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第一章

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 みすぼらしい身なりの少女が、雑巾がけをしていた。
 大きな、古びた屋敷は、少女の努力によってみちがえるように綺麗になっていた。
 古ぼけた柱も、すり減った床も、黒くつや光っていた。

 「ふう。」

 汗を拭き、顔をあげたメイド服の娘は、満足そうに背後を振り返り、自分の努力の跡を眺めた。

 「やっときれいになったわ」

 可愛らしくつぶやいた少女は、流れる汗をふくと、自分を励ますようにつぶやいた。

 「がんばれ、あたし。
  屋敷全部なんて、お義母さまも無茶いうわね。
  でも、あたし、負けない。」

 天井を見上げて、その先の天を見つめる。

 「みていて。
  天国のお父様、お母様。
  私は、負けません」

 祈るように目を閉じたシンデレラは、敬虔な表情で天の両親に語りかけた。
 
 「…………」
 
 祈るうち、ゆっくりと顔色が赤くなっていく。
 
 「…………」
 
 そしてどす黒くなっていく。
 
 「…………」
 
 シンデレラの顔は、険悪なものになっていた。
 手の雑巾を、思い切り床にたたきつける。

 べちゃっ。

 「あああああああ、やってられっか!」

 金髪をかきむしると、恭平は絶叫した。

 「なんでオレがシンデレラなんだぁっ!」


 「カット!
  カットです。」


 何もない空間から、緑の髪の少女が現れた。

 手のメガホンを、恭平の頭に叩きつける。

 「いい加減にしてください。
  なんどNGを出したら気が済むのですか」

 「だってよ……」
 「だってじゃ、ありません」

 マドカは恭平の尻をつねりあげた。
 恭平が悲鳴を上げる。

 「厳正なくじ引きの結果に、文句をつける気ですか?」

 「厳正って……
  そのくじは、いつ、誰が引いたんだ?
  オレはしらないぞ?」

 「それは、とっぷしーくれっとです」

 「……それで納得すると思うか?」

 マドカは素早く恭平の背後に回った。

 「納得して頂きます」

 ぷし。

 「あ?」

 全身が脱力した恭平は、意識を失う寸前、マドカの手に無針注射器があるのを見た。

 「催眠誘導剤です」

 マドカは、無表情に言った。

 「目覚めたら、あなたはシンデレラになっています。
  シンデレラです。
  シンデレラ…
  シンデ……
  シン……」


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