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第一話
第二話
第三話
第四話
第五話

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超昂天使エスカレイヤー NEO
                      作 二次元人間

第二話
「道を選べ。それが最悪の結末に繋がっていたとしても。
 何も選ばないよりは遥かにマシだ」


       私は、弱い。どうしようもないくらい弱い。
      だから、あの人が傷つく。あの人が赤くなる。
      だから・・・だから私は・・・・・


 「あら、一口も飲んでないのね。それともコーヒーの方がよかったかしら」

街の中心を少し離れた閑静な住宅街。
そこにある喫茶店「亜莉栖」。冷めた紅茶を前にして、俺は猛烈に混乱していた。突然、化物がが現れて危うく死にかけ。これまた突然現れた女が変身して、化物をやっつけた。一昔前ならともかく、今そんなこと言ったら完全に精神病院行きだ。

「なあ、一体どうなってるんだよ、第一アンタ達何者だ?なんで俺の名前知ってるんだ!!」

俺は立ち上がって、目の前にいる女、柳瀬沙由香と名乗った。
に怒鳴った。女はさして驚きもせず。平然と答える。

「最初の問いの答えは、前も言った通り。次はノーコメント。最後は
数日前からあなた達を見張ってたから。これで満足かしら?」

その受け答えには、一分の隙もない。それ故にかえって苛立ちを強める事になる。俺はそれ以上なにもしゃべらなかった。


 「沙由香さん。これ」

二階から降りてきた、例の変身した女。一之瀬 玲奈という。が指輪を沙由香に投げてよこした。

「彼女の具合はどう」

沙由香は、振り向きもせず、指輪をキャッチする。

「たいした外傷もないし、ただの気絶ですよ」

彼女の態度は、沙由香の前とそれ以外とではかなり違うことを、貴之は思い知らされた。普段は、男勝りというよりはむしろ男らしいと言っても差し支えないのだが、沙由香がいるとその乱暴さは影を潜める。しかし、貴之はそんな事より美咲のことの方が気になるようだ

「行ってあげたら?」

沙由香が、そんな貴之の心を見透かしたように言う。貴之は、何も
言わずに二階へ駆け上がっていった。

「じゃあ、沙由香さん。おれ行きますから」
「あまり、無理はしないでね」
「・・・・・」

最後の問いにだけ、玲奈は答えなかった。バイクの排気音が遠ざか
っていく、ひっそりとした一階の店内。沙由香は受け取った真紅の指
輪を光にかざした。

「私と同じ色のDDD・・・・・」

時間は、かりそめの平和の中を流れていく。


 部屋の扉を開けたとき、そこには目を覚ました美咲がいた。

「どうだ調子は?」

何とか悟られまいと演技しながら俺は言った。もっとも自信はこれぽっちもなかったが。

「大丈夫だよ、隠さなくても。さっき玲奈さんが教えてくれたから・・・」
「お・・おまえ・・・」

このときになってようやく俺は、美咲の目に涙がたまっていることに気がついた。

「また、怪我させちゃったね。ごめんね・・・わたし・・・わたし・・・」

咄嗟に、包帯が巻かさっている左手を隠す。こういう時の自分の鈍さには、はっきり言って反吐がでる。でも・・・

「美咲、おまえ・・まだあの時のこと・・・・」
「当たり前だよ!!私の・・・私のせいで、之ちゃんの肩の傷。一生残るんだよ!!忘れられる訳ないよ・・・」

ふいにあの日の事が脳裏に浮かんだ。
 よくいじめられていた美咲。それをかばっている自分。大勢の人間
にボコボコにされる自分。肩が裂けて血が流れる、紅く染まる自分
泣き叫ぶ美咲。
もはや断片でしか思い出せない記憶。それが今までずっと美咲を縛っていた。思い当たることは山ほどあった、
きずいていないのは・・・・俺だけだった・・・・


 「之ちゃん。私。強くなりたい」

心の底から絞り出したような声。

「私、強くなりたい。弱いのはもう嫌なの!みんなを守れるくらい強く
之ちゃんを傷つけなくてすむくらい強く。私は強くなりたい・・・強く・・」

そう言って美咲は、部屋出て下に降りた。そこでは沙由香が座って待っている。

「沙由香さん・・・私もエスカレイヤーになれば戦えるのかな・・・みんなを、之ちゃんを守れるのかな・・・」

沙由香は、紅茶を飲んで一息ついてから口を開く。

「一度エスカレイヤーになってしまえば後戻りできなくなるわ。
モンスターの存在だって感知できるようになる。襲われる人をいつも
助けられるわけじゃない。それに戦えば、無傷ですむことはないし、
死んでしまうかもしれない。それでも守りたい”みんな”は、一体どこ
にいるのかしら?」

沙由香の瞳が美咲を貫く。どうみても二十代後半にしか見えない
沙由香がこの時は、何百年も生きた魔女のように見えた。

「わからない・・・難しい事はわからないよ。でも、モンスターのせいでこれからも酷い目にあう人がたくさんでてくる。でも、その人は絶対そんな事があっていい人たちじゃないんだってわかる。だから何もしないと痛い。痛いんだよ・・・」

その目には、もう涙はない。そこにあるのは秘めた決意。迷いのない
まっすぐ眼差し。

「私のお父さんは、ダイラストに殺された。あの時私は無力な子供だった。でも、今は違う。目の前に力がある。これ以上私みたいな人
を増やさないですむ力がある。だから、沙由香さん。お願い。
私、強くなりたい。エスカレイヤーになりたい!!」

拳を握り締める美咲の肩に、貴之が手を置く。

「美咲。おまえが覚悟を決めるなら俺もついてくぜ。一人だとあぶなっかしくてしょうがないからな」
「之ちゃん・・・」
「それに、こんな世の中なんだ。一人くらい都合のいい正義の味方がいてもいいだろ。一昔前にいたエスカレイヤーみたいにさ」

そんな二人を、懐かしげに沙由香は見た。かつて自分たちが宿していた思い。もう二度と手の届くことはない過去。

「あなた達には負けたわ。いいでしょう、これはあなた達の物よ」

そう言って、DDDの嵌められた指輪を美咲に差し出した。そして、美咲の耳元で囁く

「一回変身するだけのエネルギーはたまっているけど、二回目以降のエネルギーをためるには・・・・」

美咲の顔が、面白いように赤くなる。理由は言わずもがなだ。
そして、指輪をはめる。

「わかる。之ちゃん。すぐ近くにモンスターがいるよ!!」
「こりゃ早いとこ500Γ直さないと体がもたないな」

美咲と貴之は、勢いよく走りだして行った。

「エスカレイヤーの力は、信じる力。信じることをやめない限り、エスカレイヤーは絶対に負けない・・・・か」

遠い昔、自分が言われた言葉を沙由香は二人の姿を見て思い出した。


 再び静まり返った、喫茶店「亜莉栖」。沙由香は立ち上がり言った。

「いるんでしょ?出てきたら?」
「は、ばれたか」

何もないところから突然、人が現れる。金髪に古びたトレンチコートに身を包んだ男。

「当たり前でしょ。一体何年一緒にいたと思ってるの?」

その声は、刺々しさと共にどこか懐かしさをふくんでいた。

「結局、おまえは俺が憎いのか?沙由香」

その言葉と同時に沙由香は男にパンチを叩き込む。男は片手で、
そのパンチを受け止めた。

「当然でしょ!お父さんも、遼子さんも、みんな、みんな恭ちゃんが
殺したんだよ!!それに、マドカは?マドカをどこにやったの!」

恭ちゃんと呼ばれた男、恭平は、沙由香の拳を握り締め言った。

「言い訳はしないさ。必要だからそうしたまでだ」

沙由香の拳を無理やり口元まで持っていき、手の甲に軽くキスをする。

「沙由香。いよいよゲームの始まりだ。俺は勝つさ、勝ってみせる・・」

そして、恭平は音もなく消えた。そのまま崩れ落ちる沙由香。涙を
流しながら拳を床に叩きつける。

「恭ちゃん・・・・・」

復讐を考えていた、今度会ったら最低でも顔面を殴ってやると決め
ていた。でも、できなかった。そこにいたのは、今でも恭平を愛してい
る。弱い『沙由香』だった。
そして、沙由香は恭平のキスした手の甲に愛おしげに、自分の唇を
重ねた。

「恭ちゃん・・・・どうして・・・・」


 風を切る黒いバイク。漆黒のホンダワルキューレを駆りながら、
玲奈は、ついさっきの光景を思い出した。

「アイツ。絶対エスカレイヤーになるな」

全てを話せば怖気づいて、逃げると思っていた。でも、アイツの目に
恐れはなかった。あれは、決意の目だ、戦うことを選んだ者の目だ。

「まったく。やっかいなことになったな・・・・!?」

胸のペンダントがうずき、モンスターが近くにいることを示す。
場所は、そう遠くはない。アクセルを全開まで踏み込み、叫ぶ。

「変身!!ビートチェンジ!!」

黒いDDDがはめこまれたペンダントが、光を放ち一瞬で玲奈の姿を
一瞬でエスカレイヤーに変える。ものの数秒で玲奈は、現場についた。
異次元の存在であるモンスターは、通常こちらの次元でその存在を
保つことはできない。そのためモンスターは『巣』と呼ばれる、簡易の
異次元をこちらの次元に形成し、獲物がかかるのがわかる。
『巣』の内部では、モンスターも獲物とされた人物も知覚されることは
ない。知覚できるのは、獲物に選ばれた人間かエスカレイヤーだけ。

「グルルルゥゥ」
「パルシオン、ランス!」

目の前にいる、以前倒したのに良く似た蜘蛛型のモンスターに槍を
突き立てる。しかし、その一撃はサイドステップでかわされた。

「は・・速い・・」

以前戦ったヤツとは、格が違う。モンスターは、後退するとやけに広く
なっている『巣』を利用して、近くのマンションによじ登り高所から攻
撃をし始めた。

「ちっ、空中戦でわたしに勝てると思ってるのかよ!!」

背中に黒い翼を広げ、玲奈は空へ舞い上がる。

モンスターの吐く、音速の吹き矢の雨をかいくぐり、今完全にこちらの射程圏内に入った。

「ファイナルエスカ・・・」

最後まで、言うことは出来ない。必殺の一撃に移る一瞬のスキをモンスターは逃しはしなかった。

「グルルルルルルゥゥ」

モンスターの口から放たれた、粘着性の糸が玲奈の体を、その翼ごとからめとり、そのまま地面に叩きつける。

「うわわわぁぁぁ・・・がはっ」

そのまま、四方のあらゆるものに叩きつけられる、形勢は一瞬で傾いた。


 多分、俺はあのとき無理にでも止めるべきだったんだろう。
そう思う。どう考えてもまとも選択とはいえない、死んだっておかしくない状況に身をおくなんてことは。でも、俺は止めなかった。
止めたくなかった。それは、あいつが、美咲が始めて自分で戦う事を選んだから。それは、モンスターだけじゃない自分自身ともだ。
その決意を無駄にしたくなかった。
それに万が一のことがあった時は・・・・

「俺が守る。それだけだな・・・・・・」

その声は、誰にも聞こえなかった。


 モンスターが見える。大きな蜘蛛の化物だ。私は、叫んだ。
その言葉を。

「変身!!ビートチェンジ!!」

指輪が、光を放つ。その光は、美咲と貴之の”二人”を包み込んだ。

「うそ・・・・私、之ちゃんと一つになっちゃたよ・・・・・」

私が私であるのは、わかる。でも、私のなかにもう一人誰かがいる。うまく説明できないけどそれは、間違いなく之ちゃんだ。

「これって二人いないと変身できないってことだよね・・・」

「そうだな」とあきれた声で私の内のいる之ちゃんが答える。
でも、それはなんとなくあたたかかった、勇気がわいてくる。

「よーし。やるぞー!」


 意識が朦朧としてきた。今まで散々私を叩きつけていたモンスター
がその動きを止めて近づいてきた。あんなヤツに犯られるくらいなら
舌噛んで死んでやると思って、実行に移そうとしたとき。

「喰らえ〜〜〜!」

ついさっき聞いた声。アイツがエスカレイヤーとなって、モンスターにおどりかかった。拳の一撃がモンスターを吹っ飛ばす。

「パルシオン、ソード!」

手甲型のパルシオンが、一瞬でその形を青竜刀型の剣に変える。
そして、アイツの姿が霞んだ。

ー運動係数制御。知覚50、体感時間100に再定義。なお制限時間は10秒です。『加速』開始ー
パルシオンを握った瞬間。頭の中にメッセージが流れる。
           その瞬間、全てが静止する。
世界の全てが百分の一のスピードで流れていく。その中を一人だけ
普通に動ける自分。
モンスターの吐く吹き矢も何もかも止まって見えた。
パルシオンで、モンスターをメッタ斬りにする。もっとも、はたから見れば武器を振り回しているようにしか見えないだろうが。
そして、蹴りを入れ間合いをとったと同時に世界は動き出す。

「ファイナルエスカレーション!!」

叫びと同時に、足に光の粒子が集まってく。

「フォルミトンキィィィィィクッッ!!」

空中に飛び上がり、一回転そのまま急降下の蹴りを叩き込む。
亜光速まで加速され、質量が無限に増大した一撃が炸裂した。
モンスターは、悲鳴を上げる間もなく消滅する。あたりに残るのは、
その衝撃を物語るクレーターだけだった。

「やった・・・・やったよ・・・之ちゃん」

「ご苦労さん」と貴之も答える。それにしても疲れる、僅か数分の出来事にもかかわらず、美咲はフルマラソンを走り終えた直後のような息をしている。

「どうやらまだ『力』に慣れていないな」

蜘蛛の糸の戒めを、断ち切った玲奈が立ち上がる。
その槍の穂先が向いているのは・・・・

「今のうちに始末しといた方よさそうだな」


次回予告
「エスカレイヤー同士は戦い合うそれがルールだ」
「戦え・・・」「あなたは・・・・誰?」
「そんなちゃちい正義感で、オマエは人が殺せるのか!?」
         ーもう戦うしかないんだー


二次元人間のエセSF講座
第一回『DDエネルギーって何?』

 注:このコーナーは当作品にのSF的設定の解説もといこじつけを
行うものです。これらの設定は全て二次元人間の頭のなかの妄想
なのであしからず。なお当コーナーのSFとは、長谷川裕一総統の
提唱する「すごい科学」のことなので混同のないようにお願いします

 DDエネルギーとは何か。「そんなのドキドキのエネルギーに決まって
るじゃないか」。正解です。その通り。ただ、理的文系(?)の私とし
ては、どうしても解説(こじつけ)したい。そもそも、世界は『存在エネ
ルギー』とも言うべきもので満ちている。そのエネルギー密度はすさま
じく、対消滅反応すら泣いて逃げ出すほど。しかし、それはまさしく
遍在しているエネルギーのため、熱力学第二の法則「水準が一定
のものからは力を引き出せない」にひっかかって使うことはできない。
無理にかき集めても、差し引きゼロになるだけ。しかし別のもっと高
位の次元から『存在エネルギー』を引き出し、流れを作り出すことが
できれば・・・・。性的昂奮により放出される、ドーパミンの流通経路
を高位の次元とリンクさせ、それにより起こる『存在エネルギー』の流れ。
それをDDDをとうして使用可能にした状態。
それこそがDDエネルギーの正体だったのだ!!なに?ゴス○ルエン○ン?知らないよ
そんなものは!(汗)  −講義終了ー

次回は「変身の仕組み」です。