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「待ちなさい!」血と炎の中で、エスカレイヤーは叫んだ。
「ライダーフラスト、それ以上の狼藉は、このエスカレイヤーが許しません!」振り向いたフラストの目が、細められた。
「お前がエスカレイヤーか?
なるほど、小娘だな」
フラストは侮るように、馬の上でテンガロンハットをくるくると回した。
エスカレイヤーは、かっ、として叫んだ。
「小娘と侮ると、痛い目を見ますよっ!」フラストは取り合わず、無造作に銃を撃った。
弾は、報道用のヘリに命中し、爆発した。「えっ?!」
ヘリはそのまま、閂病院に墜落し、爆発炎上した。
目の前で病院が燃えていく。
エスカレイヤーの顔が、蒼白になった。
「なんてことを……」
「へっへっへ」ライダーフラストは、いやらしく笑った。
「おめぇが、いけねぇんだぜ」
「なんですって?」「あのイガロを倒したってぇから、
俺は、期待してたんだぜぇ。
それが、でてきたのはよわっちい小娘だ。
がっかりしたぜ。
俺が八つ当たりしたくなるのも、無理はねぇよなぁ」
「なっ……」「俺のせいじゃねぇぜ。
俺をがっかりさせた、おめぇが悪ぃんだ。
あそこで死んでいくのは、ぜぇんぶ、おめぇの犠牲者よ」フラストは燃える病院を指さした。
エスカレイヤーの手が、ぶるぶると震えた。「言わせておけば……っ」
エスカレイヤーは、パルシオンを抜いた。
「コール・パルセイバー!」ビームソードを振りかざし、馬上のライダーフラストに突進する。
「あなたは、許しません!」
「……青いねぇ」
「えっ?」疑問に思う間もなく、エスカレイヤーの左足に、何かが絡みついた。
「きゃああっ!」
突進した勢いそのままに、バランスを崩したエスカレイヤーは、地面に倒れた。
衝撃で、パルシオンが転がる。
「パ、パルシオンが……」朦朧とする頭を振って、エスカレイヤーはパルシオンに手を伸ばした。
その時、銃声が響く。ドキューン!
素早く銃を抜いたフラストが、パルシオンを跳ねとばした。
少し離れた場所に、パルシオンが転がる。「くっ!」
エスカレイヤーは唇を噛み、パルシオンを追おうとした。
その手に、ロープが絡みつく。
「えっ?」左足に続いて、右腕をも拘束されたエスカレイヤーは、慌てて周囲を見回した。
2本のロープは、赤い空間から伸びていた。
その空間から、騎馬の影が2つ、あらわれた。
「イ……イデアの壁に潜んで……」罠にかかった事を悟ったエスカレイヤーは、悔しげに歯がみした。
正義のヒロインを囲んだ三角形の頂点で、怪人達は不気味にわらった。
エスカレイヤーは、弱気を吹き飛ばそうとするかのように、声を張り上げた。
「なっ……なにがおかしいんですっ!
笑ってないで、名乗ったらどうですかっ!」
「おぅ、こりゃ、悪かったな」強がりを見透かしたかのように、おどけた口調で応えると、正面の怪人が、ホルスターに銃を落としこんだ。
2メートルを越す、雄大な体格の怪人は、よく見ると片目がつぶれていた。
残った眼が、嘲弄で揺れている。「俺はライダーフラスト長兄、廃棄コード ε−1(イプシロン=ワン)」
続いて左足を拘束している怪人が名乗りをあげる。
均整のとれた中肉中背の怪人は、エスカレイヤーに一礼した。
あげた顔の中で、細い目が冷酷な光を放った。
「私はライダーフラスト次兄。廃棄コード λ−2(ラムダ=トゥ)」焦りの顔を隠せないエスカレイヤーが、いきなり倒れた。
左足のロープが、最後の怪人に引かれたのだった。「きゃあっ」
再び土を舐めたエスカレイヤーに、怒声が浴びせられる。
「なにぼやぼやしてんだよっ!
あたしを無視すんなっ!!」
衝撃にかすむ目で、エスカレイヤーは馬上の影を見上げた。
三体目の怪人は、エスカレイヤーと同程度の体格だったが、アンバランスなほど巨大な胸を突きだしていた。その頂点が、ぷくりと戦闘服を盛り上げている。
「あたしは、ライダーフラスト末妹。廃棄コード π−3(パイ=スリー)」
テンガロンハットをぐい、とあげた下には、猫目がつり上がっていた。
「くっ……フ、フラストが……3体……」エスカレイヤーは立ち上がろうとした。
手をパルシオンの方へ伸ばす。
「おっと、そうはいかねえ」イプシロンが、素早く投げ縄を投じた。ロープが生き物のように、エスカレイヤーの右足に絡みつく。
エスカレイヤーは、三度、ぶざまに転倒した。
イプシロンとパイが、視線を交差させる。
「やるぞっ、パイっ!」
「わかってるっ」
にやりと笑った二人は、いきなり反対方向へと馬を走らせた。
勢いよくロープが引っ張られる。「きゃあああああああああっ!」
エスカレイヤーは、勢いよく地面から引っこ抜かれた。
両足首を拘束していたロープが、地上数メートルの高さで、ぴん、と張った。
エスカレイヤーの躰が、逆さになり、両足が地面と平行に広げられる。
Tの字を躰で描いたヒロインの、股間の関節が、ごきり、と鳴った。「あうううううううぅぅぅぅぅっ!」
激痛にもだえるエスカレイヤーは、それでもパルシオンの方へ手を伸ばす。
「おっと、そうはいきません」ラムダがエスカレイヤーの右手を拘束するロープを、無慈悲にぐい、と引いた。
エスカレイヤーの右手は背後を通って、逆に左後方へ引っ張られる。
東西に、ぴんと固定された下半身の下で、上半身が、無理矢理、左後方へねじられる。
全身の骨が、きしみをあげた。
「ああああああああああああっ!」遠くなったパルシオンを絶望の瞳で見据え、エスカレイヤーは全身の痛みに身もだえた。
空中で、奇怪な体位をとるエスカレイヤーに、イプシロンがげらげら笑いながら聞いた。
「いい格好だな、エスカレイヤー!
私の負けです、イプシロン様。って言ったら
楽に殺してやってもいいぜぇ」
エスカレイヤーの丸い尻を眺めながら、3人のフラストは一斉に笑った。
苦しい息の下で、エスカレイヤーは声を絞り出した。
「だ……誰が……言うものです……か」反抗的な言葉に、三人の顔色が変わる。
パイが叫んだ。「気に入らないっ。弱いくせに生意気だよ、こいつ!」
ラムダが長兄に提案した。
「兄上、この娘、口の利き方を知らんようですね。
殺す前に、教育する必要があるのでは?」
イプシロンが大きくうなずいた。
「おう。女の生意気なのも、程度があるぜ。
こんなかわいげのない女、このまま殺したら地獄でもてあますってもんだぜ。
しつけって、奴をしとかないと、先に逝かせた奴が迷惑するってもんだ」
『……くっ』
勝手な事を言うフラストを後目に、エスカレイヤーは最後の力を振り絞り、少しずつパルシオンに手を伸ばしていた。あと20センチ……
……10センチ…………5センチ……
……3センチ……
三人が、気づいた。
同時に、叫んだ。
「「「エレクトリック・シューッ」」」3本のロープから、強烈な電撃が放たれた。
「ぎゃあああああああああああああああああっっっ!!!!」
逆さになったエスカレイヤーは、Tの字を描いたまま、奇怪なダンスを踊った。
やがて電撃が収まると、ロープが緩み、エスカレイヤーは肩から地面に落下した。
ごすっ。
「…………ぅ……」呻き声をあげるエスカレイヤーの手足が、再度引っ張られた。
「……ぇ?」
ひひーーーーーん!
三頭の馬が同時にいななき、閂市の駅前通りと爆走し始めた。
「さあ、市内を一周してやるぜぃ」「きゃあああああああああっ!!」
エスカレイヤーはそのまま、アスファルトの上を引きずられた。
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