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第十章

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 いきなり、マドカが外に走り出た。
 慌てて恭平が追う。
 
 高円寺家の庭で、マドカは背中から巨大なバーニアを形成させていた。
 
「な……なんだ、それは」
「恭平さん」 マドカは装備を調えながら、恭平に尋ねた。

「沙由香さんを救出する、最初で最後のチャンスです……
 危険です。
 とても、危険です。
 それでも……きますか?」
 
 心配そうなマドカの声に、恭平は答えた。
 
「おう!」

 マドカはうなずくと、恭平を抱えた。
 耐Gスーツを用意するヒマはなかった。
 
 12基のバーニアの半数に、点火する。
 
「いきます!」

 マドカは紫色の光を追って、上昇した。
 
 
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 上空。
 
 ななかは目を閉じていた。
 FMシリーズとして作成されたななかは、異空間のありかを計算する必要はない。
 異空間を感じ取り、4次元的に認識する機能がすでにあるからだ。
 地球人の想像も及ばぬ知覚で、ななかは近隣の異空間を次々と探査していた。
 
『いた!』

 ななかの脳裏には、フラストどもが移動する空間が、正確に投影されていた。
 自分と同じ遺伝子を持つ肉体が、次に転移する空間が、さらにその先、さらにさらにその先が、ななかの脳では自明の事実として処理される。
 
「そこぉっ!!」

 ななかは急降下をはじめた。
 その先に、イデアの空間ができはじめる。
 
 
「お姉さまっ!!」

 ななかは、イデアの壁をくぐった。
 
 
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「ぐわっ」

 恭平の視力が失われた。
 マドカの急激な機動で、目への血流が絶たれたのだった。
 それに気づいたマドカは、しかし別の事を言った。
 
「恭平さん」
「なんだ?」
「ななかさんに追いつくには、今のままでは間に合いません。
 加速していいですか?」
 
「当たり前だ」

 恭平は、一瞬も迷わず言い切った。
 しかしその目は、あさっての方を向いている。
 マドカは微笑んだ。
 
「いきますっ!!」

 背中から、更にバーニアをつきだし、その全てにマドカは点火した。
 異空間の応用技術でバリアを張るが、完璧ではない。
 恭平の全身の骨を、強烈なGが襲った。
 
 恭平の口から、赤い液体が零れて飛び散った。
 
 その瞬間、マドカは、イデアの壁をくぐった。
 すぐに、それは閉じた。


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