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「踊っていただけませんか?」「……ごめんなさい」
何人目かの紳士の誘いを、シンデレラは笑顔で断った。
ここは王宮。舞踏会会場。首尾良く舞踏会に潜りこんだシンデレラは、美貌に釣られてよってくる男どもを、片端から撃退していた。
狙うは、王子の首一つ。
雑魚を相手にしているヒマは、なかった。シンデレラは、一際高くなった段の上に、視線を走らせた。
そこには、国王と、世継ぎの王子が座っている。『出てこいっ、王子っ!』
シンデレラは、逸る心を抑えて待ち続けた。
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舞踏会は、盛況だった。
色とりどりに着飾った貴婦人が、音楽にあわせて、自慢の曲線を披露する。「誰か、気に入った女性はいたかね?」
国王の源太郎は、隣の王子にささやいた。
「無論です。父上」
仮面で顔の上半分を隠した王子は、魅力的な唇をつり上げて笑った。「申し分のない、花嫁ですよ」
「そうか……」断言する息子を頼もしそうに見やりながら、源太郎はふと、不安そうに尋ねた。
「しかし……私たち王族の使命は覚えているだろうな?
その……大丈夫なのか、その花嫁は?」王子は一笑した。
「ご心配には及びません。
ご安心下さい、父上。
これ以上ないくらいの、適任者です」「お……おお、そうか。
それは、良かった」嬉しげに言うと、源太郎は不自由な下半身を見下ろした。
「私も、こんな体だ。
もう、無理はきかん。
これからは、お前と、その花嫁に、この国の運命を託す。
頼んだぞ!」げほげほとせき込む源太郎を、左右の従者が介抱する。
王子は、父親の背をさすりながら、安心させるように言った。
「おまかせください、父上」
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音楽が変わった。
華やかなファンファーレを聞いて、ミストレーヌは眉をひそめた。「なんだ?
なにがはじまるというのだ?」「いよいよなんですよ」
三女のルーイがささやいた。
「いよいよ、王子様の御出座です。
王子が最初に踊った相手が、次の王妃になるんですよ」わくわくした様子で、ルーイがはしゃぐ。
「え……
そうなの?」急にそわそわしながら、ミストレーヌは身繕いを始めた。
ななかが、じと目で睨む。「あんた……年を考えなさいよ
そんなこと、やるだけ無駄、無駄」ミストレーヌの目が、尖ったものになった。
「親に向かってあんたとは何事だ!」
「なによ、やる気?!」
ちゃき。
レイピアと、かぎ爪が同時に煌めいた。
互いに、相手を牽制する。
「…………」
じりじりと、睨みながら円を描くように、二人は横に移動した。
その横で、我関せずと、イガロが毛繕いをしていた。音楽が、一際、華麗なものになった。
「きゃあ〜〜〜〜っ!!」
うっとりと貴婦人が見守る中、仮面の王子がゆっくりと、階段を下りてくる。
「わたしが……」
「あたしよっ…」
「あおーん!」
「あの、僕が…」ミストレーヌをはじめとする貴婦人が、壮絶なおしくらまんじゅうを始めた。
その横を、王子は素通りした。「あれ?
まって……」王子は、ななか達の怒濤のタックルを、すいっとかわし、目的の女性の前に到達した。
シンデレラは、目を見開いた。
「えっ……うそ?
ホントに?」王子は微笑んで、手をさしのべた。
「僕と……踊ってくださいますか?」
シンデレラは、頬を染めてうつむいた。
「…………はい…」
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