| 前へ | 次へ |
恭平は、目を覚ました。
体の節々が、悲鳴をあげている。
「?」
少し考えて、恭平はフラストどもに特攻した事を思い出した。
激突の瞬間、マドカが助けてくれた事も。
「そうだ、マドカは?」その時ドアが開いて、マドカが入ってきた。
恭平の様子を見て、問われる前に答える。
「ここは高円寺家の地下です。
恭平さんは命に別状在りません。
ななかさんは、まだ廃ビルです」
恭平は、一番、聞きたい事を、聞いた。
「……沙由香は?」マドカは、一瞬、黙った。
探るように、恭平を見つめてくる。
「答えろよ」強い口調で問うと、マドカは今日4度目のため息をついて応えた。
「まだ……救出できていません」
「まだ?」恭平は語気を荒げた。
「あれからどれくらい経ってると思ってるんだ、このポンコツ!」
「今回のフラストは……」ロボットのマドカは、しかし疲れたように説明した。
「今回のフラストは、次々とイデアの壁を展開しては、移動していくのです。
一つの異空間を突き止め、救出に向かった時は、既に移動してしまっているのです。
異空間の計算を終了するより早く、移動されては、手の施しようがありません」
「なんだとぉっ!」恭平はマドカに詰め寄った。
「それじゃあ、沙由香は……沙由香は……もしかして……」
頭を抱えた恭平に、マドカが冷静に答える。
「いえ、まだ生存しています」
「どうしてわかる?」
「異空間は、どの次元に存在しているか、どのような空間属性をもつか、は、
展開した怪人の意志次第で、特定に時間がかかります。
しかし、基本的にこの世界に重なっていることは共通しています。
つまり、通信自体は即時的なのです」
「……だから、なんだってんだ」
「つまり、沙由香さんの状況を、こちらでモニタできるのです
……バイオパラメタと、音声受信のみですが」
「それを早く言えっ!」恭平は、焦って叫んだ。
「早く音声を入れろっ」
マドカは一瞬、ためらうと、コンソールを操作した。
高円寺家の地下に、エスカレイヤーの嬌声がこだました。
『んあっ…んあっ…んあっ…んあっ…んあっ…ひぃっ…』恭平は、蒼白な顔でマドカを見た。
マドカはうなずいた。
「……どうにか、ならないのか?」マドカは首を振った。
「今のところは……」恭平は頭を抱えてうつむいた。
沈黙した室内に、エスカレイヤーの喘ぎ声だけが、響きわたる。
マドカが静かに言った。
「今、全力で計算していますが……
今回ばかりは……
覚悟だけは、しておいてください」
| 前へ | 次へ |