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□□□□ 第一話 第二話 第三話 第四話 最終話 □□□□ |
スーパーマドカ列伝 最終話 “はぢめてのあしたへ“ タイガー9を倒した翌日、ビルの電光掲示板にデカデカと怪しい文が載っていた。 挑戦状 エスカレイヤー殿 貴殿との決着を1対1で付けたく候。 3日後の正午に採掘現場まで来られたし。 猛将 ガレイズ と言う訳でエスカレイヤーチームは採掘現場に来ていた。 怪しいとは思ったが、ここなら住民へも町へも被害は無いので行く事にしたのだ。 もちろん何があるか分らないので、沙由香、マドカ共に既に変身している。 「よう!意外と遅かったな!」 この間と同じようにガレイズが気楽に声をかけてくる。 地面にドッカと座り込み、するめを片手に酒盛りをしていた。 「女ってなあ、どうしてこう時間にルーズなのかねえ? しかも来たのは2人ときたもんだ。 まあ疑われるのは仕方がねえが、悲しい限りだねえ」 そう言ってするめをかじる。 猛将というよりはどこかの飲んだ暮れの親父に見えた。 遅れて来たのには訳がある。罠を警戒してしばらく様子を見ていたのである。 しかし5分遅れただけでえらい言われようだ。 「遅れてきたのは謝ります。それと戦うのは私一人ですからご心配無く。」 そう言って沙由香が一歩前に出るのを慌ててマドカが止めた。 「沙由香さん待ってください!敵の戦力も分らずに戦うのは危険です。」 「でも・・・」 話がまとまらないのを見かねてガレイズが重い腰を上げた。 お尻に付いた土を払って二人に向き直る。 「どっちでもいいから早くしてくれねえか?」 腕を組み余裕の表情だ。 その態度にガレイズの自信を感じる。 この男は僅かな時間にどれほど強大になったのだろうか? 二人に不安がよぎる。 その時どこからともなく声がした。 「ならば俺に任せてもらおう!」 岩陰からクルクルと宙返りをしながら何者かが登場した。 ガレイズとマドカ達の間に割って入る。 それはこげ茶の獣毛の怪人イガロだった。 しかし以前よりサイズが一回り小さく、左手に頭も無い、角も短かった。 完全には回復していないようだ。 そして何より違うのは赤いチョウチョ型の仮面を付けている事。 「貴方はイガロ!」 「何しに来た。イガロ!」 突然の登場に沙由香とガレイズが口々に彼の名を呼ぶ。 「違う!俺は愛の戦士イガロマンだ!」 彼は思いっきり否定した。 胸を張って言い切る。 どうやら変装しているのでばれないと思っているらしい。 「だからイガロだろ!」 呆れ顔でガレイズがツッコむ。 それを無視してイガロは沙由香に話し掛けた。 親指を立てさわやかに胸を張る。 「エスカレイヤーさん!ここは私に任せてください!」 「え?あ、どうぞ」 思わず答える沙由香にマドカの非難の目が注がれる。 「なんでイガロに任せるんですか?」 「な、なんとなく・・・それにガレイズの強さが分って丁度いいじゃない!」 実は怒りに任せて粉々にしたのを気にしての事だが、沙由香は笑ってごまかした。 「ゆくぞ!ガレイズ!」 イガロが気合十分にファイティングポーズをとる。 それを慌ててガレイズが止めた。 「ちょっと待て!何でお前がエスカレイヤーの味方をする!」 「フッそれはな・・・」 イガロは遠い目をしていた。 「愛だ!」 周りに赤いバラが舞っていた。 キラキラと煌めきイガロを彩る。 ガレイズはあからさまに嫌そうな顔をした。 「何が愛だ!すでに玉砕してるじゃねえか!」 「俺の愛は永遠だ!」 恥ずかしげも無く言ってのける。 さらに赤いバラが舞った。 「諦めが悪いだけだろうが!」 「それだけではない!」 イガロのテンションがさらに上がる。 「まだあるのか?」 反比例してガレイズのテンションが下がる。 途端にイガロの目に炎が宿った。 「貴様に美人の奥さんがいるからだ!!」 ざっぱああああああああん! 北海の荒波がイガロの背で岩を打つ。 ガレイズは一瞬言葉を失った。 「・・・・お前・・・・そんな理由で親友の俺を裏切るのか?」 「親友だからだ!!」 イガロが毅然と言い放つ。 「なに?」 意外なその言葉に驚きを隠せないガレイズ。 追い討ちをかけるようにビシッと指差される。 イガロの涙の力説が続く。 「貴様は共に修羅の道を歩もうと誓ったにもかかわらず、あっさり結婚しおった。 しかも!美人でムチムチの未亡人だと?! 貴様の裏切りは万死に値する!!」 親指で喉元を掻き切った後、地獄に落ちろと下へ向ける。 「言ってることが無茶苦茶だな・・・・」 ガレイズは既に呆れ返っていた。 しかし嫉妬の戦士イガロマンには通用しない。 彼にとって新婚のガレイズは悪なのだ!! 「だまれ!誰がなんと言おうと俺は貴様に鉄槌を下す!!」 イガロの全身から高圧のオーラが放出された。 まるで燃える様に天へと立ち上る。 瞳からは灼熱の嫉妬ファイヤーが噴出し、 鬼のような形相で右手を天に掲げた。 肘から先が黒い炎に包まれる。 「嫉妬の炎が真っ赤に燃えるぅ! お前をシバけと轟き叫ぶぅ! くぅらえっ!! 愛とぉ! 怒りとぉ! 悲しぃぃぃみのぉ! デェェェェェェェス!ブリンガァァァァァァッ!!クロォォォォォォォォォッ!!!」 嫉妬の神に魂を売った灼熱の爪がガレイズを襲う。 しかしガレイズはその様子を冷ややかに見ていた。 「・・・巨根」 ビクッ! イガロの巨体が一瞬で止まった。 「巨根!巨根!巨根!巨根!巨根!巨根!」 ビクッ!ビクッ!ビクッ!ビクッ!ビクッ!ビクッ! ガレイズの発言にイガロは明らかに異常な反応を示していた。 「だあーーっ!うるさい!男はみんな憧れるんだぞ!巨根で何が悪い!」 耐え切れなくなって大声を上げるイガロ。 その反撃をガレイズは鼻で笑い、余裕で切り返す。 「でも自慢の巨根も入らなかったり、女性に嫌がられたら意味無いよなぁ?」 「はう!」 イガロが頭を抱えてのた打つ、かなりのダメージだ! 「それにお前エスカレイヤーが初恋の相手だったよな?! てえことは童貞?」 「はう!はう!」 致命的な精神ダメージがイガロを打ち砕いた! ガレイズが口を歪めてニヤリと笑う。 「図星か!フッ、俺もなめれれたものだな!」 そして開かれた瞳に鬼が宿った。 「百戦練磨のこの俺様に! 巨根で童貞のお前が意見するなんざ! 100万年早ええんだよ!!」 ドカン! 「ぎゃうううううううん!」 キラン! 豪快なアッパーカットを受け、イガロは星になった。 「ふう!危なかった!奴の弱点知ってて助かったぜ。 さすがにあれを喰らったら俺でもやばいからな。」 ガレイズは空を見上げながら額の汗を拭きつつため息をついた。 その頃、衝撃の事実に沙由香とマドカはちょっと頬を赤らめていたりした。 「沙由香さん聞きましたか?初恋だったんですって!」 「うん・・・・ちょっと悪いことしたかな・・・」 「プロポーズ、OKしても良かったんじゃないですか?」 「な、何言ってるのよ!他人事だと思って!」 「そうですか?外見はああでも一途でいい人だと思いますけど?」 「そんなに言うならマドカが結婚してあげれば?」 「それは嫌です!私には恭平さんがいますし・・・」 「む!やっぱりそれが狙いだったのね!」 いつまでも続くひそひそ話をガレイズが遮った。 「あー!待たせて悪かった!で、どっちが戦うんだ?」 その問いに顔を見合わせる沙由香とマドカ。 二人とも引きつったような笑顔を作る。 「ここはやっぱり原作の主役である私が!」 「やっぱり!戦闘力で勝る私が相応しいと思います!」 「でもでも!経験値は私のほうが上だし!」 「沙由香さんの重いお尻ではスピードで勝てません!」 バチバチ! 二人の視線がスパークした。 「どうやら先に貴方と戦わなければならないようね!」 「そのようですね!」 二人とも不敵な笑いを浮かべる。 そして決闘するガンマンのように構え、にらみ合う。 しばしの沈黙の後、同時に二人が動いた。 「「最初はグー!ジャンケン!ポン!」」 二人に戦慄が走る。 「!!」 沙由香がチョキ、マドカがパーだった。 「勝ったあ!!」 沙由香がビクトリーのチョキをかかげてぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ。 「む、無念です・・・・」 マドカはパーを見つめながらその場に崩れ落ちた。 「と言うわけで!貴方の相手は私がします!」 「望むところだ!」 そして決戦の火蓋が切って落とされた! だが沙由香の動きがどうもおかしい。 技に切れが無く開始早々からガレイズにやられっぱなしだ。 「そーら!そら!そら!はっはっはっどうしたエスカレイヤー! お前の力はそんな物か?」 ガレイズの4本腕から繰り出される猛攻にガードごと吹き飛ばされ、倒れこむ。 指示を出していた恭平がその醜態に声を荒げる。 「どうした沙由香!動きが鈍いぞ!もっと集中しろ!」 しかし沙由香は弱々しく起き上がると、とんでもない事を言い出した。 「ダメだわ!やっぱり愛がないと力が出ない・・・・」 「あ、愛って・・・・いきなりなにを?」 突然の変化に戸惑う恭平。 「恭ちゃんが愛してるって言ってくれたらもっと戦えるのに・・・」 沙由香はそう言ってうなだれた。 まるで悲劇のヒロインのようだ。 悲壮なバイオリンまで聞こえてくる。 しかし・・・ 「・・・・・・・な、何てワザとらしい」 恭平の率直な感想だった。 「沙由香さん卑怯です!」 マドカの罵声も飛ぶ。 しかし沙由香は聞こえないと言うように両手で耳を押さえていた。 「恭ちゃんは私がやられてもいいの?」 静かな中に色っぽさのある甘えた声が恭平に問う。 目尻りの涙が美しい。 声だけきけばそれらしいが演技がくさい。 120%ワザとだ! だが言わないと沙由香は絶対戦わないだろう。 呆れながらも恭平が口を開こうとしたその時。 ギン! マドカの視線が恭平に突き刺さる。 恭平は冷たい視線に声が出ず口をパクパクさせる。 しかしこのまま放っておくわけにもいかずに胃に穴を空けながら、 恭平は搾り出すように答えた。 「あ、愛して・・るよ・・・沙由香・・・・ゲフッ!」 その瞬間沙由香の肩が小刻みに震え出した。 「ふっふふふふふふっ!こうなればこっちの物! 後は邪魔者を倒せば恭ちゃんのハートは私の物よ!」 勢いよく立ち上がり、ビシッと邪魔者を指差す。 「良くは分からんがやっとやる気になったようだな」 さっきからの茶番に少々飽き気味のガレイズが答える。 しかし沙由香はやる気満々だ。 明日の未来を信じて目をキラキラと輝かせ叫ぶ。 「愛によって生まれた力と技!今こそ見せてあげます!」 腕を交差させた後、右手を天に突き上げた。 「フォーム!アーーーーップ!!」 胸のジュエルが輝きだし、辺りを金色に染めていく。 頭と胸の飾りそして足首から小さな白い三角のフィンが生え、光の粉を撒き散らしながら開き、 翼のような形を作った。 腕が虹色に輝き、指先から光が剥がれ落ちるように実体化していく。 腕の手袋が一体物になり、二の腕のエンドがエレガントなレースになった。 ブーツからも白いストッキングが伸び、レースをあしらったニーストッキングになる。 腰の飾りも前後対象になりまるで外したガーダーベルトのようだ。 ブーツのかかともダブルのピンヒールになり、より色気を増している。 額に光が集まり、ピンクのダイアをあしらったティアラへと変換される。 全ての変身を終え、ゆっくりと目をあけるとブルーだった瞳はゴールドへと変っていた。 そして高らかに名乗りをあげた。 「超昂戦女神(ビートヴァルキリー)!デンジャラスエスカレイヤー!」 いつもの決めポーズが燦然と輝く。 「なに?2段変身だと?」 ガレイズは驚きながらも決めポーズの隙を見逃さない。 「この!自慢の美肌を焼いてやるぜ!ガレイズフレイム!」 素早く徳利の酒を口に含むと灼熱の火炎を吐いた。 「エスカレイヤービィーーーーム!」 決めポーズのままで沙由香が叫ぶと胸のジュエルから金色のビームが放たれる。 ビームは炎を押し返し、避けそこなったガレイズの徳利を砕いた。 「なんの!ガレイズカッター!」 今度は思いっきり振り抜いた四本の腕からエネルギーカッターが飛ぶ。 「イデアウォーーーール!」 沙由香が左手を突き出すとその前方に六角形の赤い壁が現われた。 赤い壁は4つのカッター全てを防ぎきる。 「やるな!ならばこれはどうだ!」 ガレイズは背中から4本のシミターを抜き放つと、 その剣を豪快に振って黒い雷をまとった竜巻を作り上げた。 「インパルス・ストーム!」 黒い竜巻が沙由香に迫る。 沙由香はそれを見て右手を天に突き上げた。 右手に光が集まり、光を中心に大気が渦を巻き始める。 「スパイラルソニック!」 ガレイズに向け突き出された正拳から大気の渦を彗星の尾ようになびかせた光球が打ち出された。 そして光球の彗星は黒い竜巻を打ち抜き、ガレイズに直撃する! ドコン! 「なっ!のああ!」 胸板に強烈な一撃を受けもんどりうって倒れるガレイズ。 巨体が土煙を巻き上げる。 その時BGMが勇ましいオーケストラへと変わった。 晴れだったのにいつの間にか暗雲が立ち込め雷が天を走る。 「グレートパルシオン!」 エスカレイヤーが叫ぶと腰のパルシオンがひとりでに宙を舞った。 回転しながら落ちてくる剣をパシッとキャッチする。 パチンと片手用のパルシオンの柄が伸び、それを両手で握る。 目の前にかざされたその剣が巨大なエネルギーを吹き上げた。 そして根元からエネルギーが拡散していき、 ピンクのクリスタルで出来た大剣を作り上げる。 優に2mは有る大剣だ。 鏡のように滑らかな刀身に凛々しいエスカレイヤーの顔が映る。 「ガレイズ!勝負!」 「おうさ!真っ向勝負!」 素早く立ち上がりガレイズもそれに応える。 「ビートレインボウ!フラッシュ!」 天に突き上げられた剣が七色の光を放つ。 ガレイズも負けじと全身から黒いオーラを吹き上げる。 筋肉が異様なほど隆起し、服を引き裂いてフルパワーを引き出す。 二人が同時に地面を蹴り間合いを詰めた。 「ファイナル!エスカレーション!」 「ガレイズ!インフェルノ!」 力いっぱい振りかぶった剣が同時に振り下ろされる。 激突!! 巨大なエネルギーのぶつかり合いにボコンと音を立てて地面が陥没した。 「はあああああああっ!」 「おおおおおおおおっ!」 また地面が陥没し、2重のクレーターを作る。 二人の顔が高圧のエネルギーに歪む。 ピキッ! その時ガレイズのシミターに亀裂が走った。 沙由香はそれを見逃さず最後の力を振り絞る。 「てええええやあ!」 沙由香の気合と共にシミターが砕け散った。 そのまま剣を振り切る! 「ぐはあああああああ!!」 ガレイズは袈裟懸けに血を吹き出しながらドドッと倒れた。 押し合いにより威力は半減しているが手応えは十分。 「やった!勝ちました!」 沙由香が喚起の声を上げた。 剣をかかげ、恭平に笑顔を向ける。 「ああ!やったな!」 待望の勝利に恭平の笑顔で答えた。 しかしガレイズはまだ諦めていなかった。 「まあだだ!まだこんな物では!」 深手を負いながらも必死に立ち上がるガレイズ。 なにが彼をそこまで駆り立てるのかまだと闘志の火は消えていない 再び一同に緊張が戻る。 瀕死のガレイズが折れた剣を構えた時、凛とした声が響いた。 「そこまで!」 岩陰から現われたのは近所に住んでいた遼子だった。 「ミストレーヌ・・・・」 ガレイズの呟きは衝撃的なものだった。 「遼子さんがミストレーヌ?」 あまりの事に驚いく沙由香。 ミストレーヌとは前に死闘を演じた事もある。 まさか隣に住んでいたとは。 遼子はガレイズにやさしく諭す様に語り掛ける。 「もういいじゃない。あれだけ特訓しても勝てなかったんだし、得心がいったでしょ?」 しかしガレイズは収まりが付かない様子だ。 「いやしかし!ここで負けたらダイラストには・・・」 「戻れなくったっていいわよ。世界征服なんて止めて二人で静かに暮らしましょ!」 しかしガレイズの説得は続く。 「何を今更!お前だって打倒エスカレイヤーに協力してくれたじゃないか!」 「それは貴方を助けたかったし、特訓も楽しかったから・・・・」 少し恥ずかしそうに応える遼子。 その答えにガレイズの様子が急に変わった。 「特訓が・・・・・楽しかった?」 あんぐりと口を空け、肩が力なく下ろされる。 「ええ!とっても!」 遼子は特訓を思い出したのかうっとりして言う。 手を頬に当て顔を赤らめる仕草が色っぽい。 ガレイズはその反応がお気に召さないようで思いっきり嫌な顔をした。 「お、おまえなあ!! 耐久力アップだって鎖に繋ないで巨大鉄球ぶつけたり、 スピードアップだって刃物の付いた扇風機に手入れさせたり、 超感覚の特訓だって簀巻きにして崖から落とすのが楽しかったって言うのか?」 手をぶんぶんと振って”そんな事無いだろう”と必死に問い掛ける。 「ええ!とっても!」 遼子はその反応を喜ぶように微笑んだ。 「・・・・・」 ガレイズは開いた口がふさがらなくなった。 ちょっと可哀想になったのか遼子がフォローを入れる。 「仕方ないじゃない!一生懸命なガーくんって素敵だったんだもの!」 今度はエスカレイヤーチームがあきれた声をもらす。 「「ガーくん?」」 そして衝撃の事実につい口が出る。 「ガレイズの奥さんってもしかして遼子さん?」 「たぶん間違いないと思います。」 「職場結婚か・・・・良くある話だね」 「しかしよりにもよってあの男を選ぶとは・・・理解できません。」 「好みは人それぞれだから・・・」 「私なら土下座されてもお断りです。」 ガレイズは、さりげなく聞こえるひそひそ話に顔を赤くしながら反論を再開する。 「そ、それとこれとは話が違う!」 必死の抵抗だったがもはや無駄だった。 「ガーくん・・・・・」 ビクッ!急なトーンの変わりようにガレイズが反応する。 「私の言う事が聞けないの?」 聞き分けの無いダダッ子に遼子ママの雷が落ちた。 表情はまだ笑顔だが目が笑っていない。 ガレイズの顔がどんどん青ざめていく。 完全に尻に敷かれているらしい。 こうなっては猛将の迫力は見る影も無い。 「うっ・・・・・・わ、わかったよ」 ガレイズはしぶしぶ降参した。 折れた剣を放り出す。 そして今度こそ全てが終わったと思われたが、また誰かの声がした。 「そんなに簡単に諦めてもらっては困るんだがねえ」 声のした方向を見ると崖の上に3人の影が有った。 左右の二人はフーマンだ。しかし今までに見たことの無い緑色をしている。 そして額に角が一本生えていた。それだけで少し強そうに見える。 中央の人影は女だった。 全身をプロテクター付きの黒のレザースーツでセクシーなダイナマイトボディを包み、 お尻まで届くほど長い黒髪をなびかせている。 バイザー付きのヘルメットのせいで顔は良く見えないが、 濡れた様な赤い唇とすっきりとした顎が美人ではないかと期待させる。 そして目を引くのは背中の赤い翼だ。 天使のような羽毛では無く、蝙蝠の翼。 怪人?、それとも有翼人種なのかもしれない。 女の出現にガレイズと遼子が驚きの声を上げた。 「な!お前は!」 「ウェルナー!」 二人が驚くとウェルナーと呼ばれた女はニヤリと口を歪める。 「覚えててくれたとは光栄だね。新婚ボケで忘れてるかと思ったよ!」 皮肉を気にしている余裕もなくガレイズが問う。 「四天王の腰巾着のお前がどうしてここに!」 「・・・監視役よ。私たちのね」 その問いを遼子が代わって答えた。 「その通り!さすがは我ライバル、知将ミストレーヌ。 もっとも監視していたのはあんた達だけではないけどね」 ”よく出来ました”と言うように微笑み、 ちっちっちっと人差し指を振ってみせる。 人を食った態度がちょっとむかつく。 「どうでもいいけどライバルになった覚えはなんか無いわよ」 遼子が腰に手をあて、本当にどうでもよさそうに反撃する。 「な、何いってんのよ!昔ミスダイラストでよく競い合ったでしょ!」 ムキになってウェルナーが抗議した。 かなりライバル視しいているようだ。 「そうだったかしら?毎回優勝だったから覚えてないわ!」 それに対して眼中に無いと言わんばかりにワザと大げさにとぼける遼子。 こんな意地悪な彼女もめずらしい。 「あ、相変わらずむかつく女ね!」 ウェルナーは青筋を立てて拳を振るわせた。 今にもキレそうだ。 遼子は、何かあるごとに突っかかるウェルナーが嫌いだった。 一方的にライバル視され、嫌がらせをされたことは数知れない。 なおも遼子の挑発は続く。 「それで?行かず後家の貴方が何で今ごろ出てきたの?」 ぶちっ!! 「大きなお世話よ!誰のせいで行き損ねたと思ってんのよ!」 簡単にウェルナーがキレた。 唾を盛大に飛ばして食って掛かる。 「さあ?誰?」 またもや大とぼけの遼子。 「あんたよ!あんた!めぼしい男はみんなあんたのファンクラブ会員なのよ! そんな奴と結婚できるわけ無いでしょう!」 「知らないわよそんなこと!逆恨みもいいところだわ!」 確かにその通り。 余裕の遼子とキレたウェルナーのにらみ合いがしばらく続いたが、 めずらしくウェルナーが引いた。 「まあいいわ! あんたの旦那が良く戦ってくれたおかげで苦も無くエスカレイヤーを倒せるんだから!」 意地悪そうにふふふと笑う。 女狐と言うのが相応しい性悪女だ。 「貴方の考えそうな事ね」 予想通りのウェルナーの目的に遼子が嫌そうな顔をする。 あからさまなその反応にニヤニヤと笑うウェルナー。 そこへ本当の当事者がやっと声をかけた。 「なるほど!貴方は高みの見物で私のエネルギーが無くなるのを待っていたというわけですね」 策力が分っても何の解決にもなっていない。沙由香に焦りの色が見えていた。 言われるまでも無く、大技の連発でエナジーはもうほとんど残っていない。 「その通り!ご褒美に苦しまずにあの世に送ってあげるわ!」 腰に手を当てダイナマイトボディを強調するように威嚇する。 口元の余裕の笑みが腹立たしい。 しかしその優越感を打ち砕く声がした。 「そんな事はさせません!」 「なに?」 今更驚くウェルナーにマドカがズイッと歩み出る。 「そうは問屋がおろしません。長い前フリでした。 危うく最終回なのに出番がないかと思いましたがやっと真打登場です。」 さりげなくカメラ目線で台詞を吐いた。 「ああ!マドカ美味し過ぎる!」 羨ましそうな沙由香の出番はもう無い。 一方、優越感に浸っていたところを邪魔されたウェルナーが 不機嫌そうに顔をしかめた。 報復に毒舌のジャブを放つ。 「そういえばあんたも居たんだったね。 一応名前ぐらい聞いてあげるわ。誰?」 しかし毒舌はマドカの十八番だった。 「貴方のような脳みそスカスカ乳デカ女に名乗る名前は有りません!」 さげすみの眼差しが完璧だ。 ウェルナーの顔が一気に怒りに満ちる。 「な!むかつく小娘だね!あんたから血祭りに上げてやるよ!」 「出来ますか?貴方に?」 逆上したウェルナーと冷静なマドカ、その様子は対照的だ。 普通なら冷静なマドカが圧倒的有利だ。 しかしウェルナーには秘策があった。 「出来るさ!あんたの弱点はすでにお見通しだからね!」 パチンと指を鳴らすと岩陰から3人目の緑フーマンが現われた。 恭平と一緒に。 「きょ、恭平さん!」 焦るマドカ。 咄嗟に恭平に駆け寄ろうとするところをウェルナーが止めた。 「動くんじゃないよ!」 同時に恭平の首に回されたフーマンの手に力がこもる。 「があ!」 見る見る恭平の顔が青くなっていく。 右腕も捻じ曲げられているのか体が反っていった。 「くっ卑怯な!」 マドカが悔しそうに睨む。 ウェルナーはその顔を楽しむ様に笑い出した。 「ん〜!その顔!いいねえ!好きだよそういうの!」 この場で一番優位な立ったという認識がウェルナーの快感中枢をくすぐる。 自然と高笑いが口をついて出た。 本物の女王は無理だがSM館の女王様にはぴったりだ。 下品な声が採掘現場にこだまする。 「さーて!まずはその物騒なガトリング砲捨ててもらおうか! そして次はストリップだ!フーマンにたっぷり可愛がってもらってから、 じわじわ嬲り殺してあげる!あたしを怒らせたんだ楽には死ね無いよ!」 蝙蝠の翼が悪魔の翼に見える。 唇を噛締めるマドカ。 「くっ!」 その言葉に従ってガトリング砲がゴトリと音を立てて地面に落ちた。 左手には右と同じく赤いガントレットがはめられている。 「よしよし!いい子だ!次は服だ!さっさとしなよ!」 煽るウェルナー。 マドカは、一瞬躊躇したが意を決したように恭平に語りかけた。 「恭平さん・・・目を閉じていてくれませんか?貴方には見せたくないんです。」 マドカの横顔はひどく悲しそうだった。 ズキン!! 恭平の心の痛みが肉体の苦痛を上回る。 「俺のことはいい!もう少しで平和が手に入るんだ!マドカ!戦ってくれ!」 激痛に耐えながら恭平が叫ぶ。 だが返ってきた答えは恭平の願いとは正反対の物だった。 「・・・・世界の平和よりも私は・・・・貴方の方が大事です」 「・・・・」 言葉を失う恭平。 「恭平さん・・・目を閉じてください」 もう一度マドカが願う。 しかし恭平もマドカの願いとは正反対の答えをした。 「いや!俺は逃げない!マドカがどんなになっても俺の気持ちは変わらないから!」 「!!」 その答えにマドカの瞳が見開かれる。 見つめ合いお互いの決意を確認する。 一瞬だが二人は分かり合えた気がした。 「恭平さんを信じます」 静かにそう言ってマドカは嬉しそうに微笑んだ。 服のボタンに手をかける。 「愛は美しい!」 その声と共に恭平を捕獲していた緑フーマンの腕をこげ茶色の獣毛に覆われた腕が掴んだ。 そして抵抗する腕を力任せに引っぺがし、両手を広げさせた。 皆が注目する中、こげ茶色の腕の主が続ける。 「邪魔をして悪いな。タイガー9ならストリップが終わるのを待つだろうが、 残念ながら俺はつるぺた幼児体形には興味が無いんでな。」 そう言ったのは星になったはずのイガロだった。 「イ、イガロ・・・・」 意外な邪魔者の登場にウェルナーの顔が怒りに染まる。 イガロは怒りの視線を涼しげに受け止め、緑フーマンの両手首を握り潰した。 そして威厳の有る声を響かせる。 「対等であるからこそ勝負!真剣勝負に小細工は無用!」 そう言って緑フーマンを上に放り上げると落下する体を鋭い爪で串刺しにした。 「そんな事は俺が許さん!」 黒い炎が爪から噴出し、愚かな伏兵を黒焦げにした。 戦いはイガロにとって神聖な物だ。 彼は今それを愚弄した者への怒りをあらわにしていた。 「イガロ・・・ありがとう!」 助勢にマドカが戸惑いながら礼を言う。 だがイガロは厳しい態度を崩さなかった。 「勘違いするなよ!俺はお前を助けた訳ではない!卑怯者を始末しただけだ! この意味がわかるな?」 「もちろんです!」 マドカはいつもの様に不適に笑って答えた。 マドカの双眸が性悪女に向けられる。 切り札を失ったウェルナーは焦っていた。 「やれ!グリーンフーマン!」 そして戦力を小出しにする愚を犯す。 ウェルナーの命令にフーマンが動いた。 両手を斧に変形させ、崖を飛び降り、猛スピードで襲い掛かる。 速い!フラスト怪人級を上回るスピードだ! 角がついているのは伊達ではなかった! 4本のトマホークがブレードをオレンジ色に染め、マドカを切り裂く。 「??」 緑フーマンたちが土煙を上げて急停止した。 両手の斧を確認するが異常は無い。 確かに当たったと思われたが手応えはまるで無かった。 それもそのはず、マドカは斬撃をはるかに上回るスピードで宙に舞っていた。 フーマンが攻撃したのはその残像だ。 間抜け達がそのことにやっと気付く頃、マドカは伸身宙返り3回半ひねりを決め着地する。 マドカは両手を広げて短く言葉を発する。 「スカーレットブレード!」 両手から真っ赤なエネルギーが吹き出し、2本のソードになった。 右のフーマンに向けて突進する。 標的のフーマンのが斧から槍に変化した。 シャッ!! 伸びてくる右手を間一髪潜って避け、踏み込みざま左のソードで槍を切り払う。 そして右のソードで胴を横になぎ払った。 斬! ガードした斧ごと身体を真っ二つになるフーマン。 その時もう一体のフーマンがマドカの背後に迫っていた。 右手の斧が振り下ろされる。 「!!」 マドカは前屈しながら腕の斧に変形していない部分を踵で蹴り上げた。 まさかの反撃にフーマンの動きが止まる。 「てい!」 マドカは戻す足を振り子のようにしてジャンプし、 振り返りざま強烈な回し蹴りをフーマンの頭部に叩き込む。 倒れるかと思われたが何とか体勢を立て直したばかりか左手を銃に変えて発砲した。 ガガガガガガガガ! フーマンの左腕から大量の銃弾が吐き出される。 しかしその銃弾は銃口の前にかざされた真紅の右手によって全て防がれていた。 ドン! フーマンの胸にマドカの左手が突き刺さった。 胸の装甲を貫通し、中枢コアを破壊する。 赤熱化した手が背中から生えていた。 手を引き抜くとフーマンはその場に力無く転がる。 邪魔者を排除し、再びマドカの双眸がウェルナーに向けられた。 「グリーンフーマンがこんなにあっさりと・・・化け物か?」 二体のグリーンフーマンは強かった。 しかしマドカはもっと強かった!それだけだ! マドカがトンッと大地をけるとD2ドライブが青白い炎をあげた。 一瞬で崖を上り、ウェルナーの前に降り立つ。 マドカの瞳には明らかに怒りの炎が浮かんでいた。 「ひいっ!」 じりじりと後ずさるウェルナー。 この時点でやっと死神に喧嘩を売ってしまった事に気付く。 「何なんだ!お前は何なんだ!」 恐怖に取り付かれるままに口が動く。 マドカはその問いにゆっくりと答えた。 「私はマドカ。恭平さんを守る者。そして恭平さんを愛する者です。」 な、なんて恥ずかしい・・・・ 普通なら逆に言われた方が赤面しそうな台詞。 だがマドカの瞳の輝きが本気であると語っていた。 たとえ世界中を敵にまわしても彼女はそれを貫くであろう。 しかしその本気の言葉はウェルナーには死の宣告に聞こえた。 今ウェルナーの頭の中は生き残る事でいっぱいだ。 そして彼女ならではの姑息なアイデアが浮かぶ。 (攻撃して避けたところを一目散に逃げる! 正義のヒロインは逃げる者を背後から攻撃したりはしないはず! これならいける!完璧だわ!) 満を持して隠し持っていたレーザーナイフが空を裂く。 しかしその攻撃はマドカの左腕にガッチリと捕らえられ、肘関節まで決められてしまった。 がああああん!計画失敗! 再びD2ドライブが青白い炎をあげた。 爆発的な推進力により二人の体はあっという間に天高く舞い上がる。 「ばか!ちょっと離しなさいよ!」 あがくウェルナーに冷たい声が浴びせられる。 「恭平さんを傷つけて、生きて帰れるとでも思ったのですか?」 強烈なGが襲う中、ベキッという嫌な音が聞こえてきた。 ウェルナーの右腕が変な方向に曲がっている。 「ぎやあああああああ!」 上空200mでウェルナーが悲鳴を上げた。 だが悲鳴を遮るように頭部を鷲掴みにされ、今度は地面に向かって加速する。 D2ドライブの炎が流星の尾のように伸びる。 赤熱化したマドカの左手がヘルメットに食い込み、 頑強なスペースチタニュウムに亀裂が走る。 ウェルナーの恐怖が頂点に達した時、後頭部に衝撃が走った。 どおおおおおおおおおおおん! 轟音と土煙が辺りに満ちる。 土煙がおさまるとクレーターの中でマドカはウェルナーに馬乗りになっていた。 左手は、ヘルメットの砕け散った頭部に、そして右手は胸部に深々と刺さっている。 胸部内の右手はウェルナーの心臓を掴んでいた。 ウェルナーが朦朧とした意識の中で死に怯えた目をマドカに向ける。 マドカがくすっと笑った。 つられてウェルナーも笑う最後の希望を込めて。 だがそれは死に逝く者への手向けだった。 そしてマドカの唇が終焉を告げる。 「デッドエンド」 ぐしゃ! 「!!」 心臓を潰されウェルナーは悲鳴を上げることなく絶命した。 エピローグ 春のやわらかい朝日を浴びても恭平はまだ寝息を立てていた。 時折むにゃむにゃと寝返りを打つ。 気持ち良さそな寝顔に優しい声がかかる。 「恭平さん・・・・朝ですよ」 マドカは恭平の側でいっしょに寝ていた。 昨夜の情事のままの姿で。 しばし幸せそうな寝顔を見つめる。 反応が無いのを確認してもう一度声をかけた。 「恭平さん」 ぷにっ!マドカの人差し指が無防備な恭平の頬に押し当てられる。 「朝ですよ!」 ぷにっ!ぷにっ! 「むう〜〜」 恭平は唸り声を上げるがまだ起きない。 ぷにっ!ぷにっ!ぷにっ!ぷにっ! マドカは恭平の唸り声を楽しそうに聞きながら悪戯を止めない。 違和感に気付いたのか恭平がやっと目を開いた。 「おはようございます。」 にこにこしながら挨拶するが、人差し指はまだ頬に刺さっていた。 「む〜〜〜!おひゃひょう(おはよう)!」 恭平が喋り難そうに挨拶した。 平和になって何度目の朝だろうと考えながら恭平はマドカの笑顔を見つめていた。 決戦の後、ガレイズと遼子さんは地球に残り、 しばらく空家になっていた高円寺家の隣にまた住んでいる。 霧谷組なる地域管理組合を作ったそうで大変忙しそうだ。 イガロとタイガー9は、”飽きたから止める。追っ手大歓迎。”と ダイラスト本部に堂々と通信し、危険な逃亡生活をエンジョイしているそうだ。 何考えてるんだか・・・・ 沙由香はというと芸能界入りした。 地球を救ったエスカレイヤーに瓜二つというキャッチフレーズで大ブレイクし、 今注目の新人女優として活躍している。 夏にはエスカレイヤーのテレビシリーズが始まるとかで家にはほとんど帰ってこない。 帰って来る度に綺麗になるので逃がした魚は大きいかなとか少し思うがマドカには内緒だ。 俺は今マドカと一緒に住んでいる。 会社と学校は違うが、帰りを出迎えてもらうのは嬉しい。 ちょっとした新婚気分だ。 明日もあさってもこの平穏が続けばいいなと思う。 ぼんやりしているとマドカが不思議そうに恭平の瞳を覗き込んだ。 「どうかしましたか?」 俺は笑顔を作るとこう答えた。 「なんでもない!」 細い肩を引き寄せキスをする。 そして遅刻かなと思いながらマドカを抱きしめた。 終 ケーン・ワカバマークです やっと終わりました。というか終わってよかったと言うのが正直な感想です。 しばらくは書かなくていいかなって気分です。 心躍らせる素晴らしいゲームを作って下さったアリスソフト・スタッフ一同様に感謝します。 これを書くにあたってご迷惑をお掛けした方々に深くお詫び申し上げます。 また、未熟なSSを読んで感想を下さった方々に感謝いたします。 尚、ご意見、感想、苦情などを下記にお寄せください。 uekisan@m14.alpha-net.ne.jp では失礼します。 |
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