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TVに、MHKのニュースが映っている。
そこには、3頭の馬に引きずられるエスカレイヤーが、映っていた。
時折、地面の凹凸によってバウンドする。
強靱なはずの戦闘服は、すでにあちこちすり切れ、そこから見えるバイオボディの皮膚も、真っ赤になっていた。時折、警察や自衛隊が発砲するが、軽く蹴散らされ、死傷者だけが増えていく。
ニュースキャスターが、絶望的な解説をしていた。
そのTVの前で、恭平が土下座をしていた。
床に、頭をこすりつけていた。
「たのむ」恭平は、腹から声を絞り出した。
「一生のお願いだ」ごん、と頭を叩きつける。
「沙由香を助けてくれ」
「…………」
恭平が頭を下げた先には、竜胆色の戦闘服をまとった少女がいた。
恭平に背を向け、膝を両手で抱え、その上に顔を伏せている。
ここは駅からほど近い、廃ビルの一室。
ななかの居場所を発見したのは、マドカだった。
マドカは偶然を装っていたが、内緒で発信器をつけていたのではないかと、恭平は疑っている。
もしそうなら、ななかを探し出してから、沙由香を出撃させるべきだったと、恭平は後悔の念に身を焼いた。
しかし、今は、どうでもいい。と、恭平は考えた。
ななかに出撃してもらう事。それだけが頼みの綱だった。
恭平は、生まれて初めて、土下座した。
「頼む。
何でもする。
どんな事でもやる。
とにかく、今は沙由香を助けてくれ」
頭を叩きつける。「…………」
ななかが、顔をあげる気配がした。
背を向けたまま、しゃべりだす。
「……あんた、さ……」
「なんだ?」ななかの反応があった事に、恭平は勢いづいた。
しかし、ななかは恭平の質問に、応えなかった。
「……あんた、お姉さまの、なんなの?」
「……なに?」とまどう恭平の前で、ななかが立ち上がった。
振り向いて、目だけで見下ろす。
手を組んだ。
「……あんた、お姉さまの何?
恋人?
セックスフレンド?
幼なじみ?
ただの知り合い?」
「…………」沈黙する恭平の前で、ななかは声を荒げた。
「答えなさいよっ!」「お……幼なじみ……だと、思う」
「幼なじみ? はっ、ただの幼なじみが、お姉さまに、あんなこと、するの?」
「…………」
「毎日毎日……
毎日毎日……
毎日まいにちぃぃぃぃっ!!!」ななかは恭平の胸ぐらを掴みあげた。
「あんた、やることやっといて、
恋人じゃありませんとか言っちゃって、
そんで、お姉さまに戦闘させといて、
困っちゃったら、今度はあたしにお願い?」
ななかは恭平を突き飛ばした。
恭平は、積み上げたOA机の間に激突した。
呻く恭平に、ななかが近づいた。
胸ぐらを掴みあげ、耳をのぞき込むようにして叫ぶ。
「馬鹿にするんじゃないわよ!」
「……ぐ」「ただの幼なじみならねぇっ!
お姉さまにあんな事、しないでよぉっ!
好きじゃないなら、SEXなんか、やめてよぉっ!」
「…………」「そうよね。
あんた、ただのスケベだもんね。
地球を守るとかなんとか言って、都合良くお姉さまを利用してるだけなんでしょ」
「…………」「気持ちいいんでしょ?
それだけなんでしょ?
でもね……それで、お姉さまの気持ちまで、縛らないでよぉっ!
この卑怯者! 玉ナシ! ヒモ野郎!」
「…………」「なによその目は」
「…………」
「言い返せるもんなら、言い返してみなさいよ」
「…………」
「ほら、言い返せないでしょ。
ホントの事だもんね。
図星だもんね。
あんた、男の屑だもんね
女ひとり、守れないモンね。
はっ、守る気もないか」
「…………」「あたしは違うわ。
あたしなら、お姉さまを守ってあげられる。
あんたとは違う。
お姉さまを大事にする。
あたしが……あたしが、恭平だったらさあ!!!」
ぱん。
ななかの頬が鳴った。「……恭へ…」
「お前には、頼まない」
恭平がでていったドアを、ななかは呆然と見つめた。
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