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スーパーマドカ列伝 第四話 “はぢめてのへんしん“ 秋が来たといっても午後二時となればまだ暑い。 しかしその町の一角はそんな物では言い表わせないほどの熱気が漂っていた。 スクランブル交差点に設置された特設リングで街頭プロレスが行われている。 リングの上にいるのは怪人タイガー9と白いフーマン、フーナイトだ。 真昼間だと言うのに大盛況のようで観客は興奮の坩堝と化していた。 観客の数は1000人をはるかに越えているだろう。 その歓声の中、バトルは行われていた。 普通ならフーナイトがやられているのが当たり前だが 予想に反してタイガー9がやられていた。 ブレンバスターをリバースで返された辺りから旗色が悪くなり、 今はフーナイトの水平チョップの連打を受けている。 強烈なチョップがタイガー9の厚い胸板にバシッと叩き込まれる。 たまらずがっくりと膝をついた。。 その様子にフーナイトが得意満面に”どうだ”と観客にアピールする。 「いいぞ白いの!」 「やるな!フーナイト!」 「いけ!やっちまえ!」 観客の声援が飛ぶ。 それに気を良くしたのかフーナイトがロープに走る。 ロープの反動を利用したラリアートがタイガー9を襲いかかった。 「危ない!タイガー9!」 お母さんと手をつないで必死に応援している子供が叫んだ。 その声にタイガー9は頭を振りながら立ち上がり、ラリアートを間一髪で潜って避ける。 今度はチャンスと見たタイガー9がロープに走る。 跳ね返ってきたフーナイトの顔面に綺麗に足の伸びたカウンターの ドロップキックが突き刺さった。 フーナイトがもんどり打って倒れる。 息もつかせぬ攻防に歓声が沸き起こった。 「がんばれ!タイガー9!」 「フーナイトをやっつけろ!」 今度は兄弟で応援している子供から激励が飛んだ。 それに応えるように微笑み、タイガー9が右手を突き上げる。 「いくぞ!!」 「おおっ!!」 歓客達も右手を突き上げて応える。 タイガー9がふらふらと立ち上がるフーナイトをビシッと指差した。 「貴様に相応しいサブミッションは決まった!!」 今日4度目の決め台詞が炸裂した。 観客からも口笛交じりの一層大きな歓声が上がる。 劣勢になり苦しい顔を見せながらも先手を取ろうとフーナイトが果敢にタックルを仕掛ける。 しかしタイガー9は読んでいたかのように受け止め、顔面に膝を入れた。 ガスッ! そして動きの止まったフーナイトのわきをスルスルっと抜けて背後を取る。 タイガー9が両手を広げて襲い掛かった。 フーナイトをのけぞらせ、左腕と首を抱えてホールドする。 「ほのかな漢の香り!ドラゴンスリーパー!!」 首を締め上げる激痛とタイガー9の言うほのかな香り 汗と体臭のブレンドされた強烈な脇毛臭がフーナイトを悶絶させる。 「ふぎゃあああああああ!!」 タイガー9は、ゆさゆさと揺すって痛みと香りを堪能させると次の技に移行した。 今度は左足を絡ませ、屈めた頭に右足をのせ、左腕を決める。 「熱き闘魂のたぎり!卍固め!!」 タイガー9は顎を突き出し、ガッツポーズを決める。 流れるような連続技に観客から感嘆と歓声がもれる。 「おおおおおおおおおっ!!」 それに続いて悲鳴も漏れる。 「ぎゃあああああああ!!」 フーナイトがタップするよりも早く技を解き、今度は左手を取って宙に舞う。 空中で左手を足で絡め取り、重力と反動を使ってフーナイトに投げを打つ。 「そして!」 フーナイトがマットに叩き付けられた時、華麗なるサブミッションは完成した! 「我魂の十字架!腕ひしぎ十字固め!!」 ビキッという音と共にフーナイトの肘が悲鳴をあげる。 「ぎゃあああああああ!!」 3度目の悲鳴の後、フーナイトは足をばたつかせながら呆気無くギズアップした。 「だあああああああああ!!」 試合終了のゴングがけたたましく響く中、 タイガー9は勝利の雄叫びを上げ、高々と腕と突き上げた。 子供たちも大喜びで声援を送っている。 そして大歓声を一身に浴びその姿は光輝いていた。 マドカはその光景を30mほど離れた路地からのぞき見ていた。 リングの熱狂とは打って変わってこちらはやや緊張気味だ。 いつもと違って武装しておらず、まるでチケットが取れずに立ち見をしている 隠れファンの様にも見える。 だがそんな訳は無い。 「タイガー9とフーマンを確認。これより変身して迎撃します。」 「頼むぞマドカ」 恭平が激励を送る。 「はい」 マドカは、真剣ながらもちょっと嬉しそうに返事をした。 そして変身の為,精神を集中させる。 「チェンジ!!」 マドカの意志を受けDDDが眩い光り発して起動し、マドカを戦闘形態へと チェンジさせる・・・・・・・・はずだったが何も起きなかった。 「・・・・・」 「どうしたマドカ?」 「あっ、いえなんでもないです。もう一回いきます!」 慌ててもう一度精神を集中する。 今度は右手を振り上げた懐かしの変身ポーズ付きで。 ピッキュイィィィィィィィィィィィィン! 「へんーーーーーーーしん!とぉーーーーっ!!」 1秒後、両手を振り上げたまま体がむなしく着地する。 一瞬眉毛が太くなったかと錯覚するほどの気合の入れようだったが、 やっぱりDDDは動かなかった。 「・・・・・・」 手を振り上げたまましばし硬直する。 そして観念したように通信を開いた。 「博士、大変です。DDDが動きません。」 本当に困った口調に、指揮用ワゴン内の全員が悲鳴をあげた。 「なにぃーーーーーーーーーっ?!」 その大声に顔をしかめるマドカ。 ふと気付くと路地の入り口に誰かいた。 見覚えのある風貌、フーマンだ。 「あっ」 「ブッ」 目が合った。どうやらフーマンもマドカが敵であると気付いたようだ。 2人に緊張が走る。 運の悪いことに後ろは行き止まりだ。 仕方なくマドカはいきなり地面を蹴った。 そのままフーマンの顔面を蹴って再度跳躍、 倒れるフーマンに目もくれなず脱兎のごとく逃げ出した。 以前と違って今のマドカは変身しなければただの小娘に過ぎない。 フーマンさえ倒せないのだ。 かくしてマドカとフーマンの追いかけっこが始まった。 この状況をモニターしていた沙由香はワゴンの中で眉をひそめていた。 「お父さん!私いきます!」 ワゴンを出ようとする沙由香を、高円寺博士が止める。 「待て沙由香!お前では、タイガー9の加速装置には対抗できん! それにエネルギーの無いお前がいって何になる!」 「でもこのままじゃ・・・」 前回の対戦で沙由香はハイパー化しながらもタイガー9の加速装置に 対抗出来なかった。 しかもエナジーを使い切ってしまったのだ。 今戦っても負けるのは目に見えている。 だが頭では判っていても気持ちは治まらない。 沙由香は悔しげに唇を噛締めた。 「博士、なぜマドカは変身できないんですか?」 モニターを睨んでいた恭平が苛立たしげに尋ねる。 高円寺博士は少し考えた後、口を開いた。 「私にもよく分からんが、もしかしたらマドカの変身はDDDの起動時にしか 出きないのかもしれない。」 高円寺博士の予測に沙由香が不思議そうに応える。 「え?でも私はエナジーさえ十分なら変身できるよ?」 「それは沙由香のDDDが改良型だからだ。 言わばマドカのDDDはプロトタイプ、出力は高いが不安定なんだ。 もっとも今はその不安定さが災いしているんだが・・」 「つまりはマドカをドキドキさせてもう一度DDDを動かせばいいんですね」 真剣な面持ちで問う恭平。 「できるか?恭平君」 「何とかやってみます」 「・・・・・」 沙由香はそのやり取りを不安そうに見つめていた。 ワゴンで解決策が練られている頃マドカはピンチになっていた。 「囲まれてしまいましたね。」 逃げ回って服が埃まみれになっているが気している場合では無い。 息を弾ませながら周りを見渡す。 何人ものフーマンがマドカを包囲し、その数はまだ増えていく。 観客の整理に回っていたフーマンが集まってきているのだ。 しかしこの状況で囲みを突破するのは不可能に近い。 変身さえ出来ればと打開策を思案していると最悪の人物が現れた。 トラ頭のプロレスラー怪人、タイガー9である。 「くッ!こんな時に・・・・」 マドカに今まで以上に緊張が走り抜けたその時。 「幽霊?」 タイガー9の第一声は間抜けだった。 緊張とはかけ離れた発言に場が一気に和む。 「足は有りますよ。」 マドカはミニスカートをピラっと摘み上げて見せた。 「おおおおおっ!」 予想外の行為に一同がニーソックスに包まれた すらりと伸びた足に釘付けとなった。 だが背が低い上、持ち上げ方が微妙で肝心な所が見えそうで見えない。 一同の頭が徐々に下がっていく。 あと少し! あと少しで! 一同の喉がゴクリと鳴る。 「おしまい!」 期待を打ち砕き、スカートが下ろされる。 がああああああん! 「そ、そんな・・・・」 同時に一同も肩を落としてがっかりする。 「ス・ケ・ベ!」 マドカの軽蔑の眼差しがタイガー9に突き刺さる。 タイガー9は視線から逃げるように虚空を見つめながら喋りだした。 「えっとだな!足は・・・立派に有るようだな。 フーマン達が騒いでいるから来てみれば、お前は昨日のメイド娘ではないか。 あの傷で生きていたのは驚きだが、フーマン相手に丸腰で追いかけっことは・・・ 一体何を考えている?」 上ずった声とそわそわした態度のタイガー9。 そこにはさっきまでの強者の持つプレッシャーは無い。 しかし状況はちっとも変わっていない。 正面には強敵タイガー9、周りにはフーマン。その上動かないDDD。 もう駄目かと思いかけた時、一番聞きたい声が聞こえてきた。 「マドカ、聞こえるか?」 恭平の声だ。 「ええ、まだ聞こえます。もうすぐ聞こえなくなりそうですが」 マドカが苦笑交じりに応える。 「一度しか言わないから良く聞いてくれよ」 恭平の声は妙に真剣だった。 「はい?」 予想外の声にマドカは思わず間抜けな返事をしてしまう。 一体なんだろうと耳をすますと、頭の中に信じられない言葉が響いた。 「マドカ・・・・・・お前が好きだ!」 「えっ・・・」 突然の告白に、言葉を詰まらせ立ち尽くすマドカ。 お前が好きだ!お前が好きだ!お前が好きだ!お前が好きだ!お前が好きだ! お前が好きだ!お前が好きだ!お前が好きだ!お前が好きだ!お前が好きだ! お前が好きだ!お前が好きだ!お前が好きだ!お前が好きだ!お前が好きだ! お前が好きだ!お前が好きだ!お前が好きだ!お前が好きだ!お前が好きだ! 頭の中で衝撃の言葉が壊れたレコードのように反芻される。 数秒後やっと言葉の意味を理解し、耳まで真っ赤になる。 「なっ!なっ!何をこんな時に!」 手足をパタパタと動かし慌てて対応するその姿は普段の冷静さからは 想像出きないほど可愛い物だった。 ドックン! マドカの胸の奥で大きな鼓動が聞こえた。 そしてキイィ――――――ンという甲高いタービン音が聞こえ始める。 「あ、動いた・・・」 タービン音はより大きさを増し、マドカの胸の中心から光が漏れ始めた。 「何だ?この音は?」 突然の変化にタイガー9が声を上げた。 フーマン達も驚いている。 光が胸からあふれ出る頃マドカは体中に力がみなぎるのを感じていた。 今なら出来るという確信の中、手を広げ湧き上がるエネルギーに身を任せる。 そしてその力を言葉と共に解放した。 「目覚めよ!わが力!」 突風が巻き起こった。 僅かに宙に浮かぶマドカの周りに淡い光をまとった球状のバリヤーが発生する。 バリヤーの中に幾つもの小さな光が生まれ、 それはゆっくりとマドカの周りを回り始める。 周りを回っていた光は速度を増し、やがてマドカの手足へと集まっていった。 集まった光はその姿を白銀に輝く鋼へと変えていく、 まるで光で鋼を組み上げるように。 そして全ての光が鋼へと変わった時、バリヤーが弾けてもう一度突風が吹いた。 その場の全員が突風で顔をしかめている隙に、マドカが静かに着地する。 その姿は以前と似ているようで違うものだった。 右手に赤いガントレット、左手に双砲身のガトリング砲、足に真っ赤なパンプス、 背中には翼のごとき2つの大型スラスターが装備され、 髪の色も緑からピンクへと変っていた。 みんなが注目する中、マドカはゆっくりと目を開け静かに宣言する。 「チェンジ、完了!」 力強い意志を持ったブルーの瞳がタイガー9を見据えていた。 その姿にタイガー9の気配が一変する。 さっきまでとは明らかに違う。 闘志に満ちた戦の前の漢の顔へと変貌していた。 タイガー9のセンサーが異常な数値を示していたからだ。 (静止状態で俺の5倍のエネルギー反応だと?) 数値を疑いたかったがマドカから来るプレッシャーが真実であるとタイガー9に告げていた。 その戸惑いが犠牲者を生む。フーマン達が動いたのだ。 包囲した背後の三人が、マドカの無防備な背中に襲い掛かる。 3人が拳を振り上げた時、マドカが1回転した。 背を見せるマドカは真っ赤に赤熱化した右手を振り上げている。 「?」 何が起こったかわからず固まっているとゴトッと音がした。 下を見ると腕が転がっていた。肩を見ると腕が無かった。 そして自分も下半身を残して、地面に転がった。 フーマン達は、ゆっくりと落ちていく仲間達の上半身を見ていた。 視界の隅でガトリング砲が自分に向けれらていることを知らずに。 バリバリバリバリバリッ!! 緑の光弾がフーマン達を蹂躙していった。 手足を吹き飛ばし、肉片を撒き散らし、体に無数の穴を空けていく。 呆気無いものだった。凶悪なまでの火力の前に全てが打ち砕かれる。 3秒と経たずに包囲していた12人のフーマン全てが肉塊となった。 その惨状にリング周辺で様子を見ていた観客が次々と逃げていった。 しかし、マドカは何事も無かったようにタイガー9に向き直る。 無機質で薄い表情がより虐殺の凄みを増していた。 タイガー9の表情がより厳しい物になる。 だがその時何かがタイガー9の指をつかんだ。 下を見るとリングで声援を送っていた兄弟の兄が震えながらタイガー9の指を握っていた。 タイガー9は子供に向き直り、しゃがみ込む。 「早く逃げるんだ。ここは危ないぞ」 そう言って頭を撫でてやる。 「うん!」 兄はうなずくと走っていった。途中で振り返り。 「がんばって!」 と叫んでまた走っていった。 その姿を見送り、見えなくなるのを確認して立ち上がる。 「なるほど、今回はお前が相手というわけか」 先ほどとは別人のように鋭い眼光をたたえた瞳が、強敵を前に光を放つ。 マドカは一瞬目を細めたがすぐに元の顔に戻した。 「そうです。」 眼光を受け流すように涼しげに答える。 ゆっくりとライトアップスタイルに構えるタイガー9。 「名を聞いておこうか。」 予想外の問いに顎に指を当ててしばし考えるマドカ。 「超鋼天使マドカイザー」 静かにそう言ってマドカも身構える。 「一つ言ってもいいか?」 「?」 「名前、変えた方が良いぞ・・・・」 ゴギャン!! 突然タイガー9の喉にガトリング砲のウエスタンラリアートが炸裂した。 信じがたいスピードで振りぬかれる。 「ごあああああっ!!」 叫びと共にタイガー9が回転しながら跳んでいく。 そして飛んでいった先のリングの鉄柱に激突して止まった。 「大きなお世話です!!」 上気した顔の額に怒りマークが浮いていた。 どうやらネーミングセンスをけなされた事がお気に召さなかったようだ。 しかしタイガー9もやるもので派手に飛ばされはしたものの、 さっきの一撃を物ともせず立ち上がる。 「やるな!見事なラリアートだ。 では今度はこちらの番だ!」 20m近くの距離をあっという間に詰め、 弾丸のようなフライングクロスチョップが飛んだ。 「とおおっ!!」 漢の気迫の一撃がマドカに襲い掛かる。 足の先まで伸びた芸術的な攻撃だ! しかし乙女にそんな男臭い攻撃は通用しなかった。 無情にもダブルガトリング砲がタイガー9に向けられる。 バリバリバリバリバリッ!! 「ぐうああああああああああ!!」 空中で避けられず、体中に光弾を浴び、成すすべなく撃墜されるタイガー9。 しばらくピクピクを震えていたが、いきなり立ち上がり吼える。 「飛び道具とは卑怯な!!男のロマンがわからんのか!!」 目じりに涙がにじんでいた。かなり痛かったらしい。 しかし、全身から煙を上げているが穴は空いていない。 かなり丈夫のようだ。 「男のロマンって言われても・・・・これですか?」 困ったような仕草の後、またマドカがスカートを摘み上げた。 「おおおっ!!」 反射的にタイガー9の頭が下がる。 しかしその目に映ったのは魅惑の三角形ではなく、 真っ赤なパンプスのヒールだった。 「ぐはっ!!」 額から流血し、その場に膝をつくタイガー9。 マドカは黙って立ち上がるのを待っていた。 「パフォーマンスはこれくらいで良いでしょう? そろそろ本気でやりませんか?」 冷ややかな目がタイガー9を射抜く。 「そうだな。もう少し様子見がしたかったんだが仕方が無い。 ガチンコ勝負といこうか・・・・」 タイガー9は、立ち上がると額の血をぺろっと舐めた。 そしてレフトアップのファイティングポーズをとる。 ガードが高く、やや後ろより重心のシュ−ティングスタイル。 これが彼本来の構えなのだろう。 隙が微塵も無い。 それに対してマドカは、右前の開いた構えをとった。 まるでサースポーのガンマンのような構えだ。 二人の間に緊迫した空気が流れる。 沈黙の中風が吹いていく。 チラシが舞っていた。 そしてチラシが一瞬二人の視界を遮る。 二人が動いた。 「加速装置!」 奥歯を光らせ加速装置を発動させると、タイガー9は右ハイキックを放つ。 対するマドカもガトリング砲をタイガー9に向ける。 一瞬早く、ガトリング砲がタイガー9を捉えるが、 すぐさまそれをコースを変えたハイキックが妨害した。 常人には影すら見えない超スピードの攻防。 通常の3倍のスピードを可能にする加速装置の性能は驚異的だ。 だがそれを上回るスピードが出せるマドカにタイガー9は驚愕した。 「こいつも加速装置を?」 その呟きは高速すぎて空気にうまく伝わらない。 タイガー9は矢のような左ジャブを繰り出す。 マドカは後ろ宙返りをしながら攻撃をかわし、空中で発砲する。 バリバリバリバリバリッ!! タイガー9はそれを予測していたかのように突進して光弾をくぐった。 着地の瞬間を狙って右ストレートを放つ。 「くっ!」 スピードでは僅かにマドカが上だったがこの攻防はタイガー9に軍配が上がった。 右手でガードしたものの、マドカの体勢が崩れたのだ。 着地を狙われよろけるマドカ。 チャンス!! 疾風の速さでタイガー9がマドカの脇をぬけ、バックを取る。 そしてここから必殺のサブミッション地獄が始まるのだ。 一度捕まったらパワーで劣るマドカに逃げる術は無い。 絶体絶命!! と思われたがタイガー9は重大なミスを犯した。 普通、人の背後は無防備な物だがマドカの背中には大きなスラスターが付いていた。 しかもアフターバーナーで人間の丸焼きが出来るほどのD2ドライブユニットと言う名の 超高出力なスラスターが! 案の定、D2ドライブユニットが最大出力で青白い炎を吹き上げた。 「あち!あぐあああああああああ!!」 炎にあぶられ髭と淡い胸毛を焦がしながらタイガー9が悶絶する。 その瞬間加速が解けた。 「マドカ!トドメだ!」 恭平の指示が飛ぶ。 「了解!」 そう叫ぶとマドカは背中のD2ドライブユニットから 3本のエネルギーチューブを引き出した。 指に挟まれたチューブをガトリング砲の中腹のコネクターに接続する。 エネルギー増幅装置を兼ねたD2ドライブユニットがスラスター部から 淡い光を放ちながら出力を上げていく。 マドカが両手でガトリング砲を構えると、二つの砲身が唸りを上げて回転し始めた。 同時に装甲部分が上下に展開し、露出した放熱フィンが作動する。 左の髪飾りから照準装置がせり出し、マドカの左目に装着された。 「ツインビームガトリング、ファイナルブレイク!」 緑の透明なディスプレイの中央で照準のマーキングが、 ピピピピピッキンと子気味の良い音を立ててタイガー9に重なる。 「ファイア!」 緑の無数の光弾がガトリング砲から怒涛のように吐き出される。 光弾はタイガー9の視界を埋め尽くし、全身をくまなく蹂躙する。 絶え間なく続くスコールのように打ちのめし、圧倒的な力で吹き飛ばした。 「どああああああああああああああ!!」 全てが閃光に包まれていく。 強大なエネルギーが膨れ上がり、大気が耐え切れなくなって弾けた。 どっかあーーーーん!! 爆発の衝撃波でビルのガラスが割れていく。 逃げ遅れた市民が吹き飛ばされ何人も転がっていった。 爆発が収まり、煙が晴れるとそこには巨大なクレーターが出来ていた。 アスファルトとコンクリートをバターのように溶かし、 まるで小型の核が爆発したかのようだ。 そのクレーターの側に一人の男は倒れていた。 全身が焼け焦げ、血がにじんでいる。 大の字になったその様子は死体ではないかとも取れるが、 わずかに上下する胸部がまだ息があることを訴えていた。 ガチャリ! 虫の息のタイガー9にガトリング砲が向けられた。 しかし発砲はしない。 「なぜトドメを指さない?」 わずかに目があけられる。 「貴方は昨日エスカレイヤーに勝つ機会があったにもかかわらず、 見逃してくれました。 だから、根っからのスケベではあっても 根っからの悪人では無いと判断しました。」 「何か複雑な気分だな」 苦虫を噛み潰したような表情でタイガー9が答えた。 「今後地球に手出しをしないと誓ってくれるなら、 私も見逃したいと思います。」 「OK。俺の負けだ。 今すぐとは言わないが地球からは退散する。 二度と手出しはしない。 嬢ちゃんにリベンジできないのは残念だけどな」 そう言ってウインクしてみせるタイガー9。 それを見てマドカが、ガトリング砲の狙いを外した。 「どうして貴方みたいな人がダイラストにいるのですか? イガロもそうです。 なぜ悪事に加担するのですか?」 その問いにタイガー9が急にまじめな顔になる。 「強い奴と戦えるから・・・・・かな。 ダイラストにいれば嬢ちゃんみたいなのが 黙っていても寄ってくる。 イガロも同じだ。 それに俺たちには割りと居心地がいいんだよ。 俺たちは戦うことしか知らん、難儀な人種だからな」 「戦う為に生まれたから・・・・・・ですか?」 そう問うマドカの目は悲しそうだった。 自分も同じだから・・・・・ 「それもある。だがそれだけじゃない。 自分自身で選んだことだ。 常に死と隣あわせだが、全力で戦える喜びに比べたら ちっぽけなリスクだ。」 「・・・・」 マドカの顔はさらに重さを増していた。 「そんな顔するな。 ああ、そうそう!イガロの奴生きてるぞ!」 タイガー9が勤めて笑顔を作る。 「え?でも話では爆発して首だけになってたって・・・」 さすがにそれには驚いたのかマドカの表情が和らぐ。 タイガー9それを確認すると話を続けた。 「イガロの一族ってのは、なかなか死ねないらしくてな。 頭が無事なら再生できるんだそうだ。 左手の頭も死んだ戦友が同化した物だって言ってたぞ。 それだけ生命力が強いんだな。 水掛けときゃそのうち生えるだろうぜ。」 「あの人は球根ですか?」 マドカが苦笑する。 「似たようなもんだ。 もっとも求婚には失敗したがな・・・・」 そう言って笑うタイガー9が不意に静かになった。 またマドカの顔が不安げになる。 タイガー9の体は酷い有り様だった。 もう笑う力も残っていないのかもしれない。 「白が眩しいな・・・」 目じりに涙を溜め、そう呟く。 意識も途絶えかけてるのかもしれない。 手加減など出きない相手だったとはいえ、 少し胸が痛んだ。 「しかも赤のリボン付とは・・・・」 「??」 意味不明な発言にマドカが困惑する。 タイガー9の瞳は空中の一点に向けられていた。 そう、側に立つマドカのスカートの中へと 「!!」 ドガスッ!! 再びパンプスのヒールがタイガー9の額にめり込んだ。 全体重を乗せた怒りの一撃。 その日タイガー9が目を覚ますことは無かった。 二人は月の光に照らされ、抱きあっていた。 ベッドに向き合って座り、お互いのぬくもりを確かめ合うように寄り添う。 昨日と同じようにマドカが潤んだ瞳で恭平を見上げた。 何も言わず恭平の顔が近づく。 高鳴る鼓動だけが聞こえてきた。 お互いに目を閉じる。 ゆっくりと唇の距離が縮まっていく。 バアン!! 突然部屋のドアが開いた。 「恭ちゃぁーん!充填しよ!今しよ!すぐしよ!朝までしよう!!」 顔に無理やり笑みを浮かべた沙由香が現われた。 額に怒りマークが浮かんでいる。 二人は突然の乱入者に固まっていた。 沙由香は大股でずかずかと部屋に入り込み、ベッドに上がって恭平の腕にしがみつく。 その行動にマドカの釜縛りが解けた。 「さ、沙由香さん!何の恨みがあって邪魔するんですか!」 「いっぱい!」 マドカの剣幕に沙由香がしれっと答える。 うっと言葉を詰まらせるマドカ。 思い当たる事は山ほどあった。 「マドカには今までいー−っぱい邪魔されてきたから今度は私が邪魔をするの!」 だだっ子のように口を尖らせ、恭平の腕に自慢の巨乳を押し付ける。 負けじとマドカも恭平の反対の腕にしがみついた。 「そんな事はさせません!恭平さんとエッチするのは私です!」 「世界の平和の為に恭ちゃんは私とエッチするの!」 「私にも世界の平和は守れます!」 「一回の戦闘でエナジー使い切ってたらいくら恭ちゃんでもカスカスになっちゃうわ!」 「あれは慣れてなかっただけですからセーブすれば大丈夫です!」 「やっぱり経験豊富な私の方が良いってことじゃない!」 「経験豊富でもゆるくなってたら意味がありません!」 「ゆるくなんかなってないわよ!」 二人の戦いはヒートアップしていく。 「あのお〜〜!もうその辺でやめない?」 見かねた恭平が弱々しく提案した。 ギロッ!! 「恭平さんは黙っててください!!」 「恭ちゃんは黙ってて!!」 二人の一喝に恭平は睨まれたカエルになった。 「・・・・はい」 秋の夜長の月明かりの中、恭平を挟んだ不毛な戦いは延々と続くのだった。 第四話 終 あとがきみたいな物 ケーン・ワカバマークです。 実はこの話を一番最初に書きました。 設定が少し違いタイガー9はコンロンの怪人でマドカを大破させた張本人だったのですが イガロの玉砕シーンを入れたいが為に変更しました。 既にお解かりと思いますが初代タイガーマ○クと初代サイ○ーグ0○9を合わせて出来たキャラです。 性格はスケベでひょうきんですが・・・ 4話も終わり残すところ後1話になりました。頑張って書き上げたいと思います。 遅ればせながら下記にメールアドレスを書きましたので、 感想、苦情、批判などをお寄せください。 uekisan@m14.alpha-net.ne.jp |
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