躇無く鍋にブチ込む♪」 「そぉーそぉー♪そりゃあもぉ〜、多種多様かつ夢の様なゴージャスな食材が入るんで しょうねぇ〜☆」 「うっく・・・和美ちゃん。怖い・・・」 「和美さん・・・どんな食材を買われてきたのでしょう・・・」 「・・・和美。吹っ切れたと言うより、キレてんな・・・」 由香里の説明に、コンビニの袋を握りしめながら頷く和美の姿に、遅れて到着したた めに、綾子から話を聞いていた孝司も不安げな表情をしていた。 いくら愛の力は無敵であると言われても・・・胃痛には効くのだろうか? そんな不自然なまでの笑顔の和美に、由香里は必死に目を合わせないようにしながら 説明を続けていく。 「そ、そして、少し煮込んでから部屋を薄暗くして各自が器に取り寄せて食べる」 「ん?それだと普通の闇鍋のように思うのだが・・・」 確かに、龍の言う通り・・・ これでは普通の闇鍋・・・まぁ、闇鍋自体が「普通」かどうかは疑問であるが、特に 変わった点があるとは思えない。 だが、そんな龍に由香里は首を振った。 「ここからが違うんですよ龍さん♪・・・ん?磨鈴ちゃんは静かになりました?」 「うっく・・・」 「あ〜、よしよし。泣くでないぞ磨鈴☆」 「あぁ。大下の膝の上にいるよ・・・」 「随分と嫌われちゃいましたね・・・まぁそりゃ『自分を殺した張本人』とのご対面で したからねぇ〜」 「はい?!今、ナニか凄い日本語が聞こえたんだけど?!」 「そう言えば、私も・・・あの時、最期は龍さんの手に掛かりました・・・」 「あ、綾子君まで?!」 えらい物騒なコトをサラリと言われ、珍しく狼狽えている龍を綾子に任せ、由香里は 説明を続けていく。 「まぁいいや。んで、違うところは、食べた人は『ナニを食べたかを申告』して貰いま す。そして、それを聞いて『入れた人も申告』して貰います」 「由香里、それも普通なような気が・・・」 「まだまだ♪回数は2回。1回目は2グループに別れて。2回目はみんなで一緒の鍋に 材料を入れて貰います☆」 「なるほど・・・それで鍋が2つ・・・」 「ちなみに、今回は昆布ダシです♪それじゃ鍋の蓋を開けて、部屋を・・・」 ようやく由香里の説明が終わり、いよいよ闇鍋が始まろうとした・・・その時。 「ちょっと(スパーーーーン☆)待ったぁ!」 凄まじい音と勢いで障子が開け放たれたのだ! そこに荒い息と共に立っていたのは・・・ 「あ・・・夏美さん。今晩はです♪」 だが、そんな由香里の挨拶には応じず、毛皮のコートには似つかわしくないビニール の買い物袋を手にぶら下げた夏美は、えらい剣幕で龍に詰め寄った。 「龍!あたしに黙って楽しそうなことをするなんて、イイ度胸してるじゃない!?」 「ちっ・・・嗅ぎつけたか。お前がいると、騒がしくてかなわんからな・・・」 「な(ムカッ!)由香里ちゃん!あたしも食材を用意してきたから、参加する資格があ るわよね?!」 「は、はぃ☆」 そう言われたところで、由香里には引きつった笑みを浮かべながら頷くしか答えはあ るまい。 由香里が頷くのを見て、夏美の口元に不敵な笑みが浮かび上がる・・・ 「龍・・・あんたに『コレ』を喰わせてやるから、覚悟なさい!」 「ふん・・・自分で喰ってろ」 「ふぃ〜・・・やれやれ。姐さん、ダメッスよ?履き物はキチンと揃えておかないとい けないッスよ?」 と、今度はそこに何故かラーメン屋の様な「おか持ち」を手にした村田が入ってきた のだが、大下の膝の上に座っている磨鈴の姿を見るなり・・・ 「おぉ〜、こりゃ皆さんお揃いでッス♪兄貴も・・・あぁあああ?!小娘ぇ!貴様、誰 の許可を得て特等席の兄貴の膝の上に座ってるッスかぁ!?」 「ビィ〜だ♪」 「むきいいいいい!この食材は、貴様が喰らうがいいッス!」 あ〜ぁ、騒ぎが余計に酷くなった。 そのせいであろうか?いよいよもって和美の「キレ具合」が悪化する。 「あはは・・・きっと夏美さんも村田さんも『凄いモノ』を持ってきたんだぁ〜♪」 そんな壊れ気味の和美に、孝司と早苗はナンとか元気づけようとするのだが・・・ 「心配するな和美。俺のは大丈夫だ♪俺は早苗だけを狙って作ってきたからな☆」 「和美ちゃん、早苗も大丈夫だよ☆孝司だけを狙って作ったんだから♪」 「二人共、お馬鹿ぁ!闇鍋なんだから、誰が食べるか判らないでしょぉ!?」 「あ・・・」 「ぅ・・・」 和美に一喝され、しょげる孝司と早苗・・・ そして、また一方では・・・ 「龍!あたしの食材を食べて、悶え苦しむがいいわ♪」 「けっ!そっちこそ、俺の食材で泣き喚くんだな」 夏美と龍が睨み合い・・・ 「小娘!今日はとっておきを御馳走してやるッス♪んもぉ、今日の食材は、この日の為 にあると言っても過言でないッス!」 「ビビビのビィ〜☆ですぅ♪私の方も、負けないですぅ!」 「二人共、いい加減にやめんか・・・」 磨鈴と村田の睨み合い、そしてそれを止める大下の姿・・・ 「美貴さん。どの様なモノを持っていらしたんですか?」 「ん〜、最近、お菓子づくりに凝っててさぁ♪」 「まぁ。私は和菓子が大好きです☆」 噛み合っていない上に、この場では物騒に聞こえる美貴と綾子の会話・・・ 「はぁ・・・なんか・・・自分の食材がスッゴイ、普通に思えてきた・・・」 それらを目に耳にしながら、由香里はチョとだけ闇鍋パーティーを後悔していた。 なぜにこんなコトになってしまったのだろう・・・ 「おっかしいなぁ・・・闇鍋ってのは『ほんのり安心、ちょっぴり冒険』なモノだとば かり思ってたんだけどなぁ・・・ナンか戦闘激戦地に放り込まれた気分だわ」 だが、由香里が深い溜息をついた時・・・ 「おぉ〜♪賑やかだねぇ。もぉ始まってンのかな智子?」 「みたいですね。早く中に入りましょう悦美。ハイ♪」 新たなる刺客が・・・到着したのである。 さて、メンバーが全員揃ってから30分後・・・ 「ん〜、出汁の方はいいね」 「こっちも大丈夫ですわ♪」 龍と綾子が蓋を開けると、それぞれの鍋の中では、沸騰したお湯の中で昆布が踊って いる。 二人は蓋を傍らに置くと、カセットコンロの火を弱め、昆布を取り除いた。 これで、準備は完了だ・・・ 「そんじゃ、グループを分けますか・・・って、もぉいいカンジに別れていますね」 「え?」 その言葉に皆が周りを見ると・・・確かに、テーブルは人数的にも、うまい具合に別 れていたのだ。 まずは・・・仮にこちらをAグループとして、メンバーは・・・ 「ほっ・・・少し安心した」 周りのメンバーに、胸を撫で下ろしている和美と・・・ 「大丈夫?和美ちゃん・・・そうだ♪孝司、もしも和美ちゃんがあんたの材料をとった ら、あんた責任をとって全部食べなさいよ?!」 「ぅ゛・・・い、いいだろぉ!モチロン、和美がお前の材料をとったら、お前が食べる んだろうな?!」 「い゛?!・・・う、うん!食べるモン!」 「・・・そこ。それはルール違反よ。とった人が必ず全部、完食すること!」 「う・・・」 「く・・・」 由香里の鋭い指摘に、言葉を詰まらせる早苗と孝司・・・ 「ぅ・・・」 それと顔色の悪い綾子に・・・ 「あたし達の材料・・・誰が食べンのかなぁ?」 「楽しみです☆ハイ♪」 何故か嬉しそうな悦美と智子・・・ 「あたしもこのテーブルか・・・まぁ。少し安心だわ」 隣の面子と見比べて、少しホッとしている由香里であった。 つまり、残りは・・・ 「ふぅ〜ん♪この子が磨鈴ちゃんね☆」 「へい。磨鈴よ、姐さんにご挨拶だ」 「はい。初めましてですぅ〜♪」 「ん〜♪可愛い娘ねぇ〜☆」 「ちなみに、この小娘は、今年から日那高に入学ッス」 「あら残念。卒業する前に逢いたかったわ。ホント(じゅる☆)可愛いわねぇ〜♪」 「あ・・・姐さん?お、お腹が空いたんですよね?!」 「えぇ。モチロンよ♪あたしは(じゅるじゅる☆)最近、飢えているから☆」 「ひぃい・・・」 「・・・夏美の毒牙にかかる前で良かったな。大下」 「龍ぅ〜。変なことを言わんでくれぇ〜」 「お腹空いたぁ〜・・・」 「ん?美貴御嬢。そう言えば桂の兄貴はどうしたッスか?」 「ウザイから、今日のことは教えませんでした♪」 色んな意味で・・・凄まじいメンバーが揃っている。 そして、遂に・・・その時は来た。 「さてと・・・それじゃ、龍さん。そろそろ電気を・・・」 「ん、判った。それじゃ・・・消すよ?」 「はい。お願いします」 「んじゃ・・・よっ(パチッ)おぉ。結構暗いな」 「う〜ん、見事に真っ暗ですね。それじゃ各自は手持ちの材料を準備してください」 龍の手によって灯りが消されると、外から漏れる月や僅かな街灯りだけが、部屋の中 のシルエットを浮かび上がらせる。 そんな中で、各自は材料を手にして・・・ 「みんな。ヤケドをしないように気をつけて(キャポ☆)・・・ん?」 と、そう言い掛けていた龍であったが、その瓶を開けるような音と同時に、鼻にナニ やら独特の匂いが漂ってきた。 「え?・・・なにこの匂い?」 「む?・・・これは・・・」 いや、どうやら「異臭」に気が付いたのは龍だけではないようだ。 そう・・・それは、独特の薬草の匂いと、誰しもが一度は嗅いだコトと「服用」した ことがある、あの匂い。 「・・・誰だい?鍋に『正○丸』ナンか入れようとしている人は?」 「・・・あい」 「由香里君かい?ダメだよ。匂いが強すぎてバレバレだよ♪」 「由香里、ダメじゃない。それは『この後』に飲むモンよ♪」 「・・・」 ・・・暗くて見えないけど、和美のヤツ・・・絶ッ対ィに怒っている・・・ 「あ、あはは☆それもそうですね。別の食材にしま〜す♪」 「やれやれ・・・ちゃんと『食材』ってのをだね(ゲロゲロ♪)はぁ?!」 全く・・・龍がそう言っている側からトンでもないモノを入れようとしているイカレ ポンチがいたようだ。 暗闇の中に、今度は夏美のドスの利いた声が響く。 「誰よ・・・誰が『カエル』なんか持ってきたの?!村田?!大下?!」 「・・・ゴメンなさいです・・・ハイ」 「智子ちゃん?!ナンでカエルなんか・・・それも生きたままで?!」 「テレビの番組でカエルは食べられるって言ってたですぅ。ハイ・・・」 「・・・それはちゃんとした食用ガエルよ。あとで逃がしてあげなさいね」 「でもでも、冬眠からでてきたトコ、せっかく捕まえたので・・・ハイ」 「智子ちゃん。ちゃんと食べられるものを入れないと、あたしが『智子ちゃんを』食べ ちゃうわよ?」 「智子!早く謝りなさい!」 「ご、ごめんなさいですぅ!ハイぃいい!」 やれやれ・・・そんな一騒動の後、ようやく具材が入れられ始めた。 暗闇の中、皆の材料を探ったり、入れたりする様々な音が響く・・・ (がさがさ・・・) (きゃぽっ・・・) (パキャッ・・・) (チャポン・・・) 「・・・」 誰一人として口を開こうとはせず、室内は異様な静けさに包まれている。 それもそのハズ・・・ 皆はこの暗闇で「視覚」が使えない・・・ 更には先程の由香里が入れようとしたクスリのせいで「嗅覚」も利かない・・・ 触ろうにも鍋は熱く「触覚」も使えない・・・ タダでさえ凄まじい食材が予想されるというのに、由香里と智子がトンでもないフラ イングをしてくれたおかげで、色んな意味での「恐怖感」が、皆の「聴覚」を必死に駆 使させているのであった。 そんな中、まぁ、今回の主催者である由香里の考えを覗くと・・・ ・・・和美のヤツ、ナニか缶詰を開けたわね?大方、サバみそ缶でも入れたに違いない わ。楽勝♪それに、綾子の入れたのは・・・確か、紙袋から出したモノだったわ ね?この季節で紙袋・・・あぁ。焼き芋だ♪大丈夫大丈夫☆悦美と智子はナンか 手作りだったみたいだけど、あの二人なら料理が得意だから心配ないとして、あ との問題は・・・孝司と早苗かぁ。席の位置からして、あの辺りは取らない方が イイわね♪ 僅かな音だけを頼りに、必死に推理する由香里だが・・・ まぁ、それも「無駄」に終わりそうである。 さて、こうして皆が材料を入れ終わり、それから軽く煮込まれたところで、各自が自 分の器に、鍋の中をよそった・・・ さぁ・・・それでは、地獄の宴の始まり始まりぃ〜♪ これから暫くの間、描写に不適切な場面が含まれると予想されますので、音声のみで お送りいたします。 まずはAグループ。 メンバーは「和美、早苗、孝司、由香里、綾子、悦美、智子」の7名。 「どう?みんな、取り終わった?」 「・・・ぅう。早苗、ナンか2個も取っちゃったみたい〜・・・」 「俺も・・・ナンだろ・・・白いモノがぼんやりと2個見えるぞ?」 「あたしだってそうよ・・・まぁいいわ。んじゃ、あたしから食べるわね。いただきま す(モグッ☆ヌチャ)んぴ?!」 「ど、どう?・・・ん?由香里?」 「あ(ネチャ)あが(ヌチャ)」 「うわ。いきなり・・・スッゴイの当たったみたいね?由香里、どんな味?」 「どんな味ですか?ハイ」 「だ・・・だ・・・誰だあああああああ!?小さな饅頭の中に『歯磨き粉』なんか入れ た阿呆ぉわぁあ゛あ゛!?」 「あ。それ、あたしだわ。どう?『邪道の小龍包(ショウロンポウ)』のお味は?」 「最悪だああああ!」 「あれ?由香里は『アク○フレッシュ』嫌いだった?んじゃ『つぶ塩』の方が・・・」 「意味が違う!く、口直しに別のを(モグッ☆ジャリ!)んもぉおおおおおお?!」 「こ、今度はナニ?!」 「悦美ぃいいいい!小龍包の中に『仁丹』は犯罪だぁああああああああああ!」 「わ、私・・・用事を思い出したから(ガシッ!)ひぃ?!」 「逃げるなぁ゛〜!和美も食え〜!」 「ひいい!?うわ?!由香里、すっごいスースーする匂いがするぅ!」 「イイから食えぇえええ!」 「わ、判ったわよ・・・う〜(モグッ!プチュ☆)ん?!んなああああ?!」 「か、和美?!」 「大丈夫かずみちゃん!?」 「口の中がミントでスッキリしすぎぃいいい?!」 「アハ♪それはきっと智子のです。智子の『外道の雲呑(ワンタン)』です♪ハイ☆」 「でも、あたしの歯磨き粉よりはマシでしょ?」 「中身はマウスウォッシュの『モン○ミン』です♪もう一つあります。ハイ☆」 「も、もう一個・・・コレも(モグ☆プチュ☆)に・・・にがぁああ〜〜い?!」 「そっちは『ガラナエキス』です。コレで和美さんも今夜は元気になるです。ハイ☆」 「うわ。あたし和美の方でなくて良かった・・・んじゃ、次は悦美いく?」 「ん、OK♪どれどれ、あたしンはナンだろ?ナンか丸くて小さくて、箸で掴みにくい な?いいや、かっこんじゃえ(チュルチュル☆)ん?(モギュ☆)んん?!」 「悦美、どうしたですか?ハイ・・・」 「ふ、フルーティーな味わいの中に、鍋の出汁が・・・んんあああ?!だ、誰よぉ?! 鍋に『ナタデココ』を入れた大馬鹿者はぁ?!」 「あ。それあたしだわ♪」 「ゆ、由香里?!や、やったわね!?」 「まぁ仕返しにはなったわね・・・それにしても、どうやら思ったより殺傷力があった ようね♪」 「次は・・・誰が食べるの?」 「次は智子が食べます、ハイ☆では(モフッ☆ジュル☆)あぅううう・・・」 「と、智子!?いいのよ!誰も見えないんだから、吐き出しちゃいなさい!」 「ダメ♪智子、ちゃんと全部食べるのよぉ〜」 「か、和美の鬼ぃ〜・・・」 「はぅうううう。お鍋に『大判焼き』は、合わないですぅ〜。外側が出汁をタップリと 吸っていて、中の・・・それも、カスタードクリームと合わさって、凄い不協和音が しますですぅ〜。ハイぃ〜」 「へぇ〜。随分と恐ろしいモノね・・・んで、誰が入れたわけ?」 「それ・・・私です。ごめんなさい・・・」 「・・・やっぱ綾子の冒険は怖いわ・・・」 「あと、食べてないのは誰?」 「んじゃ、次は早苗が食べるね。せぇの(パクッ☆)あり?こりは巾着袋?」 「巾着袋?あぁ。おでんナンかによく入ってる、油揚げの包み・・・」 「俺ンだな♪」 「う゛・・・孝司の・・・」 「早く食えよ♪」 「あぅ・・・中は(はぐはぐ☆プチュ♪)ふへ?・・・んえええええ?!」 「はっはっは☆どうだ早苗?!特製の『冥界の巾着袋』の味は?!」 「くぅうううう!ヨーグルト味ぃ・・・」 「残すなよ?!全部食えよ?!」 「ぅ(ムグムグ・・・ごっくん☆)すると、もう一つも(パク♪プチュ☆)んもももも もももも?!」 「残る一つは『からしユズ味噌』だ♪タップリと味わえ!」 「はいはい。孝司も食べなさい」 「おぅ。残るは和美のと早苗のか・・・どうか和美のでありますように(パク♪)ん? おぉ?和美は餃子を・・・」 「違う」 「ぅ・・・」 「ほらほら〜♪孝司ぃ〜☆早く、早苗の『地獄の水餃子』を噛みなさいよぉ♪」 「くっ・・・んお(にゅちゅぅう♪)おおおおお?!」 「どうだぁ!?特製の『カレー粉だけ』の水餃子は?!」 「な、なんの(ゴックン)うらぁ!もう一丁だ!(モグプチュ!)ぉうううう・・・」 「も一つは早苗の『特製ゼリー』だよン♪」 「特製ゼリー?ナニをゼリーにしたの?」 「えとね、カ○リーメイトでしょ?奈良漬けでしょ?ひじきに、それから・・・」 「もぉイイ。聞いているだけで具合が悪くなってきたわ・・・」 「由香里ちゃんも食べる?」 「いらんわ!」 「えーと・・・最後は綾子だったわね。材料は・・・私のね♪」 「・・・あ、あの・・・和美さん」 「ん?なぁに?」 「だ、大丈夫ですよね?私は和美さんを信じてますから・・・」 「そぉ〜お?私は綾子に裏切られたんだけどぉ?」 「うっく・・・」 「ん?和美。あんたの辺りから缶を開ける音がしたんだけど、持ってきていたラーメン とコンニャクは?」 「ココにあるわよ」 「んじゃ、コンビニで買ってきた物だけを入れたわけ?」 「そ♪」 「コンビニねぇ・・・どーせコンビニじゃ大したモノは売ってなかったでしょ?」 「まぁね・・・」 「サバみそ缶かシャケ缶でも入れたんでしょ?」 「・・・んにゃ。私が入れたのは・・・」 「では、頂きます・・・(モニュ♪)ぁう」 「・・・どしたの綾子?」 「お、お鍋に・・・この『桃』はちょっと・・・」 「さっきのは『桃缶』だったか・・・やるわね」 あぁ〜あ・・・ おとなしいメンバーが揃った割には、凄まじい結果でしたね〜。 では、続いてBグループ「龍、夏美、美貴、大下、村田、磨鈴」と、見るからに濃い メンバーの揃ったこちらは・・・ 「さてと・・・誰から食べる?」 「俺から喰うか・・・どれ(モグ。ムニュウ)お?こりゃ当たりだな。このおとなし目 の材料の味は、正しく『チーズ』だ♪入れたのは磨鈴君かな?」 「わぁ!龍センパイ、凄いですぅ〜♪チーズフォンデューにならないかと思ったんです けど・・・大丈夫でした?」 「あぁ。大したことはないよ♪」 「・・・ちっ」 「なんだよ夏美。次はお前が食え」 「わ、判ったわよ。んじゃ(モギュッ♪)ん?ナニこれ?(モギュモギュ♪)あは☆あ たしの方も当たりだわ♪誰よ?『にぼし』なんて平凡なモノ入れたの?」 「・・・」×5 「・・・お願い。誰か『にぼし』って言って(モギュモギュ)ん?み、美貴ちゃん」 「はい?」 「チョッと聞くけど・・・この『にぼし』ってヤツ『足』があったっけ?」 「ま、まさか。にぼしは魚ですよ?魚に足なんて・・・」 「あ。それはもしかしたら、あっしの入れた『サンショウウオの黒焼き』じゃないかと 思うッス♪滋養強壮にはとっても(ズガン!)おふぅううッス・・・」 「龍・・・缶ビール・・・おかわり」 「んじゃ、次はワシが・・・それにしても、ワシのは随分と大きいな?どれ(バリッ) ん?!こりゃ硬いな?(バリボリバリボリ!)もしやエビか♪しかも、この甲良の堅 さから言って・・・伊勢エビか?!」 「わぁ〜♪羅刹様、良かったですねぇ〜☆」 「え?!ちょっと龍ぅ〜。あんたでしょ?んな贅沢なもの入れたの?」 「ん〜・・・伊勢エビか・・・確かに似ていると言えば似ているな」 「え?違うの?んじゃ、ロブスター?」 「まぁ、そっちの方が近いな」 「・・・ナニ入れたわけ?」 「ただの『アメリカザリガニ』だ♪」 「んが(ブボッ!)な、なんてモノを喰わすンじゃあああ?!」 「そうよ!寄生虫とか病気とかあぶないでしょ?!」 「心配するな。俺もそこまで鬼じゃない。ちゃんとした食用ザリガニだ」 「ホッ・・・おや?思わず吐き出してしまったが、ザリガニはドコにいった?」 「あ、あっしの頭に刺さってるッス・・・兄貴、喰ってもいいッスか?」 「・・・や、やる。遠慮せずに食え」 「オッス(バリボリバリボリ!)う〜ん。でりーしゃすッス♪んじゃ、続いてあっしも いただくッス♪(ボリ!クニャ☆ボリ!クニャ☆)んん〜?こりゃナンッスかね?歯 ごたえがあったかと思うと、中身は柔らかじゅーしーな『佃煮』ッス♪」 「村田よ、ナニか特徴は?」 「んん〜(レロレロ)・・・舌先に『足』の感触があるッス」 「ふむ・・・美貴御嬢のですかい?」 「いいえ。私のには足なんて・・・」 「足が(モゴモゴ)ひぃ、ふぅ、み・・・全部で『6本』あるッス」 「6本だと?そりゃ・・・俺の知る限り『昆虫』だな」 「みゃああああ?!」 「きゃああああ?!」 「んじゃ、あたしだわ♪それ、留美姉ぇのお土産で貰った『タガメの佃煮』よ☆」 「ほぉ〜♪留美姉様からのお土産ッスか。なかなかのお味ッスよ♪」 「・・・村田で良かったな。磨鈴よ・・・」 「良かったなぁ美貴」 「ふ、ふぇ・・・」 「ホント・・・良かったです・・・」 「んじゃ、次は磨鈴ちゃんか美貴ちゃんね♪」 「私が食べます☆あとは大下さんと自分だけだけど・・・大きさから言って、中にある のは自分のじゃないので安心です♪」 「安心?どうしてだ?」 「だって、大下さんの好物は知ってますから♪確か大下さんは『唐揚げ』がお好きでし たよね?」 「う〜む、バレてしまっていたか・・・」 「いっただきまーす♪(モグッ☆クニュ☆)ん?柔らかい・・・大下さん、これ、ドコ の肉ですか?」 「へ?ドコって・・・全部なのだが?」 「全部?いえ(ニャグニャグ♪)鶏肉のどの部分ですか?」 「あ・・・もしかして、美貴御嬢。少し勘違いをしておらんか?」 「へ・・・ま、まさか・・・これ・・・」 「へい。そいつはあっしの好きな珍味『イソギンチャクの唐揚げ』でさぁ♪」 「ぅ(ゴックン☆)の、飲んじゃったアアアアアア!」 「うっく・・・さ、最後は私で・・・」 「ま、磨鈴よ!無理をするでない!」 「だ〜め☆ちゃ〜んと美貴ちゃんの材料・・・食べてね、磨鈴ちゃん♪」 「あ、姐さん!どうぞご勘弁をおぉ!」 「大下、諦めろ。そうでないと、磨鈴君が夏美に『喰われる』ぞ?」 「あぁあああぁ、磨鈴よぉ〜・・・どうしてお前は不幸の星の下に・・・」 「大丈夫です羅刹様・・・いただきます(パクッ☆)んむ?これパイ生地(ジュワ♪) みゃああああああ?!」 「ぅうおおおお!磨鈴よ!ワシが代わりに(ズガン!)おふぅ・・・」 「龍。ビールのおかーり♪」 「夏美、お前いい加減、缶を投げるな!」 「磨鈴ちゃん。それ、私が作った『魔界のパイ包み』だけど、どう?」 「はぅ〜、普通に食べたら美味しいんでしょうけど・・・中から溶け掛かった『バター クリーム』が・・・油っぽいですぅ〜。もう一つの中身も、もしかして(パクッ☆) あれ?」 「も一つは『蜂蜜』よ♪」 「こっちは大丈夫ですぅ♪甘いの大好きですぅ☆」 「・・・よ、良かった・・・無事で・・・」 ふむ・・・こっちも無事に終了か。 さすがに、向こうに対してこっちはゲテモノが多かったなぁ・・・ では、後半戦に突入です♪ |