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スーパーマドカ列伝 第三話 “はぢめてのときめき“ 街の公園で妙な事件が起きていた。 事件と呼べるほどの物かどうか怪しいが、ハンドスピーカー片手に 「エスカレイヤー出て来――――い!!」 と叫んでいる怪人が居るというのである。 だがそれ以外は破壊活動も、嫌がらせもしていていないようなのだ。 怪しいとは思いながらもエスカレイヤーチームは現場へと向かった。 「よう!久しぶりだな」 公園にいってみるとベンチに見覚えのある怪人が大股を広げて座っていた。 ワイルドな風貌に4本腕の大男、ガレイズだ。 右手にハンドスピーカーを持っていることから騒いでいたのは彼だろう。 何を考えているのかは判らないが、 まるで久しぶりに会った友人のように話し掛けてくる。 「ガレイズ、貴方地球外に逃げたんじゃなかったの?」 怪訝そうな表情でエスカレイヤーが尋ねる。 ガレイズは、ぼりぼりと頭を掻きながら事の次第を話し出した。 「ああ、一旦はダイラストの本部に戻ったんだがな。 偏狭惑星地球なんかの侵略に失敗するような幹部は要らねえって言われちまってな。 又ここに送り返されちまったんだよ。つまりは追い出されたのさ。 で、俺に残された道は唯一つ。お前に勝って力を示した上での任務完遂だ。 しかしその当時の俺ではお前に勝つことは不可能に近かった。 そこで俺はDr.アルクから預かってたフロストの種、 つまりはフラストのロストナンバーズの種をばら撒いて、 お前らのデータを集めながら時間稼ぎをしてた訳だ。」 その説明でやっと今まで不可解に思っていたことが解明された。 ダイラストが壊滅したというのに次から次へと怪人が出るのはおかしいと思っていたのだ。 「貴方の仕業だったの」 「そういう事だ」 ガレイズがふてぶてしく応える。 「そして私の前に現れたということは、私を倒す準備が出来たということなの?」 「そういう事だ」 その答えにエスカレイヤーが身構える。 「おっと、待ちなよ。 今日の俺は挨拶に来ただけだ。 もっともこいつらは用事が有る様だがな」 そう言って親指で後ろの草むらを指す。 するとそこから2人の怪人がゆっくりと現われた。 一人は、トラの頭に筋肉隆々の大男、首に赤いマフラーをし、 黒いタイツとリングシューズを履いている。プロレスラー風の怪人。 そしてもう一人は見覚えがあった。 全身こげ茶の獣毛に覆われ、左手にも頭を持つマッシブな怪人イガロだ。 いきなりの増援でエスカレイヤーに緊張が走る。 だが2人は襲い掛かってくるそぶりも無く、ガレイズの左右に移動しただけだった。 それを見たガレイズが重い腰を上げる。 「さーて、俺は帰るから。後はお前らの好きにしろ。」 そう言うと無防備にも背を向ける。 よっぽど自信があるのか、それとも攻撃されないと思っているのかは判らない。 しかし以前とは何処か印象が違う。 不思議に思ったエスカレイヤーはガレイズに尋ねた。 「待ちなさいガレイズ。以前の貴方なら確実に変身前の私を狙ったはず。 なぜそうしなかったの?」 「さっきも言ったが力を示すのに俺はエスカレイヤーを倒さにゃならん。 それにそういう姑息なやり方は、うちのかみさんが嫌いなんでな。止めたんだよ。」 照れくさそうにぽりぽりと鼻を掻く。 「え?かみさんって奥さんのこと?」 「まあ、その、そういうこった。じゃあ精々ガンバレよ。」 そう言うとそそくさとガレイズは去っていった。 ふと新たな疑問が浮かんだ。ガレイズの奥さんって誰? つまらない事を考えていると、一呼吸おいてイガロが動いた。 只ならぬ雰囲気に反射的に構えるエスカレイヤー。 「やるぞタイガー9」 「判った。任せろ。」 事前に打ち合わせをしていたのだろう。 それだけ言うとタイガー9は、タイツの中からマイクを取り出した。 そして公園のスピーカーにつながっていることを確認すると、 高らかに喋り始めた。 「レディース・アーンド・ジェントルメン! 一目あったその日から恋の花咲く事もある、しかし恋は無情な一本勝負。 今日もやってまいりました告白タイム。 では、今日の選手を紹介しましょう。 あーかーコーナー! 400戦1敗、超人!イガーロォーッ!」 「だああああああっ!!」 イガロが高々と両手を突き上げた。 「対しますは、あーおーコーナー! 全勝街道爆進中!エスカ!レイーヤーッ!」 「え?あ、はい!」 エスカレイヤーがつられて弱々しく手を上げる。 「解説は私、タイガー9が務めさせて頂きます。」 タイガー9が礼儀正しくお辞儀をする。 「なっなんなの?」 突然の展開に動揺するエスカレイヤー。 それを無視して事態は進行していく。 「イガロさん自信の程は?」 「最初の印象が余りよくなかったので少々不安ですが、 自分の思いを正面からぶつけてみます。」 「判りました。それでは頑張っていきましょう!」 タイガー9に送り出されイガロが走っていく。 そしてイガロは、未だに状況が理解できず戸惑うエスカレイヤーの正面に立ち止まった。 「ああっと、エスカレイヤーさんの前だ!」 「貴方の強さと美貌に惚れました。 無骨者の俺ですが、体力と息子の大きさには自信があります。 どうか俺の子供を生んでください!!」 さっと手が差し出される。 エスカレイヤーは、差し出された手にビクッと過剰に反応しながらも やっと事態を理解した。 つまりはプロポーズらしい。 つい頬が赤くなってしまう。 そういえば以前こんな番組があったなあと思い出す。 しかもイガロは本気らしい。 怪人からというのがちょっと普通とは違うが、 異性からプロポーズされるというのは悪い気はしない。 それでもどうしたものかと考えていると催促が来た。 「さあ、どうする!エスカレイヤーさん!」 「ええーっと」 エスカレイヤーは返答に困って、ちらちらと恭平が隠れている草むらを見た。 だが恭平は気付いていないのか何も言ってこない。 その反応に一瞬むっとしてOKしてやろうかとも考えたが、 やっぱり断ることにした。 怪人のお嫁さんはやっぱりいやだ。 「ごめんなさい。」 エスカレイヤーが、深々と頭を下げる。 がああああああああああん!! 稲妻の背景効果付きでイガロの恋は砕け散った。 イガロが真っ白になったようにその場に崩れ落ちる。 「あーっと、ごめんなさいだ! イガロさん玉砕! まさに!恋の一本負け!」 その瞬間、タイガー9の追い討ちにイガロの精神が崩壊した。 「があおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」 雄叫びを上げ、悲しみに満ちた瞳からは血の涙が滝のように流れていた。 人生の目的を失った目が虚空をさまよう。 そしてさっきエスカレイヤーが見ていた方向に偶然恭平を見つけた。 イガロの心の底にプロミネンスのような嫉妬の炎と共に どす黒いぐつぐつとした物が湧き上がってくる。 狂気に満ちた両眼が恭平を食い入るように睨んでいた。 「そうか!あの男か!あの男なんだな! 貴様さえ!貴様さえいなければ!」 全身の獣毛が逆立っていた。 左手の相棒も応援の雄叫びを上げる。 「うぉおおおおおおおおおおおおおおっ!! 死ぃーねぇーーーーーーーっ!!」 嫉妬に狂ったイガロが地面を蹴った。 猛スピードで突っ込んでいく。 恭平はまずいと思ったが常人にはどうしようもないスピードだった。 狂人イガロが恭平に迫る。 恭平に残されたのは恐怖に脅えることだけだった。 だが恭平に狂人の爪が振り下ろされた直後、何者かがその進路を遮った。 何者かが飛び込んできたのだ。 ザシュッ 深々と爪の食い込む音が聞こえた。 恭平は、呆然としながら胸から背中へと爪が突き貫ける光景を見ていた。 貫かれた背中からオイルが飛び散る。 そして唖然とする恭平の顔に黒いシミを作った。 「ああ!マドカ!」 最初に声をあげたのはエスカレイヤーだった。 恭平が声を出せたのはマドカが力なく腕の中におさまってからだった。 「マ、マドカ?おい!うそだろ!マドカっ!」 必死に揺さぶってみるが黒ずんだ瞳に再び光が宿ることは無かった。 「マドカぁーーーーーーーーーーーーっ!!」 恭平の涙も、張り裂けそうな嘆きも今のマドカには届かない。 むなしく響き渡るだけだった。 「お、俺はなんて事を・・・」 あまりの事態におろおろするイガロ。 頭を抱えながらよたよたと後ず去っていく。 しかし彼の罪がそれで消えるはずも無かった。 そしてその罰は彼の愛する者の手で執行される。 「なら、あなたも死になさい!!」 エスカレイヤーの怒りが頂点に達したときその変化は起きた。 体から金色のオーラが吹き上がり、髪と服がピンクから怒りの真紅へと変色する。 頭と胸の飾りから小さな白い三角のフィンが生え、光の粉を撒き散らしながら開き、 翼のような形を作った。 そして小さな翼は光を放ち金色に輝きだす。 胸のジュエルも金色に輝き、ブルーだった瞳もゴールドへとその色を変える。 それはDDDが怒りの感情エネルギーでオーバーロードした姿。 エスカレイヤーの真の姿なのか、それともただの暴走なのかは判らない。 しかし今のエスカレイヤーは、怒りの化身となっていた。 スッと右手をイガロヘ向けると手の平が眩い光を放つ。 するとイガロの周りに何枚もの赤い三角の透明な板が現われる。 右手をグッと握りこむと赤い板はイガロを捕獲し、赤いクリスタルキューブを作り上げた。 エスカレイヤーは、捕獲を確認すると腰のパルシオンを引き抜いた。 パチンと片手用のパルシオンの柄が伸び、それを両手で握る。 目の前にかざされたその剣が巨大なエネルギーを吹き上げ、 身の丈ほどもある大剣を作り上げた。 風に赤いたてがみをなびかせ怒りの魔人がイガロに迫る。 「ファイナル!エスカレーション!!」 超スピードですれ違い様、エネルギーソードが2度閃く。 クリスタルキューブがイガロごとスパッと]字切断された。 高密度の異相空間を空間ごと切り裂くことで如何なる物をも切断する。 それが超必殺技ファイナルエスカレーションだ!! 「ぐはああああああああああああああああああっ!!」 断末魔の悲鳴を残してクリスタルキューブが爆発と共に砕け散った。 エスカレイヤーは、まるで切り捨てたかのように振り返りもしない。 うつむいて表情も見えず、爆発を背にたたずむその姿は見るものに恐怖を与えた。 怒りの双眸は残ったタイガー9に向けられていた。 輝く右手がタイガー9に向けられる。 「おっと、危ない!」 クリスタルキューブが完成する前にタイガー9の体がその場から消える。 一瞬後に10mほど左に現われた。 「ちょっとまて!今戦う気は・・・」 そう言い掛けたところで、斬撃がタイガー9を襲った。 問答無用とでも言うようにエネルギーソードが唸りを上げる。 しかしタイガー9は紙一重で猛攻をかわして行く。 避けられた大剣が木を切り倒し、地面をえぐり、ベンチを破壊する。 怒りに染まった剣が触れる物全てを破壊していく。 容赦の無い連撃がタイガー9を追い詰めていった。 「くそ!仕方が無い!加速装置!!」 またタイガー9が消えた。 次にタイガー9が現われた時、その膝がエスカレイヤーの腹部に深々と突き刺さっていた。 「加速・・・装置?」 強烈なカウンターを喰らいたまらず血を吐きながら地面にしゃがみこむエスカレイヤー。 だがまだその目の炎は消えておらず、ダメージで自由の利かない体を 無理やり動かそうとしている。 それをタイガー9が制した。 「もう止めろ!イガロはああなっちまったが今戦う気は無い。 それにお前だって仲間を弔ってやらければならないだろう?」 恭平に抱かれたマドカを指差す。 やっとエスカレイヤーの動きが止まった。 「俺は逃げも隠れもしない。戦う気になったら何時でも来るがいい。 頭を冷やしてな。 怒りに染まった瞳では見えるものの見えないぜ。 じゃあな、リングの上で待ってる」 タイガー9は、地面に転がっているイガロの頭を拾い上げると そう言い残して消えた。 エスカレイヤー基地は、重い空気を漂わせながら静まり返っていた。 高円寺博士がマドカと共にメンテナンス室へ入って既に3時間が経過している。 その間恭平と沙由香は一言も喋らず待っていた。 沈黙は辛い。でも口を開くと泣き言しか出てこない気がして怖かった。 2人とも自分の無力さを噛締めていた。 もう涙は後を残すだけで止まっていた。 そんな中やっとそれを打開するかのようにメンテナンス室の扉が開いた。 「待たせたね二人とも」 高円寺博士のやさしい声が響く。 二人は待ちわびたように同じ質問をする。 「マドカはどうなったんですか?」 「マドカはどうなったの?」 その問いに答えるように高円寺博士の影からマドカが現われた。 「ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。」 深々と頭を下げる。 恭平は思わずマドカを抱きしめていた。 沙由香もそれに習う。 「よかった。本当に無事でよかった。」 そう喜ぶ恭平の目にはまた涙が浮かんでいた。つい力もこもってしまう。 「恭平さん、そんなに強くしたら痛いです。」 照れくさそうに言うマドカ。 しかし恭平はその発言に違和感を感じた。そして体から伝わる感触にも。 「?」 それを確かめるべくマドカの体をさわさわと触りまくる。 「ちょ、ちょっと恭平さん。どこ触ってるんですか?」 その声を無視して触り続ける恭平。そして彼は確信した。 ”やっぱりやわらかい” しかしその答えが告げられる前に沙由香のビンタが炸裂した。 高円寺博士の説明によると前のボディは損傷が酷すぎてシステムを 維持できなくなった為、仮のボディにシステムを移したのだそうだ。 そして今マドカが使っているのはプロトタイプのバイオボディだそうだ。 一応DDDも付いている。つまり沙由香と同じになったわけだ。 もっともプロトタイプのDDDは一度も動いたことが無く、 それが原因でメカニカルボディに変更したそうなのだが・・・ そんなことはどうでも良く、俺は、ただマドカの無事を喜んでいた。 ちょっと気になることは、笑うマドカの顔がどこか不安そうな事だった。 恭平が眠れずベッドで月を眺めていた時呼び鈴が鳴った。 小さな真夜中の訪問者は、思いつめた表情で玄関に立っていた。 「少しだけ話を聞いてもらえませんか?」 恭平は、驚きながらもマドカを部屋へ招き入れた。 長い沈黙が続いている。 マドカは、ちょこんと座布団の上に座ったまま下を向いている。 恭平はベッドに腰掛け、じっとマドカが口を開くのを待っていた。 「私はここにいても良いんでしょうか?」 ボソリと呟く。 やっと発したその声は酷く弱々しく感じられた。 「私はエスカレイヤーとなって戦う沙由香さんのサポートの為だけに生まれました。 でも今の私は、索敵能力、解析能力、空間把握能力が低く、 戦闘能力にいたっては無きに等しい存在です。 とても沙由香さんのサポートなんて出来ません。 でも・・・・・・ でも、私は今の自分を喜んでいるんです。 機械でなくなったこの体を喜んでいるんです。 沙由香さんと同じになれたって・・・・・ そんな私がここにいても良いんでしょうか。」 まるで捨てられた子犬のような目が恭平を見ていた。 恭平はその目を見つめ返し静かに答えた。 「俺は良いと思うよ。」 マドカの目が期待と共に僅かに大きくなる。 「たとえ戦えなくても、サポートが出来なくてもマドカはマドカだよ。 俺にとってはなにも問題ない。 それにマドカが居ることは無意味なんかじゃないよ。 俺はマドカがいるから戦えるし、マドカがいるから勇気がわいてくるんだ。 だからマドカはここにいていいんだ。」 やさしい笑顔だった。吸い込まれそうなほどに。 「あ、ありがとうございます」 マドカはまぶし過ぎる笑顔を直視できず、下を向いて答えた。 恭平は、その初々しい反応を微笑ましく思いながら時計を気遣う。 「もう寝た方が良い。以前と違って明日が辛いぞ」 「眠れません!」 恭平がびっくりするほどの大声だった。 「恭平さんにそんな事といわれたら、 ドキドキして眠れません。」 尻すぼみに声が小さくなっていく。 「どうしてほしい?」 「鎮めて欲しいです。恭平さんに・・・」 マドカの顔はゆでダコの様になっていた。 「眠れぬ夜になるかもしれないよ」 くすくすと笑う恭平。 マドカはさらに顔の温度が上がるのを感じていた。 「・・・・・恭平さんのエッチ」 そしてその夜奇跡が起きた。 その奇跡の鐘の音は、マドカの胸の奥で高らかに響いていた。 ケーン・ワカバマークです。 意外と早く出来ました。が、“なんでエッチシーンを書かんのだ!“と お叱りを受けそうで怖いです。 許してください俺には、マドカにあーんな事やこーんな事を・・・ (ジュルッおっといけねえ)する描写は書けないっす。 だれかに書いて欲しいくらい。 でもってスケジュール的には、 第4話はぢめてのへんしん 最終話はぢめてのあしたへ で終わりなのですみませんがもうしばらく付き合ってください。 以上 |
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