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第九章

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 「よくもお姉さまをこんな目に会わせてくれたわね!
  楽には殺さないから、覚悟しなさい!」

 ななかはびしいっと、レイミアを指さした。

 「ふん……
  誰かと思えば、裏切り者のFM77か。
  負け犬に用はない。
  見逃してやるから、さっさと失せろ」
 
 馬鹿にしたようなレイミアのセリフに、ななかが憤激した。
 
 「フラストのくせに言ったわね!
  はい決定。
  あんた、ギロチンの刑ね
  よかったわね。
  それ以上、ブスな顔、さらさないですむわよ」
 
 「言わせておけば!
  フーマンども、やれ!!」

 レイミアの命令で、サーフボード上のフーマン達が、おっとり刀で飛び出した。
 ななかの目が光る。
 
 年配のフーマンが、びくっと止まった。
 突撃する若いフーマンを止めようとする。
 
 「ぶぶぶっ、ぶぶぶぶーーーーっ」(やめろ、無闇に突撃するんじゃない)

 しかしその忠告は、遅かった。
 
 素早く宙を飛んだななかは、フーマンが突き出す水中銃を簡単にかわすと、低い位置から右の手甲を突きだした。
 
 ざくっ!!!
 
 手甲の爪が、フーマンの背から突きだしていた。
 腕を引き戻すと、フーマンの死体が、サーフボードに倒れた。

 「……ふっ」

 スローモーションのように、ななかが立ち上がる。
 灰色の髪に隠れた顔のなかで、形のよい唇が、にやりと笑った。
 
 「ぶぶぶっ、ぶぶぶぶぶぶぶーーーーーーっ」(ヤツだ、ヤツが還ってきたんだ)

 恐慌に陥ったフーマンの集団に、ななかは襲いかかった。
 大根でも切るように、次々とフーマンが倒れ、爆発する。
 
 瞬く間に、フーマンは全滅した。
 

 「次は、あんたの番よっ! ぶす!!」 

 勝ち誇るななか。
 しかし冷笑を浮かべて、レイミアは気絶した恭平を指さした。
 
 「この人間がどうなってもいいのか?」

 ななかは目を剥いた。

 『恭平? あの馬鹿っ』

 舌打ちするななかに、逆転の喜悦に満ちたレイミアの声が浴びせられる。
 
 「この人間を死なせたくなくば、動かないことだな」
 「なによ、そいつが死ぬ前に、あんたを倒せばいいんでしょ!!」
 「ななかちゃん!」

 ななかの強がりに、慌てて口を挟むエスカレイヤー。
 ななかは歯がみした。
 
 「くぅっ!」

 レイミアは哄笑した。
 
 「ふっ、ふふっ……ふはははははっ……
  いきなり出てきて、手も足も出ずか。
  無様だな、エスカレイヤー2号とやら」

 「くっ、人質さえいなきゃ、あんたなんか……」

 「いいぞ。こういう場合、地球ではぴったりの言葉があったな。
  『負け犬の遠吠え』だったな。」

 「くっ、くっそぉぉぉぉぉぉ!!」

 叫ぶななかに4匹の蛇が迫った。

 「動くなよ!
  サーペント・ファング!」
 
 「きゃああああああっ!」

 手首足首をがっぷりと噛まれ、宙に持ち上げられたななかは、沙由香の横にならんだ。
 
 「いいざまだな、二人とも」
 
 歯がみする二人の前で、レイミアが高笑いした。
 
 ななかが泣きそうな顔で、沙由香に謝った。

 「ごめんなさい、お姉さま」
 「しかたないよ。今は少しでも…」
 「あいつにスキができれば……」

 レイミアは高笑いをやめると、宙の二人を指さした。
 
 「喰らえ! 必殺! サウザンド・ファング!!!」

 残りの全ての蛇が、顎を広げて二人に襲いかかった。
 
 「「きゃああああああああっ!」」

 腕に、脚に、胸に、腹に、腰に。
 身動き出来ない二人に向かい、無数の蛇が群がった。
 強靱な戦闘服を噛み破り、二人の肉を少しずつ奪い、神経毒を注入してゆく。

 「あうっ!……いたっ!……きゃあっ!」
 
 時間差をおいて体のあちこちで発生する激痛に、二人は体をくねらせて耐えるしかなかった。
 やがて悲鳴が途絶え、肉に牙を突き立てる音だけが響いてくる。
 
 「…………」
 
 唐突に、蛇が引き始めた。
 その後には、全裸に近い状態で血まみれになっている少女が二人、宙に浮かんでいた。
 血が肌を伝い落ち、毒を注入された筋肉が、弱々しく痙攣する。

 「…………」

 雨が降り始めた。
 夏の天候は急激に悪化し、二人のヒロインを濡らし、体温を奪ってゆく。
 しかし、少女達は身動きすらしなかった。
 筋肉の痙攣さえも、徐々に消えていく。

 動きが、止まった。
 

 レイミアがひときわ高く笑った。
 
 「ふふふ………ふはははははっ……はあっはっはっは!!!」

 稲光が奔った。
 その中で、レイミアの酔ったような目が、宙の二人を見つめる。
 
 ダイラストの悲願。
 人類の守り手たる、エスカレイヤーの打倒が達成されたのだ。
 地球の命運は、尽きた。

 落雷の轟音が鳴り響いた。
 瞬間的に無音と化したその場所で、レイミアの声だけが響いた。

 「わたしが……このレイミアフラストが……
  エスカレイヤーを倒したのだ!!!」


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