エピローグ


                ・・・「世界」・・・

          ・・・それはその人が「みた」全てのこと・・・

           ・・・目で?心で?夢で?幻で?・・・

          ・・・例え、如何なる形であろうとも・・・

          ・・・その人が「知り得た」のならば・・・

           ・・・それは間違いなく、存在し・・・

          ・・・その人と共に、在り続けている・・・

        ・・・そしてそれが、その人の「世界」となる・・・

           ・・・それが、それが、それが・・・


                    1


             ・・・20××年4月某日・・・
              〜日那高に続く、とある道〜


 春の・・・風。

 暖かく、柔らかく、香る・・・風。

 それは、季節の移ろいを知らせるだけではなく・・・

 様々な変化を・・・

 いや、進化をもたらす、不思議な風・・・

 そんな魔法の様な風が、街の至る所で吹き始めた頃のコト・・・

 街のあちこちでは、真新しい制服をぎこちなく着込み、新たな「期待と夢」に胸を膨
らませた生徒達が、顔を真っ直ぐに上げて登校をしている姿が見える。
 また一方では、その着古した制服に身を包んだ、新たなる「躍進と出会い」を期待し
て、張りつめた空気と、それでいて穏和な表情の生徒の姿も・・・

 柔らかくも眩しい太陽の光は、新たな日の始まりを導き・・・

 吹き抜ける風に薫る桜の花々は、新たな季節の始まりを知らせ・・・

 街の中を元気に歩いていく生徒達は、新たな成長の始まりを知らせる・・・

 4月某日・・・

 それは日々単調的な生活を送る学校での、唯一の節目の日。

 それは多感な青春時代を送る生徒達にとって、僅かながらの進展の日。

 新入生達にとっては、それが高校生活の始まりの日・・・
 1年生達にとっては、それが新たな後輩の誕生の日・・・
 2年生達にとっては、それが最年長者たる自覚の日・・・

 それが「新学期」だ・・・

 さて、そんな様々な不安と期待を胸に登校してくる生徒の中に・・・いたいた。
「早苗・・・」
「なぁに♪和美ちゃん?」
「私達、今日から3年生なのよね・・・」
「うん☆そだね♪」
「高校の最上級生なのよね?」
「そだよ。今日から新しい子達がくるんだよ?」
「・・・だったら、腕にしがみつくんじゃないの!」

 やれやれ・・・和美達もまた「いつも通りに」登校をしてきた。
 いよいよ今日から和美達も最上級生である3年生・・・
「今日から・・・3年か・・・」
 そう呟き、和美はナニか一抹の寂しさを感じた。
 誰かに頼ろうにも、もはや龍も夏美も居ない・・・
 これからは、頼る側から、頼られる側になったのだ。
 改めて気を引き締めていこう・・・
「和美ちゃぁ〜ん☆帰りに、おかめばやしでお汁粉食べよぉ〜ね♪」
「・・・無駄な努力はやめるか・・・」
 ・・・かと思った和美であったが、まぁ「昨日までとナニが変わるの?」と聞かれれ
ばソレまでなので、普段どぉ〜りに過ごすことにした。
 さて、ゲンナリとしながらも学校に辿り着いた和美であったが、学校で更なる脱力感
が待ち受けていようとは・・・
 始業式は2年の時のクラスで行われたのだが、新しいクラス発表が行われる際、理事
長の「クラス発表は、お・た・の・し・み♪じゃ☆」などというロクでもない提案によ
り、生徒達は舞い散る中、クラス発表が行われている中庭やグランドに向かっていた。
 無論、和美達も例外ではなく、3年のクラスが決められる中庭に足を運ぶ。
「和美ちゃん、ナンでクラス発表が外なの?」
「そんなの判んないわよ。陽炎お爺さんに聞いてちょうだい」
 そんなわけで中庭にやってきた和美と早苗であったが・・・
「は〜い、みんな並んで〜♪」
「・・・ナニこれ?」
「・・・ナンなの?」
 目の前にキチンと整列して並んでいる生徒達の姿に、和美と早苗の目はテンになって
しまった。
 早苗がヒョイと先頭の方を覗き込むと、最前列ではナニやらハンドルの付いた木の箱
を回している生徒の姿が・・・
「もしかして・・・クラス決めって『福引き』なのかなぁ?」
「・・・あぅ」
 その光景に、頭痛がしてきた。
 和美はあまり「くじ運」の良い方ではないのだ。
 和美の頭の中で描かれる「最悪」の結果・・・
「・・・まさかネ」
 必死にそれを否定しようと頭を振っている間に、遂に和美の番がやってきた。
 二列で並んでいたため、隣に並んでいた早苗も一緒・・・
「あは☆和美ちゃんと一緒だ♪」
「・・・」
 いよいよもって、最悪の結果が色濃くなってくる。
 そんな顔色の悪い和美に、手が差し出されてきた。
「はい。木下さん、抽選券を出してね♪」
「あ。美奈子先生・・・あの、ナンとか早苗とは違うクラスに・・・」
「ダ・メ☆ズルは無しよ。さ、早く抽選券を出して♪」
「抽選券って・・・貰ってないんですけど?」
「生徒手帳のコトよ♪」
「あぅ・・・はい・・・」
「それじゃ、一発勝負よぉ〜☆さぁ、回して♪」
「美奈子先生・・・」
「はい?」
「ナンか面白がっていません?」
「気のせいよ☆さぁ、後がつかえているから、は・や・く♪」
「はぃ・・・せぇ・・・の(ガチャンガチャンガチャン!ポロッ☆)あ、赤玉?!」
「あ!早苗の玉、赤だぁ☆」
「え〜と、木下さんと早苗ちゃんは、3年D組ね☆」
「やったぁ!また和美ちゃんと同じクラスだぁ〜!」
「う・・・うわあああああああああああああああ!」
「あ?!和美ちゃん待ってぇ!?」
 絶叫を挙げながら走り出した和美に、早苗は慌てて追いかけていった・・・
 まぁ・・・そりゃ、叫びだしたくもなるわな。
 だが、和美の運の悪さはそれだけでは止まらない。
 理事長室に殴り込み寸前ところを、周囲にいた教師達に取り押さえられ、必死の説得
の末に、渋々、早苗に連れられて新しいクラスにやって来た和美なのだが・・・
「はぁ、はぁ・・・もぉ、ナンでなのよぉ!(ガラッ!)・・・へ?!」
「ぜぇ、ぜぇぜぇ。か、和美ちゃん、新学期で暴力はダメだよぉ〜・・・あれ?」
「あら?・・・まぁ!和美さん、早苗ちゃん。また同じクラスですわね☆」
「え?!・・・う〜む、コレはもぉ『腐れ縁』ってヤツよねぇ〜♪」
「・・・また早苗と同じかよ」
「よっ。みんな、また同じだね♪」
「はい。みんな一緒です☆ハイ♪」
「和美さん・・・今度は早苗と一緒のクラスになれました・・・」
「木下さんまで・・・うぅ〜、篠原さんの仲間ばかりぃ〜・・・」
「あっれ〜?今度は木下さんとか、みんな一緒なんだぁ〜♪」
 ナンと、席には既に、綾子、由香里、孝司、悦美、智子、裕美、祥子、裕美、美貴が
いるではないか!?
 この光景に和美は寸分の隙もなく頭を抱え込んでしまった。
「んのぉお゛お゛お゛お゛〜〜!」
「どしたの和美ちゃん?頭痛いの?」
「はいはい。木下さん、入り口で頭抱えてないで、席に座って♪」
「あ〜!今度は美奈子せんせが担任なの?!」
「はい♪早苗ちゃん、和美ちゃんを連れて席についてねぇ〜♪」
「はぁ〜い☆」
「・・・あ・・・悪夢だ」


                    2


                LPXX年(現在)
                〜自由都市、各所〜


 さて・・・
 異世界のあちこちでは和美達の活躍によって魔女が消滅し、街や村では復興作業が急
がれているところであった。
 ただ残念なことに、消滅したのは魔女だけではなく、異世界の戦士達も共に消滅して
しまったと言う噂が、至る所で囁かれている・・・
 確かに「消滅」というのは間違いではないのだが、人々の間で「魔女の城から、光り
の玉が飛び出していったのを見た」との証言が後を絶たず、和美達は天に召されたこと
になってしまったのだ。
 それが実は「天狗」と「その伴侶」の魂であったのだが・・・それはまた別のお話。
 そんな中、少しだけ和美達と関わった人たちの様子を覗いてみると・・・


「さぁ、オババ様。ココが新しいお家ですよ」
「おっきいねぇ♪」
「これはこれは・・・随分と立派な建物だねぇ・・・」
 大きな家を前に、コレットとリリィ、それに占いオババが感嘆の溜息を漏らす。
 今日から、この「新しい家」での生活が・・・
 いや、始まるのは家だけではない・・・この「新しい村」が、始まるのだ。
 魔女が消え、魔女が使役していた魔物達もまた、消えた。
 それにより急ピッチで進められていた村の復興が、ようやく終わったのだ。
「これも全て・・・」
「・・・あぁ。異世界の戦士様達のおかげじゃ・・・」
「うん・・・おねーちゃん達の・・・おかげだね・・・」
 そう呟き、3人は遠くに聳えるサーレン山の中腹を見上げた・・・


 同じ頃、とある街の武器屋では・・・
「あふぁぁ〜っ・・・」
 ヒゲ面の店主らしい親父が、椅子にもたれながら暇そうに欠伸をする。
 とは言え、別に開店休業の状態ではない。
 売れる武器が・・・残っていないのだ。
 空っぽの店内を見つめ、親父・・・ボルティー親父は、懐から葉巻を取り出した。
「あ〜ぁ・・・お嬢ちゃん達のおかげで・・・武器は品切れだしなぁ〜」
 燭台に灯るロウソクの火に葉巻を翳し、ボルティーは今度は溜息をつく。
 実は、サーレン山の突然の爆発・・・つまりは裕美の城での爆発・・・によって、そ
の周辺に住んでいた野生のモンスター達が、一斉に近くの人里へと逃げまどい、これら
との戦闘が多くなったのだ。
 当然・・・戦闘が増える=武器やクスリがいる=武器屋&道具屋ばんじゃ〜い♪
 その為、武器はサーレン山近くの街から買い付けに来た行商人達に委託し、店内には
ナニも残っていない・・・と、なった訳である。
 葉巻の煙を燻らしながら、ボルティーは窓からサーレン山の中腹を眺めた。
「嬢ちゃん達・・・ありがとよ・・・成仏してくれや」


 またまた同じ頃・・・
「・・・成仏してくださいね・・・」
「まったく。獲物を握ったままとは・・・らしい最期だな」
 とある教会で、御葬式が行われている最中らしい・・・
 教会の牧師らしい男の進行で、厳かに行われていく。
 おや?その段の上に乗せられた、沢山の花や供物の間に飾られた遺影は・・・
「じーさん、最期までイイ腕の鍛冶屋だったよな・・・」
「あぁ。ちょっと変わり者だったがな」
「それにしても、最期に作っていたモノはなんだったんだ?」
「さぁ?見たこともないし・・・」
「筒状のモノだったよな?」
「花火の筒じゃねぇのか?」
「それにしては複雑だったぞ?」
 こうして、名も無きジジィと(じょるじゅ改:量産型)は、残念ながら日の目を見る
ことは無かったのである・・・


                    3


 さて、場面は再び日那高校・・・は終わり、その帰り道。
 新学期最初のホームルームが終わると、和美は早苗と孝司と共に家路に着いていた。
 今日は何処にも寄り道せず、真っ直ぐに帰りたいのだ。
 何しろ今日は・・・いや、もぉ考えたくない。
 今日のクラスメイトを見た限り、高校生活最後の年も「無事では済むまい」と悟った
からだ・・・
 帰り道をテクテクと歩く和美、早苗、孝司の3人。
 いつもなら一緒のハズの由香里は「ちょっと調べたいことがあるから♪」と言って図
書館へ行き、綾子は「裕美さんが・・・待ち伏せされていて」と言って、帰宅時間を遅
らせ、祥子は生徒会活動で居残り、悦美と美貴は剣道の稽古に行き、そして当然のこと
ながら、セットで智子もくっついた・・・
 んで、結局はこの「三竦み(さんすくみ)メンバー」での帰宅である。
 まぁ、異世界での出来事以来、あまり派手なケンカをしなくなったのは和美にとって
有り難いのだが「妙な緊張感」が漂うのが痛いところである。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
 和美を真ん中に、並んで歩く3人だが、誰一人として口を開こうとはしない。

・・・あぁ・・・なんだか頭痛だけじゃなくて・・・胃も・・・痛む。

 そんな顔色の優れない和美の前に、ナニやらゴツイ肉の塊が・・・
「ん?おぉ、これは皆さん」
「小僧ぉ!久しぶりッス!逢いたかったッス!」
 目の前に現れたのは、日那高を卒業し、大学生となった大下と村田であった。
 ちなみに、龍と夏美も同じ大学である。
「あ、大下さん!こんにちはぁ〜♪」
「ど、ども(ギュムッ☆)む、村田さん!もう少し優しく!」
「た、助かったぁ〜・・・」
「へい?和美御嬢、どうかされやしたか?」
「い、いえ。こっちのことで・・・あれ?」
 思わず胃を押さえて安堵の溜息をついていた和美であったが、ふと、その大下の巨体
の影に誰かが居ることに気がついた。
「大下さん、どなたかいるんですか?」
「・・・へい♪」
「そうッス☆」
 大下の後ろを覗き込む和美に、大下と村田は・・・何故かニヤついている。
 そんな奇妙な二人に和美だけではなく、村田から放してもらった孝司と、早苗も首を
傾げていた。
「どしたの?」
「誰が居るんです?」
「へい♪まずは・・・さぁ、ご挨拶を」
「・・・はぃ☆」
 大下に促され、その後ろから出てきたのはナンと・・・
「初めまして。そして、お久しぶりです。和美先輩、早苗先輩、孝司先輩♪」
 ペコリと頭を下げながら日那高の制服を着た、女の子が出てきたのだ。
「へ?!」
「お、女の子?!」
「うちの制服だぞ?!」
 この二人から「後ろにいたのは男子」とばかり思っていた3人は面食らったが、それ
よりも驚いたのは・・・
「は、初めまして・・・って、ナンで名前を?あれ?でも、どっかで?」
「早苗も会ったよぉ〜な・・・身に覚えは・・・ないよ?」
「俺も会ったような気がするが・・・それより早苗。ナンだ今の『間』は?」
 確かに、挨拶がおかしい・・・初対面で「お久しぶり」とは?
 それに「名乗る前に名前を言われた」のだ・・・
 だが、本当に驚いたのは次の瞬間であった。
「えとえと、私の名前は『楠木 磨鈴(くすのき まりん)』です♪」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・おや?驚かないな?」
「そッスね。あっしも驚いたのにッス」
「・・・あの。もしかして、忘れてしまわれたので?」
「ま・・・」
「ま・・・」
「・・・ま」
「ま?」
「マリンちゃ〜ん!?」
「わ?!(ガバッ!)きゃぅ?!」
「生きていたのか?!」
「こっちの世界に来たのぉ?!」
 そんなマリンとの再会に、和美達は暫く騒然となっていた・・・
 異世界では、虐げられ、幸薄く、悲しみに暮れたマリンの魂は、こちらの世界の神様
が持ち帰り、時を越え、こちらの世界で裕福で幸せな家庭の子供として生まれ変わって
いた。
 無論、マリンはそんな経緯は知らないが、異世界での出来事は、時を経るごとに色濃
く思い出していき、大きく成長したマリンは、記憶を頼りに大下を捜し求め、今日、遂
に出会えたというのだ。
「そぉ〜だったんだ・・・」
「運命ってヤツだな・・・」
「まさに赤い糸だね・・・」
「いやぁ〜♪照れやすなぁ〜☆」
「羅刹様と再びお逢いできて、幸せですぅ〜☆」
「う〜ん、らぶらぶですなぁ〜♪」
「愛の力って凄いわね〜☆」
「和美、早苗・・・あんまし言わねぇ〜方がいいぞ?」
「なんで?」
「どして?」
「・・・(グシッ)」
「・・・あ・・・村田さん・・・」
「複雑だね・・・」
「い、いいッス!あっしは兄貴が幸せならそれでいいッス!」
「漢らしいですよ。村田さん」
「こ、小僧ぉ!?あっしらも、いずれは赤いワイヤーで結ばれるッス!」
「大丈夫です。その頃にはレーザーカッターを購入します☆」
「あぁん。つれないッス小僧ぉ・・・でも、強くなったッスね」
「それでは皆さん。あっしらもマリンとは今日に出会ったばかりで・・・」
「もう少し話したいことがあるッス☆」
「そうですか。それじゃまた!」
「はい☆先輩方と同じ学校ですので、よろしくお願いします☆」
「それじゃ〜ね〜♪」


                    4


 さてさて、和美達が劇的な再会を果たしていた頃・・・
「ふむ(ばさっ)判らんなぁ〜・・・」
 日那高から程遠くない、市立図書館。
 由香里はナニやら莫大な量の本を周囲に積み上げての調べ物の最中であった。
 春休みの間、由香里は異世界での記憶をひたすらパソコンに入力して資料を作り、更
に自宅の在書を調べまくっていたが、天狗の記憶と相成る資料は無かった。
 ならばと、こうして近場の図書館に連日、通い詰めていたのだ。
 だが・・・
「キーワードは『長星(ながぼし)』と『天狗(あまきつね)』なんだけどなぁ〜」
 由香里は溜息と共に、椅子にもたれかかった・・・
 それぞれの言葉は、沢山の書籍から見つけることは出来た。
 江戸時代にも、平安時代にも、そして神世の時代にも・・・
 しかしながら、ナンともまぁ、あまりにも多すぎるのだ。
 ならばと、その周辺年代で消えた有名人物のコトを調べ、ナンとかもっとも有力なの
は、天狗の正体が「草壁皇子」で、アルティシアが、その側室の「加能古」であったの
ではないか?と、そこまで来たのだが・・・
「・・・確証が無いわよねぇ〜・・・諦めるか・・・」
 由香里はそう呟くと、本を片づけ始めた。
 そんな由香里の脳裏に、ふと、記憶に残る「もう一つの単語」が浮かぶ。
「ん?そう言えば『時間と織りなす蜘蛛の糸』って・・・なんだっけ?」


 再び場面は和美達。
 あの後、随分と重苦しかった帰り道は一転し、マリンと異世界での話題で持ちきりと
なっていたが・・・
「ホントにびっくりしたぁ〜♪」
「そうよねぇ。でも大下さんが一番嬉しいんじゃない?」
「だろぉな」
「んでも・・・ケホッ。ぅ〜・・・早苗、のど渇いたぁ」
「そう言えば私も少し・・・」
「喋りすぎたんだろ?自販機で茶でも・・・」
「早苗はオレンジジュースがいい☆」
「私はアイスティーがイイな♪」
「・・・判ったョ」
 相も変わらず運と金に縁の無い男である・・・
 そんな自販機の前に佇んでいる孝司の背中を見ていた和美であったが、ふと、その脇
に立っていた電柱に目をやると、その自販機と電柱の間には・・・
「ぁ・・・蜘蛛の巣・・・ん?」
 何気なく呟いたつもりの和美だが・・・
 ナニかが引っかかる・・・
「(ガチャコン☆)ホラよ」
「わ〜い♪ありがとね孝司。和美ちゃんも・・・どしたの和美ちゃん?」
「え?あぁ・・・ちょっと蜘蛛の巣が・・・」
「クモ?・・・むぅ〜。気持ち悪いぃ〜・・・早苗、クモ嫌ぁ〜い」
「それにしても随分と密集しているな?夜に自販機の灯りに来る虫を狙ってるのか?」
「えぇ。一匹だけじゃなく、何匹も同じトコに巣を作ってるみたいね・・・」
「きっとクモの社会も住宅事情も大変なんだよ。さ、和美ちゃんイコ♪」
「あ・・・うん」
 早苗に手を引かれ、和美はその場から足を踏み出したが・・・
「時間と織りなす・・・蜘蛛の糸・・・」
 今度は孝司が蜘蛛の巣に囚われてしまった。
 孝司も和美同様に「蜘蛛の糸」と言う単語が引っかかるのだ。
 確か、異世界でもそんなコトを言ったような気がする・・・
 だが・・・何故か「その部分だけ」が、思い起こせないのだ。
「孝司、いつまでそんな気持ち悪いの見てンの?先に行くわよ?」
「いいんだよ和美ちゃん、さっさといこ♪」
「ナンか引っかかるな?蜘蛛の糸?よく聞くような聞かない様な・・・あれ?おい!置
 いて行くなよ!ずるいぞ早苗!」
 そんな慌てて和美と早苗を追いかける孝司の姿を・・・
 どの巣の蜘蛛が・・・見送ったであろうか?


 蜘蛛の巣・・・
 それは蜘蛛にとって自らが作り出した「世界」の全て・・・

 だが蜘蛛は、その自らの糸の先に、他の蜘蛛が糸を紡いで『別の世界』を作り上げて
いることを知らない・・・

 それが、同じ蜘蛛の糸で出来た巣であるのに・・・

 そう・・・同じ時、同じ場所、同じ糸であるのに・・・

 全ての世界は「同じ蜘蛛の糸で紡がれている」のにも関わらず・・・

 そこに住む人達は、隣人の顔すら知らないのだ・・・

 互いに伝わる微かな震動に誘われて、うっかり他の巣に迷い込もうものならば、待ち
受けるのは死か?それとも新たなる世界の発見か?

 だが、いずれは誰かが気付くであろう・・・


           ・・・世界とは(World)・・・

            ・・・広大な(Wide)・・・

      ・・・蜘蛛の糸(Web)で、紡がれていることを!・・・


                あぶない天狗伝説4、ファンタジー編・・・FIN


 原案:アリスソフト「あぶない天狗伝説」
 制作:YOU’s Factory(代表:YOU)
 協力:Gapl様、親方様
 感謝:YOUがお邪魔した、多くのHPの方々(^^)
    そして、そこで出会った、多くの方々。

 多謝:YOU’s Factoryが入り浸った、BAR「時間旅行」のママさん。


      SEE YOU NEXT Legend Of TENGU!