ゲッツェンサバイバル日記



未開惑星 1日目 晴れ

我名はゲッツェン。
惑星侵略軍ダイラストのしょ・・・・いや元将だ。
今私は未開の地にいる。
ここには騒がしい人の群れも眼を焦がすネオンの光もここには無い。
あるのは清々しい空気と地を栄える緑、そして穏やかな時間だけだ。
ここは素晴らしいところだ。
私一人しかいない事をのぞけば・・・・
幽閉カプセルに閉じ込められ、大気圏外で星間ジャンプを繰り返してこの地に着いた時、
正直自殺しようとも考えた。
将にあるまじき失態、プレスバーン様からの見限り、そしてどことも知れぬ未開の地への追放。
生きていることの惨めさが私のプライドを傷つけていく。
だが私は死ななかった。
もちろん死ぬのが怖かった訳では無い。
死ぬ事などいつでも出来る。
私の中で命をつなぎとめていたのは敗北の屈辱だった。
ここで死ねば私は自分で敗北を認めたことになる。
私はこれまで強敵と戦い倒れながらも何度でも立ち上がり最後には勝利してきた。
この命尽きるまでまだ勝負はついていない。
私は幽閉カプセルの残留エネルギーを自分にチャージし無人の野を歩き始めた。
生きてもう一度エスカレイヤーと戦う為に。


未開惑星 3日目 曇り

現住生物に出合った。
全長8m(尻尾含む)はある巨大な猫だ。
いや正確には猫ではないのかもしれない。
血の臭いをたどって行くとそこに奴はいた。
口の辺りの白い毛を真っ赤に染め、5mほどのダックスフンドに似た犬を貪っていた。
私の気配に気付き大きな猫目がこちらを振り向く。
敵と判断したのか、奴は食事を止め、茶色い巨体をこちらに向けた。
私を睨み、つま先立ちで背を丸めより体を大きく見せる。
ふーーっと毛を逆立て威嚇する高さは私の倍ほどもあった。
だが私は臆することなく語りかける。

「無駄な殺生は好かんが、かかって来るなら容赦はせんぞ」

私は腰に下げていた鞭を握った。
そしてこちらも殺気を発し、警告する。
巨大猫はそれでもひるまなかった。
2歩ゆっくりと間合いを詰めると縦に裂けた瞳がキラリと光った。
尋常ならざるスピードで猫の爪が私に襲い掛る。

「なに?」

驚きながらも紙一重で避ける。
僅かに帽子に爪の引っかき傷が付いた。
まだ間合いの外だと思っていたが予想以上のリーチだ。
だが反応出きないスピードではない。

「次は・・・・・・決める!」

じりっと猫が半歩間合いを詰めた。
そして一閃!
最初は右!そして左の猫爪が空を裂く。

「ふん!こしゃくな!」

私は右爪を右に体捌きして避け、左の爪が来る前に宙に舞った。
巨大な左足にトンっと着地すると再び跳躍し、猫の顔面に迫る。
無防備な顔面に私は鞭を振り下ろした。

「ブリッツェン・シュナーベル!」

猫の眉間に我必殺のブリッツェン・シュナーベルが炸裂した。
しかし僅かに血がしぶいたものの強靭な獣毛に阻まれ、
決定的なダメージを与えるには至らなかった。

「そんなばかな!」

次の瞬間怒りの双眸が私に向けられる。
空中で動きの取れぬ私に容赦の無い一撃が加えられた。

「ぐはああああああああああああ!」

ガードも間に合わず重い猫パンチを受け私は吹き飛ばされた。
優に30mは飛んだだろう。
地面に激しく打ちつけられ私はそのまま意識を失った。


未開惑星 4日目 雨

私は雨に濡れていた。
敗れたまま草むらに大の字になっている。
敗北に打ちのめされる心と傷に悲鳴をあげる体が動く事を拒んでいた。
必殺技を使ったせいでエネルギーも残り僅かだ。
ダイラストの将軍だなどと強いつもりでいたが、辺境惑星の小娘に負け
今度は巨大な猫なんぞに負けるとは・・・・
自分がやけにちっぽけに思えた。
もしまだ涙が流せるなら泣いていたかもしれない。
涙の代わりに容赦無く降り注ぐ雨が私の頬を伝っていく。
このまま死ぬのも私には似合いかもしれない。
そう本気で思った時、懐かしい顔が浮かんだ。
それは唇を噛締めたミストレーヌの顔だった。

「どうしたミストレーヌ!一度や二度負けたぐらいで諦めるなどお前らしくも無いぞ!」

私はそう言ってよくミストレーヌに稽古をつけてやった。
その度に彼女は唇を噛締めながら立ち上がり血豆だらけの手で剣を握り私に向かってきた。
そして驚くほどに強くなった。
不意に笑いがこみ上げてきた。

「はっはっはっ、一度や二度負けたぐらいで諦めるなどお前らしくも無いぞ!・・・・か。」

私はガラにも無く大声で笑っていた。

「その言葉は今の私にこそ相応しい!」

目を開き天を見上げると不甲斐ない私を怒っているかのように稲妻が走っていた。

「そうだ!諦めるなど私らしくも無い!」

私は重い体を動かし起き上がると近くの丘の方に歩き始めた。
丘の頂上に着くと私はタイミングを見計らって鞭を天へ向けて放った。

ぴっしゃあーーーーーーーん!

鞭の先端に雷が落ち、自然界が作り出した凄まじい電気エネルギーが私に襲い掛かる。

「ぐはああああああああああああ!」

雷にうたれる中、私はリバースしたエネルギー回路を通して全身に力がみなぎるのを感じていた。

ぼす!

チャージを終え、丘に横たわる。
服のあちこちから煙が出ていたが雨によってすぐに消し止められた。
また笑いがこみ上げてきた。
私は自然に感謝しながら雨に負けぬように笑った。


未開惑星 5日目 晴れ

私はまた巨大猫の前に立っていた。
額についたブリッツェン・シュナーベルの傷跡。
間違い無く奴だ。
私は腰の鞭を取り出すと構えた。
私の殺気に反応して猫も戦闘体制にはいる。
間合いは前回よりも少し遠い。

「我名はゲッツェン!いざ尋常に勝負!」

私から間合いを詰めた。
敵の突進に反射的に猫の右足が放たれる。
凶悪な爪を踏み込みながら潜って避ける。

「ニヤッ!」

猫がそれを予測していたかのようにワンツーの左を出してくる。
私はその攻撃に必殺技を合わせた。

「ブリッツェン・シュナーベル!」

バチ!

お互いの攻撃が相殺し合う。
私は止まらず地を蹴って猫の顔面を間合いに入れた。

「ブブブブブリッツェン・シュナーベル!」

ブリッツェン・シュナーベルの5連撃が猫の眉間に炸裂した。

「一度で倒れないのなら何度でも倒れるまで叩き込むのみ!」

強烈な鞭の乱舞に傷跡が開き、大量の血が吹き出す。
私は間合いを取るためと追い討ちを兼ねた蹴りを眉間に打ち付ける。
クルクルと宙返りし間合いの外に着地した。
巨大猫は顔面真っ赤に染めながらそれでも倒れなかった。
鋭く私を睨み体勢を低くする。
今度は牙と爪の両方で襲ってくる気だろう。

「やはり獣毛が邪魔だな」

私は愚痴をこぼした。
私の苦笑が分ったのか巨大猫が跳んだ。

「ニヤァァァァァァァァッ!」

巨大な顎が私を砕こうと降ってくる。
私は避けずにその巨体に向かってダッシュし、スライディングしながら猫の後ろに回った。

「外がダメなら中から攻撃すればいい!」

私は着地直後の巨大猫の肛門に鞭の柄を突き刺した。

ブスッ!

「!!」

何をする!と言うように情けない顔で猫が振り返る。
だがもう遅い!

「エレクトリック・シュナーベル!」

100万ボルトの電撃が巨大猫の体内でスパークする。
全身の毛を逆立たせコンセントに触れた猫のように痙攣する。
放電が終え鞭の柄を引き抜くとぶすぶすとこげくさい臭いをたてながら巨大猫は倒れた。

ずずうーーーーーん!

土煙と共に口と肛門から黒い煙が立ち昇る。
巨大猫はまだ死んではいない様だが二度と立ち上がることは無かった。

「良い勝負であった!感謝する!」

私はそう言い残してその場を去った。
もう遭う事は無いかもしれないが自分の弱さを気付かせてくれた強敵の無事を祈りながら・・・


我名はゲッツェン。
荒野を彷徨う不屈の男だ。







あとがきのような物

ケーン・ワカバマークです。
今回はゲッツェンネタなんですが、いやあ今週はお休みするつもりだったんですが
書き始めてみると結構すらすら書けるんでびっくりしました。
練り方が足らんわボケなすが!って怒られそうですが、やるだけやったので
勘弁してください。

尚、苦情、お叱り、感想は下記までお願いします。

uekisan@m14.alpha-net.ne.jp