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第六章

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 手足の感覚は、無かった。
 アスファルトの模様が、凄い勢いで流れ去ってゆく。
 地上5センチの光景は、全体を見渡す時間を与えない。
 
 地面の突起にひっかかり、バウンドしたエスカレイヤーは、苦痛の呻きをあげた。
 
 エスカレイヤーを引きずる3つの馬の上で、フラスト達が相談していた。
 
「兄貴ぃ、そろそろいいんじゃない?」
「私も、パイと同じ意見です。
 そろそろ、最後のエネルギーも尽きたころかと」
 
 ライダーフラストの長兄は、いやらしい笑みを浮かべた。
 
「おう、そうか。
 ラムダの太鼓判なら、間違いねぇなあ」

「あ、ひどーい」

 三者それぞれの笑いを漏らしながら、背後に引きずるエスカレイヤーを見つめる。
 この状態になって30分。
 常人なら、死ぬどころか、五体がバラバラになっている。
 いくらエスカレイヤーでも、躰の防御に回すエネルギーがそろそろ尽きるはずだ。
 
「じゃあ、あたしがやるね」

 宣言して、パイの手が振り上げられる。
 
「イデアの壁よ……」

 疾走する3人の前方に、うっすらと赤い壁が現れ始めた。
 
 
 
 あと100メートル。
 
 
 
「いよいよね……楽しませてよ……」

 パイが舌なめずりしながら振り向いた。


 あと80メートル。


「教育は、期待できますかね……」

 ラムダが細い目で、エスカレイヤーの躰を眺めた。


 あと50メートル。

「おう、あと少しだ」

 イプシロンが、豪快に笑う。
 


 
 
 唐突に、もの影から乗用車が突っ込んできた。
 
「おぉっ!」
「くっ!」
「ええっ!」

 驚愕する3人の中で、素早く立ち直った長兄のイプシロンが、素早く発砲した。
 弾は、車の内部を破壊して、貫通した。
 進路がそれ、電柱に激突する。


 その一部始終を、朦朧としていた筈のエスカレイヤーは見ていた。
 運転席に乗っていたのは、恭平だった。
 
『恭ちゃんっ!』

 
「すっごぉぉぉぉい!」
「兄上、さすがですね」

 弟妹の賛辞を聞き流し、イプシロンは内心で冷や汗を拭った。

『やべぇやべぇ。完全に不意打ちだったぜ』

 イデアの壁が近づく。
 
 
 背後で、車が爆発した。
 

「いやあああああああああああああああっ、
 恭ちゃんっ!
 恭ちゃんっ!!!」 

 イデアの壁が、せまる。

 エスカレイヤーの目から、一筋、涙が流れた。


 
 3人の怪人は、捕らえたヒロインともども、イデアの壁を越えた。


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