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第五章

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 TVに、MHKのニュースが映っている。
 
 そこには、3頭の馬に引きずられるエスカレイヤーが、映っていた。
 時折、地面の凹凸によってバウンドする。
 
 強靱なはずの戦闘服は、すでにあちこちすり切れ、そこから見えるバイオボディの皮膚も、真っ赤になっていた。

 時折、警察や自衛隊が発砲するが、軽く蹴散らされ、死傷者だけが増えていく。
 
 ニュースキャスターが、絶望的な解説をしていた。
 
 
 そのTVの前で、恭平が土下座をしていた。
 床に、頭をこすりつけていた。
 
「たのむ」

 恭平は、腹から声を絞り出した。
 
「一生のお願いだ」

 ごん、と頭を叩きつける。
 
「沙由香を助けてくれ」
「…………」


 恭平が頭を下げた先には、竜胆色の戦闘服をまとった少女がいた。
 恭平に背を向け、膝を両手で抱え、その上に顔を伏せている。
 
 ここは駅からほど近い、廃ビルの一室。
 
 ななかの居場所を発見したのは、マドカだった。
 マドカは偶然を装っていたが、内緒で発信器をつけていたのではないかと、恭平は疑っている。
 もしそうなら、ななかを探し出してから、沙由香を出撃させるべきだったと、恭平は後悔の念に身を焼いた。
 
 しかし、今は、どうでもいい。と、恭平は考えた。
 
 ななかに出撃してもらう事。それだけが頼みの綱だった。
 恭平は、生まれて初めて、土下座した。
 

「頼む。
 何でもする。
 どんな事でもやる。
 とにかく、今は沙由香を助けてくれ」
 
 頭を叩きつける。

「…………」

 ななかが、顔をあげる気配がした。
 背を向けたまま、しゃべりだす。
 
「……あんた、さ……」
「なんだ?」

 ななかの反応があった事に、恭平は勢いづいた。
 しかし、ななかは恭平の質問に、応えなかった。
 
「……あんた、お姉さまの、なんなの?」
「……なに?」

 とまどう恭平の前で、ななかが立ち上がった。
 振り向いて、目だけで見下ろす。
 手を組んだ。
 
「……あんた、お姉さまの何?
 恋人?
 セックスフレンド?
 幼なじみ?
 ただの知り合い?」
 
「…………」

 沈黙する恭平の前で、ななかは声を荒げた。
 
「答えなさいよっ!」

「お……幼なじみ……だと、思う」

「幼なじみ? はっ、ただの幼なじみが、お姉さまに、あんなこと、するの?」

「…………」

「毎日毎日……
 毎日毎日……
 毎日まいにちぃぃぃぃっ!!!」

 ななかは恭平の胸ぐらを掴みあげた。

「あんた、やることやっといて、
 恋人じゃありませんとか言っちゃって、
 そんで、お姉さまに戦闘させといて、
 困っちゃったら、今度はあたしにお願い?」
 
 ななかは恭平を突き飛ばした。
 恭平は、積み上げたOA机の間に激突した。
 呻く恭平に、ななかが近づいた。
 胸ぐらを掴みあげ、耳をのぞき込むようにして叫ぶ。

 
「馬鹿にするんじゃないわよ!」
 
「……ぐ」

「ただの幼なじみならねぇっ!
 お姉さまにあんな事、しないでよぉっ!
 好きじゃないなら、SEXなんか、やめてよぉっ!」
 
「…………」

「そうよね。
 あんた、ただのスケベだもんね。
 地球を守るとかなんとか言って、都合良くお姉さまを利用してるだけなんでしょ」
 
「…………」

「気持ちいいんでしょ?
 それだけなんでしょ?
 でもね……それで、お姉さまの気持ちまで、縛らないでよぉっ!
 この卑怯者! 玉ナシ! ヒモ野郎!」
 
「…………」

「なによその目は」

「…………」

「言い返せるもんなら、言い返してみなさいよ」

「…………」

「ほら、言い返せないでしょ。
 ホントの事だもんね。
 図星だもんね。
 あんた、男の屑だもんね
 女ひとり、守れないモンね。
 はっ、守る気もないか」
 
「…………」

「あたしは違うわ。
 あたしなら、お姉さまを守ってあげられる。
 あんたとは違う。
 お姉さまを大事にする。
 あたしが……あたしが、恭平だったらさあ!!!」


 
  ぱん。
 
 
 
 ななかの頬が鳴った。

「……恭へ…」

「お前には、頼まない」 

 恭平がでていったドアを、ななかは呆然と見つめた。


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