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第二話
第三話
第四話
第五話

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超昂天使エスカレイヤー NEO
                      作 二次元人間

第五話
「戦う事が、いつも強いとは限らない・・・」


 一歩、一歩近づいてくる、オレンジ色のコスチュームのエスカレイヤー。
声をかけるまでもなく、モンスターの豪腕が唸りをあげる。
そのまま、エスカレヤーのいる方向にはじきとばされた。
肺の空気が全部出て、声すら上げられない。
そして、飛ばされて来た美咲に、エスカレイヤーは・・・

「悪いけど・・・死んでもらいます」

巨大な蟹の爪のようなパルシオンが襲い掛かかった。

        ー重力慣性制御開始ー

ぎりぎりで間に合った制御が、美咲の体にブレーキをかける。
しかし、空中で静止した一瞬をモンスターは見逃さずに襲いかかる。エスカレイヤーも攻撃の手を緩めはしない。
ふらふらの美咲を、その爪が捕らえようとした瞬間。
二人の間に割って入った影が、爪の一撃をはじき返した。

「何をもたもたしてるんだ」
「玲奈さん・・・でも、この人エスカレイヤーじゃ・・・?」

割って入ってきた玲奈は、美咲の襟首を掴んで怒鳴りつけた。

「ああ、そうさ。だからアイツは倒すべき敵なんだよ!!
忘れたのか?エスカレイヤーは敵同士だと!」

突然の乱入者に、一瞬動揺したもののもう一人のエスカレイヤーはすぐに体勢を立て直し、

「ちっ、仲間がいたんですか」

巨大な腕のモンスターと共に姿を消した。






 「いい加減、決めたらどうだ?確かにアイツを倒せば人殺しだ。でもな、エスカレヤーになるってことはそういうことだ。
戦い続けることだけが柳瀬恭平に近づく道、
それだけにしか賭けられない人間だけがエスカレイヤーになれる
戦って、生き残ることしか考えていない。
そんな中途半端なままだとオマエ・・・」

玲奈は、美咲たちに背を向けバイクに跨って言った。

「死ぬぞ」

美咲はただ呆然と立ち尽くす。確かに苦しいことが待っているのはわかってた。でも・・・・

「これが・・・『戦い』・・・」

人を守るはずの力で、人が傷つけあう。
それをあたり前だと言い放つ存在。

「これが・・・こんなのがエスカレイヤーなの・・・」

十年前、ダイラストの侵略から地球を守りぬいた正義の味方。自分もそんなふうにみんなを守りたいと思ったでも、現実は・・・・

「おい、美咲、大丈夫か?」

はっと、意識が現実に帰る。目の前に心配そうな貴之の顔あった。

「うん、大丈夫。平気だよ」
「そうか・・・」

自分は、やっぱりエスカレイヤーになる資格などないのだろうか。

「之ちゃん。私・・・やっぱりダメなのかな・・・エスカレイヤーに
なる資格ないのかな・・・?」

貴之は、美咲の肩に手を当てる。

「確かに、俺は一之瀬の言ってることは正しいと思う。
一人も殺せない奴は、一人も守れるはずはない。
それに、世界はキレイ事なんて一つも受け付けない。
でもな、俺が美咲がDDDをとった時なんて言ったか覚えてるか?
『一人くらい都合のいい正義の味方がいいだろ』って。
他の奴らが戦いあってるなら止めればいい。
モンスターを倒す為だけに戦えばいい。
美咲。おまえは、さっきの奴とも、一之瀬とも違う、
おまえの、湖川美咲のエスカレヤーになればいいんだ」

美咲は、貴之に抱きついた。

「之ちゃん・・・ありがとう・・・」

涙が流れた、嬉し涙が。それは、恭平の話の時に沙由香の流した涙とは、まったく異質の涙。
そう、私は戦える。さっきの言葉と之ちゃんがいるなら、
私はきっとこれからも戦っていける。みんなを守る為に・・・





数日後・・・・
今日も客の少ない喫茶店「亜莉栖」。そこで沙由香は、洗い物
を一通り済ませて一息つこうとしていた。

「あの、ごめんください」

そこに人が入ってきた。あまり手入れされてないぼさぼさの髪を後ろで結ったスーツ姿の女。

「柳瀬沙由香さんですよね?」
「はい、そうですが。どちらさまですか?」

女は、慣れない手つきで胸ポケットから警察手帳を出した。

「え〜と。警察の者で刑事の菅原恵美という者ですが、行方不明の柳瀬恭平のことで、お聞かせしたいことがあるのですが・・・」

その妙にオドオドした声が告げた内容に沙由香の体が一瞬強ばる。

「どういうことでしょうか・・・?」
「いや、事が事だけに出来れば署の方でお願いいただければ」

沙由香は急いで立ちあがった。その様子に菅原は驚いたのか
妙に勘に触るオドオド声で言った。

「そんなにあせらなくても・・・外に車を出してますから」
「あ、そうですか。ならちょっと連絡を・・・」

背を向け電話とろうとした瞬間。背後から、菅原は沙由香の口
を布で塞ぐ。
声にならない声で叫び、抵抗したもののほんの数秒で沙由香は
糸の切れた人形のように動かなくなる。

「まあ、こんなものですね・・・」

さっきのオドオド声とは正反対の冷酷な声で菅原は、沙由香を
引きずり車に押し込んだ。






 「沙由香さん。ただい・・・」

店内の惨状玲奈は息を呑んだ。床に落ちておる電話に、
倒れている椅子。そして、引きずられたあと・・・

「もしかして・・・」

玲奈は、おこりうる最悪の事態を想像した。
迂闊だった、新しいエスカレイヤーが現れたというのに・・・

「ちっ!!」

舌打ちをして、バイクに飛び乗ろうとした時、後ろから美咲が走ってきた。

「玲奈さん、どうしたんですか?」
「沙由香さんがさらわれたんだ!」

それだけ言い残すと玲奈はアクセルを踏み込み、瞬く間に走り出していった。

「そ・・・そんな・・・」

ここで立ち尽くしているわけにはいかない。
でも、どうやって?走っても間に合わないし、どこにいるのかさえ。
どこにいる・・・?
美咲は、指にはめているDDDに目を向けた。
それは、淡く赤い光を発している。

「反応してる・・・わかる?・・・どこにいるのか」

ちょうどそのときけたたましいバイクの排気音が聞こえた。
そう、それは聞きなれた・・・

「之ちゃん!」

スズキRG500Γ。貴之の愛車。

「之ちゃん。バイク直ったの?」
「ああ、ついさっきな」

美咲は急いで今までのことを話した。
沙由香がさらわれたこと、玲奈が後を追っていること、
そして居場所がわかることも。
貴之は、美咲にヘルメットを投げてよこす。

「頼むぜ。相棒」

貴之の声にRG500Γの2ストロークスクエア4エンジンが唸りをあげた。





 郊外の寂しい漁港。そこに立つ二つの影。玲奈と菅原。
菅原の顔には、酷薄な笑みが張り付いている。

「思ったより早かったですね」

車の中には、沙由香がぐったりと倒れている。

「やっぱり、彼女を確保しておけば色々と便利だと思いますからね。」

そのねちっこい声を気にも留めず玲奈は、菅原につかみかかった

「御託はいい。ここで決着をつけるか?」

菅原は、玲奈の剣幕にひるみもせずその後ろを見ている。
バイクの音と共に聞こえてくる声。

「玲奈さんーーー」
「アイツら・・・」

菅原は、玲奈の腕を押し返すと言った。

「二人相手じゃ不利ですね。今はやめましょう・・・」

三人に目もくれず彼女は、去っていった。





 「沙由香さんは?」

美咲が息を切らして問う。

「ああ、眠ってるだけだ。たいしたことはない」

玲奈は、沙由香をお姫様だっこで抱えた。

「玲奈さん・・・」
「ん?」

玲奈が怪訝な顔を向ける。

「私戦うよ。玲奈さんには玲奈さんの戦いがあるように、
私には私の戦いがある。私はまだ、へこたれないよ」
「勝手に言ってろ」

玲奈は、関係ないといったそぶりで通り過ぎていく。
しかし、美咲の顔には満足げな笑みがうかんでいた。






 「やっぱり、柳瀬沙由香は押さえておきたいですね・・・」

菅原はスーツのうちポケットに入っている、DDDを持て遊びながら
つぶやいた。

「菅原恵美巡査部長ですね?」

菅原の前に二人の男が立ちはだかる。

「署までご同行お願いします」

彼女は、少し笑うとそのまま走って逃げ出した。

「待て!!」

走って追う刑事達を尻目にうちポケットのDDDに触る。

(私のは特別製なんですよ)

ー質量変換、形成。精神体制御開始。『巣』展開ー

菅原は、立ち止まり。しごく落ち着いた口調で命令した。

「喰え」

地面から、突如巨大な腕を持った怪物がせりあがる。

「ひっ」

悲鳴を上げる間もなく怪物は、男達を粉砕し食い尽くした。
擬似モンスターの創造と制御、そしてなにより変身しなくてもそれらが扱えること。それが運動係数制御も、重力慣性制御もできない菅原のDDDに秘められた能力だった。

「便利なものですよね・・・」

一人心地につぶやいていた彼女の目の前に、以前戦った少女とその知り合いらしい少年が現れる。

「おや。あなたたちは・・・・」






 そして、喫茶店「亜莉栖」。
今まで、眠っていた沙由香が目を覚ました。

「ん・・・玲奈・・・?」
「大丈夫ですか」

沙由香はうなずく。それを見て安心した玲奈はその場を離れた

「あの人と戦うつもりなの・・・?」

玲奈は、振り向かない。

「いや。今はまだしませんよ・・・」

そして、そのまま店の外にでていった。

(玲奈はやる気だ・・・あの人を・・・)

ただバイクの排気音だけが、「亜莉栖」のなかに響いた。





 「どうして、あんな事したんですか・・・」

目の前の惨劇に、美咲の声が怒りに震えている。
それに、菅原は「おまえバカか」と見下した口調で答えた。

「いや、ちょっと前に裏でやってた仕事のパートナーを殺したのが
ばれ始めましてね。ちょうど死体を隠していた最中にあの、
柳瀬恭平が現れて言ったんですよ。
『おまえにふさわしい生き方をしたいなら・・・戦え』ってね」

何が可笑しいのか、ケラケラと笑い声を上げる。

「確かに。エスカレイヤーの頂点を極めてみるのも悪くな・・・」

菅原が言い終わる前に美咲の平手がとんだ。

「エスカレイヤー同士の戦いなんて絶対に間違ってる・・・
でも、私は・・・私はあなただけは許せない!」
「おい・・・美咲。いいのか?」

美咲は黙ってうなずく。そして、変身しようとしたその時。

「オマエには無理だ」

声と共に放たれた手刀が、美咲を気絶させる。

「起きたら伝えておけ。コイツが許せないから戦うんじゃない、
コイツがエスカレイヤーだから戦う。理由はそれだけでいい」
「一之瀬・・・」

そんなやり取りを気にも留めず菅原が三角錐の形をしたDDDを
取り出した。

「あなたは、話が早くていい。やりましょう」





「変身!ビートチェンジ!!」
「変身!ビートチェンジ!!」

変身の終了と同時に『巣』が展開される。

「何を驚いてるんですか?『巣』を張れるのはモンスターだけでは
ないのですよ」

玲奈は、いつものようにパルシオンを槍には変形させずに、菅原の一撃を受け流す。

「遅いですよ」
「ちっ」

一瞬の虚を突き巨大な爪が、玲奈を挟みこむ。

ー質量変換、形成。超高振動開始ー

玲奈の背中から一対の黒い翼が現れると同時のその一枚、一枚が振動を始めた。

「ぎゃあああああっ」

振動はやがて、超音波を発生させ相手の脳に直接振動を与える。頭を押さえよろめく菅原。お返しとばかりに玲奈は懐に潜り込む。

「パルシオン、ランス!」

懐で剣型から一気に長大な槍に変わったパルシオンが菅原を吹っ飛ばす。

「なかなか、やりますね。でも・・・」

玲奈は、突然後ろから現れた菅原の擬似モンスターに地面に叩きつけられる。

「もう終わりにしましょう」
「それはこっちのセリフだ」

二人は、同時に構え叫んだ。

「ファイナルエスカレーション!!」

飛び上がり、槍を下に向けたまま急降下する玲奈を黒い羽が、
包み込む。そして、菅原はただでさえ巨大な爪型パルシオン
をさらに巨大化させ、モンスターの肩を踏み台にして空中で迎え撃った。

「ウィングキャリバァァァァァ!!」
「シザースクリーム!!」

轟音。
煙の中に立ち尽くす両者。そして、崩れ落ちたのは玲奈だった。

「げほっ、がはっ」

口から大量の血を吐いている。

「ふう。これで一人減りましたね・・・」

玲奈に背を向けて菅原が去ろうとしたとき。突如DDDが胸部にあるDDDが砕け散った。

「な・・・まさか・・・」

変身が解ける。そして、制御を失った擬似モンスターは目の前にいた彼女に襲いかかってきた。ただの人間とモンスター勝負は見えている。

「いいいい嫌だ。死にたくない、死にたくない・・・私は・・・私は・・
絶対生き延びて・・・い、いやぁぁぁっぁぁっ」

菅原を喰い殺したモンスターが玲奈にも近づいてくる。
自分の体が崩れだしているのにもかかわらずに。

「まだだ・・・」

身体再構築が間に合わないことを知った玲奈は、それでも立ち上がろうとする。しかし、力が入らない。
モンスターの豪腕が振り下ろされたその時。

「パルシオン、シールド!」

間一髪。美咲のシールドがモンスターの攻撃を防ぎ切る。
そして、そのまま押し返した。

「ファイナルエスカレーション!」

足元に集まる光の粒子。美咲は空に向かって飛び上がる。

「フォルミトンキィィィィクッッ!!」

その蹴りにモンスターは跡形もなく消し飛ぶ。
それをきっかけに。ギリギリのバランスで存在していた『巣』も消滅した。

「あの人は、殺したの・・・?」

変身を解いた美咲が玲奈に問いかける。
よろよろと立ち上がった玲奈は吐き捨てるように言った。

「当たり前だ。これが『戦い』なんだ。DDDの数は全部で13。
残るエスカレイヤーは11人。オマエも含めてな!
・・・おれは必ず生き残ってみせる!」





そして、喫茶店「亜莉栖」。

玲奈と美咲の間にはどこか気まずい雰囲気が流れていた。
店の玄関の前に立つ。その時玲奈が口を開いた。

「菅原を倒したことは、沙由香さんに言うなよ」
「?」
「わざわざ、オマエと同じ思いをさせる必要もないだろ」

それだけ言うと、立ち止まった美咲と貴之の事は気にせず、そのまま店の中に入っていった。

「ただいま・・・沙由香さん」





 「恭平さん・・・」

マドカは、自分の膝に頭を預けて眠っている恭平をみた。
本当に死んだように眠っている。どんな夢を見ているのだろうか。
いや、そんなことは決まっている。この人の見る夢に出るものなど
決まっているではないか。自分の入り込む余地はどこにもない。
でも、それでも・・・

「恭平さん。私があなたの盾になります。世界の全てからあなたを守り抜いてみせます・・・あなたが私を愛してくれなくても・・・」

マドカは、恭平の耳元でそっと囁いた。

「私が・・・あなたを愛しているから・・・」

そして、目を覚まさないようにそっと、自分の唇を恭平の額に重ねた。





次回予告
「私は、人間の欲望の果てを見てみたいのよ」
「先生の帰ってきてくれる場所は私だけですから・・・」
「あら、知らないの?今をときめくスーパー弁護士のこの私。
九条静香を」
        ーもう。戦うしかないんだー

お詫び:今週は時間の都合でエセSF講座が書けませんでした。
     ごめんなさい・・・・(謝)