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第八章

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 恭平は、目を覚ました。
 体の節々が、悲鳴をあげている。
 
「?」
 
 少し考えて、恭平はフラストどもに特攻した事を思い出した。
 激突の瞬間、マドカが助けてくれた事も。
 
「そうだ、マドカは?」

 その時ドアが開いて、マドカが入ってきた。
 恭平の様子を見て、問われる前に答える。
 
「ここは高円寺家の地下です。
 恭平さんは命に別状在りません。
 ななかさんは、まだ廃ビルです」
 
 恭平は、一番、聞きたい事を、聞いた。
 
「……沙由香は?」

 マドカは、一瞬、黙った。
 探るように、恭平を見つめてくる。
 
「答えろよ」

 強い口調で問うと、マドカは今日4度目のため息をついて応えた。
 
「まだ……救出できていません」
「まだ?」

 恭平は語気を荒げた。
 
「あれからどれくらい経ってると思ってるんだ、このポンコツ!」
「今回のフラストは……」

 ロボットのマドカは、しかし疲れたように説明した。
 
「今回のフラストは、次々とイデアの壁を展開しては、移動していくのです。
 一つの異空間を突き止め、救出に向かった時は、既に移動してしまっているのです。
 異空間の計算を終了するより早く、移動されては、手の施しようがありません」
 
「なんだとぉっ!」

 恭平はマドカに詰め寄った。

「それじゃあ、沙由香は……沙由香は……もしかして……」

 頭を抱えた恭平に、マドカが冷静に答える。
 
「いえ、まだ生存しています」
「どうしてわかる?」
「異空間は、どの次元に存在しているか、どのような空間属性をもつか、は、
 展開した怪人の意志次第で、特定に時間がかかります。
 しかし、基本的にこの世界に重なっていることは共通しています。
 つまり、通信自体は即時的なのです」
 
「……だから、なんだってんだ」
「つまり、沙由香さんの状況を、こちらでモニタできるのです
 ……バイオパラメタと、音声受信のみですが」
「それを早く言えっ!」

 恭平は、焦って叫んだ。

「早く音声を入れろっ」
 
 マドカは一瞬、ためらうと、コンソールを操作した。
 
 高円寺家の地下に、エスカレイヤーの嬌声がこだました。
 
『んあっ…んあっ…んあっ…んあっ…んあっ…ひぃっ…』

 恭平は、蒼白な顔でマドカを見た。
 マドカはうなずいた。
 
「……どうにか、ならないのか?」

 マドカは首を振った。
 
「今のところは……」

 恭平は頭を抱えてうつむいた。
 沈黙した室内に、エスカレイヤーの喘ぎ声だけが、響きわたる。
 
 マドカが静かに言った。
 
「今、全力で計算していますが……
 今回ばかりは……
 覚悟だけは、しておいてください」


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