序章 闘神都市へ
闇夜の中、臥路義竺は、中腹に闘神都市へと向かう大きな街道がはしる、小高い丘の上に立っていた。
いま、満月が臥路の体を淡い銀色に染めながら空に浮かび、その光の下で、臥路は寄ってくるあぶを気にする様子もなく、もう長いこと立ち尽くしていた。
この高みからは闘神都市が見下ろせる。海に突き出た半島ひとつを、城壁で囲んだ闘神都市。月光に浮かび上がる大都市の姿は、言いようのないほど静かで美しい風景だった。
闘神都市を初めて訪れる旅人は、大体この丘で感嘆の声を上げる。眼下にひろがる闘神都市は、太陽のもとでは雄大に、月夜にあっては繊細に、それぞれ違った美貌をみせるからだ。
臥路は目を閉じ、漆黒に身をゆだねた。
臥路には眼下にひろがる美しい闘神都市に愛着があるわけではなく、むしろ決して忘れ得ぬ理由から、長い間思い出すことも苦痛だった。
思えばむかし、主君であり恋人でもあった女性を守りきれず、無力さに深い絶望を抱きながら、この丘を通って闘神都市を去ったときも同じような夜だった。
――あれから二十年たった。もう二十年もたった。
二十年の歳月を経て、いま、丘に立ちつくしている臥路は、黒の胸当ての上にすりきれた陣羽織をまとい、長いあぶらっけのない髪を高々ともとどりで巻き上げ、背に身長ほどもある刀とずだ袋を背負う、四十を越えた壮年の剣士になっていた。
さして大柄ではないが、筋肉の引きしまった柔軟な体つき。顔には数々の深い皺と鼻頭を横切る傷跡がある所は変わっていない。武術の心得がある者がみれば、その腕の高さに気がつかずにはいられないはずだ。
だが、今の臥路を一目みた人は、まずその瞳にひきつけられるだろう。
黒い瞳には驚くほど生気ないのだ。すぐに、ここではないどこか別の世界を見つめている人間だとわかるのだ。
その臥路の後ろには影のように従う女がいた。
その外見は二十を越えたあたりだろうか。同じようにずだ袋と和装姿――彼女の場合は柿色のたけの短い作務衣を着ていた。
とにかくうなじでまとめられた髪が人目をひいた。ほっそりとした体を倍にさせるように感じさせる漆黒の長髪。それが角度によっては鋼のようにも絹のようにも見えた。
臥路は闘神都市のことを忘れようとしてきた。
触れれば激しく痛む古い心の傷であったからだ。
体についた傷はいつか治る。だが、心の奥底の傷は、忘れようとすればそれだけ心を蝕んでいくものだ。癒す方法はただひとつ、傷をみつめ正面から対峙するしかない。
臥路は過去と向き合い、自ら命を断った雫姫の魂を弔うべく、再び闘神大会に出場する為に闘神都市に姿をあらわしたのだ。
臥路は目を見開いた。
そして、大きく息を吸うと、女に声をかけながら歩き出した。
「狐嫁女、行くぞ。」
「はい。」
二人はざっざっと草を踏み越え街道へ戻っていく。
いざ、闘神都市へ。
第一章 闘神都市にやってきたもの
1 血にぬれた少年
黒々とした右わきの雑木林に気を配りながら、臥路たちは街道を歩いていた。
逆に左側は一面の草原が海まで続き、なだらかな丘陵地帯が海まで続いていた。特に障害物になるものがないため見通しが良く、昼には海まで簡単に見渡すことができる。
すぐにさっきの丘は小さくなっていった。
うし車が楽にすれ違うことができる大きな街道とはいえ、夜も遅く人気はない。たよりになるのは月明かりだけだ。
(まぁ、美しい街。あれが闘神都市なのですね。)
ふいに臥路の脳裏に雫姫の鈴のような声が聞こえた。
今思えばあれは雫姫なりに臥路を励まそうとしていたのだろう。
(闘神都市は変わっていなかったな。)
二十年も昔のことなのに、雫姫をともなってやってきた日のことが、まるで昨日のように思い出せるのが臥路には不思議だった。
雫姫はJAPANの豪族、小早川家の姫君で、天上の花のような清らかで可憐な女性だった。臥路を見てかすかに微笑む姿は本当に美しかった。
なんとも皮肉な話だが、その清らかさが、のちに悲劇をまねいたともいえる。
臥路は雫姫の護衛をつとめる従者であった。
天才的な剣技をもっていたために、当主に気に入られ、若くして抜擢されたのだ。その時、臥路の幼馴染で気心の知れたくノ一・鈴夜も雫姫の守りにつくこととなり、二人は表と影からそれぞれ雫姫を守っていた。
それから、美しい少女姫と凛々しい青年サムライが心をかよわせるようになるまで、そう時間はかからなかった。
それらの関係は、ある年に、雫姫が政略結婚を拒絶したことから終わりを告げた。
その日のうちに雫姫は自室に臥路を呼び、自分を連れて逃げてくれと懇願したのである。
そして、愛する女性の血を吐くような必死の頼みをきくために、臥路はそれまでの人生をすべて捨てたのだ。
二人でJAPANを脱出し、大陸に渡ると、旅慣れていない女性をかばいながらの臥路の旅がはじまった。
一人での旅よりも進路は限定され、足も鈍る。それでも臥路は金持ちの用心棒など危険な仕事をしながら逃亡の旅を続けた。
ある日、辛い事が起きた。
ついに小早川家の討手たちが臥路をみつけたのだ。
臥路はあの時ほど嫌な気分を抱えた戦いをしたことはなかった。
目にも止まらぬ速さで刃をふるい、臥路は次々と討手を倒していく。
そして最後の相手の刀を紙一重で潜りかわし、臥路の刀が深々と討手の胸を貫いた時、ようやく戦いは終わった。臥路が死んだ討手たちの覆面をひっぺがすと、予想通りそこには小早川家につかえていた友人たちの顔があった。
そのような襲撃が数度。
このままでは逃げ切れないと考えた臥路は、闘神都市に逃げ込んだのだ。
闘神都市へと歩みを進めながら、泉のように湧いてくる思い出に、臥路は知らぬうちに血がにじむほど拳を握りしめていた。
闘神都市では一年に一度、闘神大会というトーナメント大会が行われる。
出場する選手には、それなりの腕と大会期間中の滞在費を自己負担する経済力が要求され、さらに見た目が麗しい女性をパートナーとしなければならなかった。
そこでは優勝者には賞として莫大な賞金と栄誉が与えられる。
そして闘神都市で絶対的権力者として振舞い、パートナーとともに闘神の館で何不自由なく暮らす事が出来るのだ。
権力を手に入れることが出来れば、当座は追っ手の心配をしなくてすむ。そして、じっくりとさらに遠くへと逃げる準備もできる。そう考えた臥路は闘神大会に活路を見出した。
なにより臥路の腕ならば、充分に優勝ねらえたことも理由だった。
しかし、臥路は準々決勝で敗れた。
それも、ただ敗れたのではない。
よりにもよって臥路を追って来た鈴夜に重傷を負わされ、その傷がもとで敗れたのだ。
闘神大会では、試合の勝者は敗者のパートナーを一日自由にする権利を得ることができる。臥路を破った対戦相手は、雫姫を犯し彼女を自刃に追い込んだ。
それが臥路と雫姫の逃亡劇の最後であった。
空気が微かに変わったのを感じ、臥路はもの思いからさめた。
いつの間にか、冷たい夜気にかすかな血のにおいがまざりはじめていた。
臥路にとっては嗅ぎなれた、戦いのにおいだ。
臥路はもと来た方向を見た。しばらく耳を澄ませていると、じきに何匹もの馬の蹄の音と何を言っているのかわからぬ怒鳴り声が聞こえてきた。
臥路が乱暴に狐嫁女の手を引いて街道の脇に伏せると、その目の前を四騎の騎馬が土煙をあげて次々走り去っていった。
先頭の馬上には、少女をしっかりと抱き締め、ぼろぼろの旅装束を着た少年の姿。少年は血まみれだった。残りの三騎には覆面・黒装束姿の男達が見えた。
ふいに少年の馬はいななき背を弓なりにして、まえにうしろに蹄を蹴り上げて暴れ狂った。少年が手綱にしがみついたが、引き剥がされるように大地に放り出された。
少年は少女を庇いながら大地に転がると、腰に差していた鞘の中ほどを握り締めた。
三人の覆面達も馬から飛びおりて、飛ぶように間合いを詰めていく。
正面のずんぐりとした人影から白い光が走った。
少年は少女を大地に横たえながら、引き抜いた鞘の先でその光を跳ね上げる。ガシッという鈍い音が響いた時には、鞘は勢いにまかせて、ぐるっとまわり、右から切りかかって来たのっぽの追っ手の剣を弾いていた。
鞘を、あるときは八の字に、あるときは大小に回し、三人の連続攻撃をさばき、はね返していく。相手の覆面達が戦いながら惚れ惚れとなっているような鉄壁の防御だった。
だがそれが精一杯のようで戦いは徐々に膠着していった。三人がかりで攻め続ける覆面と一人で守り続ける少年では、動きが鈍った時こそ少年の敗れるときであった。
臥路は脇に伏せながら、戦いをじっと見つめていた。
戦っている。
一人の若者が気を失って倒れている少女を庇い、追っ手と戦っている。
(……むかし、こんなことがあった。)
そんな思いがひらめいた時、臥路は少年に助太刀する事を決めた。
狐嫁女に頷き、ばっと街道の真ん中に飛び出すと割鐘のような声で大喝した。
「そこでなにをやっている!」
後ろから忽然と現れた強烈な殺気と存在感に、三人の追っ手の手がピクリと止まった。
その隙を見逃さなかった少年の姿が沈み込み、鞘から稲妻がほとばしっていた。
信じられないほど鋭利な抜き打ちだった。
ずんぐりの体から、闇より濃い墨汁のような血潮がふきだし、どうっと倒れた。少年は体をひねると、返す刃で呆気に取られていたのっぽの頭をざくろのように叩き割った。
三人目は後ろに大きく飛び、臥路と少年の顔を見比べ、観念したように森の中へ逃げていった。
少年はよろめいて剣を杖にしながら、逃げていく追っ手に叫んだ。
「親父に伝えろ! お袋は多くの罪を許したかもしれないが僕は違う、アナは僕のものだ! 渡さない。長月がそう言っていたと!」
追っ手の気配が完全になくなったのを確認すると、ありとあらゆる筋肉が弛緩したように少年はがっくりと膝をついた。
狐嫁女が近くにかけよって肩を貸すと、小さく頭を下げた。
しばらく長月少年の容貌を見つめて呆然と立ち尽くしていた臥路は、我に返り、少女を抱き上げながら長月に近づいた。
「世色癌はあるか? ないのならば拙者たちの分をわけるが。」
「アナは……?」
長月が呻くようにつぶやいた。
体はガクガクと震え、ときおり目の光がふっと消えるような有様だった。
「大丈夫だ。ここにいる。」
臥路は顎をしゃくり、腕の中で眠る少女を指した。
「とりあえず、ここから離れよう。君の馬を借りるぞ。」
臥路が視線を馬から少年に戻すと、既に長月は白目を向いて気を失っていた。
臥路と狐嫁女が二人を運びながら、闘神都市にたどり着いたのは、東から朝日がのぼりはじめたころだった。
2 シードの子
(しかし、驚いたな。思わぬことになった。)
臥路は残っていたお茶を全てのみほすと、嘆息して、机を挟んで座っているアナを見た。
彼女はそわそわと落ち着きなく席についていた。
ここは闘神都市の正門からまっすぐのびる大通りに面した、小さな宿の一室である。
部屋の真ん中にある小ぶりの机と人数分の椅子の他には、粗末な寝台が二つあるだけだ。ただ、日当たりはよく、カーテン越しでも部屋の中は明るく暖かかった。
あの後、アナと呼ばれた少女はすぐに目を覚ました。そしてここまでの道すがらで、彼女はアナと名乗り、少年の名を瑞原長月であると告げた。
臥路たちは闘神都市に入ると、すぐに四人分の宿をとり、長月を寝台に寝かせ、アナとの席をもうけた。そして今まさに、三人は向かい合って座っていたのである。
アナの姿は、それまで身につけていた泥だらけのメイド服から使い女から渡された服に着替え、水で顔と体を拭いてさっぱりとした姿になっていたが、栗色の髪をお団子でまとめているのだけはかわっていなかった。
臥路が昼の光の中で見る彼女は、優しげな笑顔が印象的な娘だった。
本人は気がついていないかもしれないが、ふと憂いを含んだ表情を浮かべることがあり、それがまた一抹の儚さを感じさせて彼女の美しさを引き立てていた。
さらに、彼女には、体全体からたちのぼる青い炎のような妖しさがあった。
なにか重大な決意を固めた凄艶の気だ。
まだ少女の面影を残すが、男好きする顔立ちの美女といっていい美しさだった。
要するに完全な第三者である臥路や狐嫁女にも、長月少年が体をはって守り通したのが充分にわかる娘であった。
臥路は彼女を見ながら、別室で眠る長月少年の顔立ちを思い出した。
燃えるような赤毛と人を酔わせるように燦と輝く瞳をもち、それでいて体の線はういういしい。一言で言えば彼には青春美の結晶のような野生の魅力がある。ただし、これは女よりも一つか二つ年下かもしれない。
臥路からみて、美男美女のつがいといっていい二人であった。
改めて臥路が自分と狐嫁女の自己紹介をすると、臥路の椀に温かいお茶をついでいた狐嫁女がアナに微笑みかけた。
「あの、長月は? 長月の様子は?」
「命に別状はないだろう、寝れば直る。心配はない。」
臥路の答えを聞いて、アナははじめてホッとしたように胸をなでおろした。
そして頭を下げ、自分達を助けてくれた礼を丁寧にのべた。
顔を上げると、アナはほっそりとした体を一段と小さくした。
「あの、宿代と治療費……。私達、お金がないんです。」
それは臥路にも、二人の着の身着のままといった風体をみればすぐに察しがつく。
臥路にかわり、狐嫁女が言った。
「宿代は貸しにしておくよ、治療費は世色癌くらいしか使ってないしサービスだ。あちらの坊やが元気になったら働いて稼いでもらうさ。」
彼女は長月が寝ている部屋の方へ顎をやった。アナはじっと二人の顔を見ていたが、やがて、さっきより深々と頭を下げた。
臥路がアナに事情を尋ねると、アナは逡巡するように俯むいて黙っていた。
臥路にも、長月とアナがなにかしらの、話しにくい事情を抱えていることは分かっている。
ここは全ての願いを飲み込む魔都・闘神都市である。武を持って願いをかなえるため、多くの戦士が闘神大会に集い、殺しあう欲望の都だ。
その郊外で血まみれで追っ手と戦うなど、何の事情もないほうがおかしかった。
「長月殿も追っ手も瑞原流の使い手だったな。さしずめ瑞原道場のお家騒動か。」
アナがはっと臥路を見た。
じきに覚悟を決めたようにアナは頷くと、二人が駆け落ちしていることを告げた。
その言葉に、それまで微笑みを浮かべて、臥路の横に座っていた狐嫁女が色を失った。
「長月のお父さまである道場の師範に、二人の仲が認めてもらえなくて逃げてきました。」
「師範。闘神シードのことか。」
「はい。」
アナがいうには、二人は幼馴染で姉弟のように育てられ、成長してからは恋仲になった。
しかし長月は名門道場の跡継ぎだ。
対してアナは、もともと片親で、その残った親も失い、孤児であった所をシードの養子として引き取られたにすぎない。道場の下女として働いていた身だ。
そのため、身分不相応を理由に仲が認められなかったというのだ。
それはそうであろうと臥路は思った。
瑞原道場といえば、現在世界最高とも言われる道場である。
師範を務める二人、シード・カシマと瑞原葉月の夫婦はそれぞれ闘神大会で優勝者に与えられる称号・闘神を持つ。
その強さが天下に鳴り響いているのは、臥路もよく知るところだ。
その背景として、二人の凄まじい実力もさることながら、約二十年前にアプロス市長が闘神大会を主催していた時代より前の闘神は、この二人しか生き残っていないということもあった。特にシードは、長い間アプロスとともに闘神の館に居た上で、生きて帰った稀有な存在であった。
闘神の館で、なに不自由なく豪奢な暮らしをしていたはずの闘神たちが、実はほぼ全滅に等しい状態であったというニュースは、当時の闘神都市で凄まじい衝撃をもって受け止められた。
そして大会の主催者で館の主であったアプロスが、その直前に闘神のカーツウェルや幻杜坊らとともに不可解な死をとげていたことにより、真相は永遠の謎の世界に追いやられていた。
シードと葉月は黙して語らぬが、闘神たちが行方不明になった真相はおろか、アプロスの死に深く関わっているのではないかとすら噂されていたのだ。
「闘神二人の子である長月に対して、私は生まれたときからの片親で、親の顔すら知らない。どこの馬の骨とも知れぬ卑しい人間です。だから逃げてきました。」
アナは肩を震わせ涙をこぼした。
「でも、私がいる限り逃げ切れません。私のせい、長月は私のせいであのような傷を……、本当はあのような怪我をすることはなかったのに。だから、闘神になろうと思ったのです。どんな不条理だろうと、どんな理不尽であろうとも、闘神になりさえすれば貫き通す事ができますから。」
狐嫁女がアナを長月のもとに案内して出て行ったあと、部屋にあったのは窓から差し込む日の光と時折ゆらりと揺れる臥路の影だけであった。
臥路は虚空をみつめながら静かに笑っていた。
趣味のいい事ではないとわかっていながら、冷たい笑みを抑えられなかったのだ。
カシマ、カシマ、カシマ、カシマ!
雫姫を陵辱したすえ死に至らしめた、あのシード・カシマの子が!
アナの言葉を信じるのなら、身分差を理由に実父シードたちから追われ、闘神大会に活路を見出そうとしているのだ。
まるであの時の自分たちのように。
これが運命の皮肉でなくて一体なんなのだろうか。
「因縁。」
ボソリとした、聞き取るにも苦労するような女の声。
部屋へ入ってきた狐嫁女に臥路は目をやった。
「そうかもしれん。」
「お前から雫姫を奪った仇の子らがなあ。」
狐嫁女は後ろから静かに臥路の首に両腕を回した。無駄の肉のない、ひきしまった肉体が臥路の背に押し付けられる。
耳もとに唇を寄せ
「切るか? 切っちゃおうよ。いまなら大根を切るよりも容易い。」
「どのみち姫は戻らん。」
「戻らん、戻らん。いつもお前はそれだな。」
首を振った臥路をみて、狐嫁女は呆れたように言った。
「で、どうするんだい。あいつらは。」
「逃がすのを手伝う。」
「わかった。……しかし。」
臥路は無言でその先をうながした。
「雫姫の鎮魂のため大会に参加してみれば、闘神シードの子に出会う。これは、なにかの因縁なのだろうよ。雫姫を失ってから、空虚な生きる屍だったお前が甦ることができるかもしれない。この戦い、勝て。まずは、自分自身の為に。」
狐嫁女は枯れた古木のうろにでも語りかけるように言った。
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