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第六章

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 「踊っていただけませんか?」

 「……ごめんなさい」

 何人目かの紳士の誘いを、シンデレラは笑顔で断った。
 ここは王宮。舞踏会会場。

 首尾良く舞踏会に潜りこんだシンデレラは、美貌に釣られてよってくる男どもを、片端から撃退していた。

 狙うは、王子の首一つ。
 雑魚を相手にしているヒマは、なかった。

 シンデレラは、一際高くなった段の上に、視線を走らせた。
 そこには、国王と、世継ぎの王子が座っている。

 『出てこいっ、王子っ!』

 シンデレラは、逸る心を抑えて待ち続けた。

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 舞踏会は、盛況だった。
 色とりどりに着飾った貴婦人が、音楽にあわせて、自慢の曲線を披露する。

 「誰か、気に入った女性はいたかね?」

 国王の源太郎は、隣の王子にささやいた。

 「無論です。父上」


 仮面で顔の上半分を隠した王子は、魅力的な唇をつり上げて笑った。

 「申し分のない、花嫁ですよ」
 「そうか……」

 断言する息子を頼もしそうに見やりながら、源太郎はふと、不安そうに尋ねた。

 「しかし……私たち王族の使命は覚えているだろうな?
  その……大丈夫なのか、その花嫁は?」

 王子は一笑した。

 「ご心配には及びません。
  ご安心下さい、父上。
  これ以上ないくらいの、適任者です」

 「お……おお、そうか。
  それは、良かった」

 嬉しげに言うと、源太郎は不自由な下半身を見下ろした。

 「私も、こんな体だ。
  もう、無理はきかん。
  これからは、お前と、その花嫁に、この国の運命を託す。
  頼んだぞ!」

 げほげほとせき込む源太郎を、左右の従者が介抱する。

 王子は、父親の背をさすりながら、安心させるように言った。

 「おまかせください、父上」

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 音楽が変わった。
 華やかなファンファーレを聞いて、ミストレーヌは眉をひそめた。

 「なんだ?
  なにがはじまるというのだ?」

 「いよいよなんですよ」

  三女のルーイがささやいた。

 「いよいよ、王子様の御出座です。
  王子が最初に踊った相手が、次の王妃になるんですよ」

  わくわくした様子で、ルーイがはしゃぐ。

 「え……
  そうなの?」

  急にそわそわしながら、ミストレーヌは身繕いを始めた。
  ななかが、じと目で睨む。

 「あんた……年を考えなさいよ
  そんなこと、やるだけ無駄、無駄」

  ミストレーヌの目が、尖ったものになった。

 「親に向かってあんたとは何事だ!」

 「なによ、やる気?!」

  ちゃき。
  
  レイピアと、かぎ爪が同時に煌めいた。
  互いに、相手を牽制する。
  
 「…………」
 
  じりじりと、睨みながら円を描くように、二人は横に移動した。
  その横で、我関せずと、イガロが毛繕いをしていた。

  音楽が、一際、華麗なものになった。

 「きゃあ〜〜〜〜っ!!」

  うっとりと貴婦人が見守る中、仮面の王子がゆっくりと、階段を下りてくる。

 「わたしが……」
 「あたしよっ…」
 「あおーん!」
 「あの、僕が…」

 ミストレーヌをはじめとする貴婦人が、壮絶なおしくらまんじゅうを始めた。
 その横を、王子は素通りした。

 「あれ?
  まって……」

 王子は、ななか達の怒濤のタックルを、すいっとかわし、目的の女性の前に到達した。

 シンデレラは、目を見開いた。

 「えっ……うそ?
  ホントに?」

 王子は微笑んで、手をさしのべた。

 「僕と……踊ってくださいますか?」

 シンデレラは、頬を染めてうつむいた。

 「…………はい…」


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