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「ぷはぁっ!」海上に顔を浮かべたエスカレイヤーは、きょろきょろと左右を見回した。
「どこですっ、レイミアフラスト!!
正々堂々、勝負しなさい!!」
声を張り上げるエスカレイヤーに、レイミアの含み笑いが響いた。
「馬鹿だねえ。
水中戦に特化した私に、海で勝てると思うのかい?」
言葉と共に、水面に無数の影が出現する。
エスカレイヤーを取り巻くように出現したそれは、大小さまざまな蛇の頭だった。
両眼が紅く光るそれらは、ただの蛇でないことが明らかだった。
エスカレイヤーは、身を震わせた。
「こ、こんなに……蛇がいるなんて」「それだけじゃないよ!」
勝ち誇ったようなレイミアフラストの声とともに、海岸の岩陰から、海に浮かぶボートの中から、ウィンドサーフィンの帆のかげから、大勢のフーマンが現れた。
全員、水中眼鏡に銛、水中銃と、水中戦用の装備をしていた。
「え?」驚くエスカレイヤー。
その目の前で、蛇の一部が左右に割れた。
空いた海面から、気絶した恭平を抱いたレイミア本体が現れた。
海中から突き出た岩に、腰掛ける。
下半身は無数の蛇に分岐して、海中へと消えていた。
レイミアは高笑いを放った。
「罠にかかったねエスカレイヤー!
ここがお前の墓場だよ!!」
声と共に、エスカレイヤーの足首に、何かが噛みついた!「きゃあっ!」
そのままエスカレイヤーは水中に引きずりこまれた。
「げぷっ」予想していなかった攻撃に、エスカレイヤーは水を飲んでむせた。
ゆっくりと目が水中の暗さに慣れていく。『あれは?!』
エスカレイヤーは見た。
自分の足首に、巨大な蛇が噛みついているのを。
暗い水中に、大きな赤い目が光っているのを。
その向こうに、さらに無数の目が待ちかまえているのを。
『いやああああっ!!』エスカレイヤーは錯乱しながらも、腰のパルシオンを抜いた。
『コール・パルセイバー!』剣形態のパルシオンで、足首の大蛇に斬りかかる。
しかし水中では、パルシオンの威力は半減していた。
大蛇は傷一つ、ついてはいなかった。
「なんだい、水中戦用の装備もなしに、海に飛び込んだのかい?
馬鹿だねぇ」
水中でも通常通り聞こえるレイミアの嘲笑に、エスカレイヤーは、かっ、と顔を紅くした。
パルセイバーをめちゃめちゃに振り回し、脚をじたばたさせる。
幸運にも、大蛇の目にかかとがヒットした。
たまらず口をあけた大蛇を、更に蹴り飛ばし、エスカレイヤーは海面に顔を出した。
ぜいぜいと空気を補給する。
「逃げるだけで、ずいぶんと疲れているようじゃないか」はっ、と顔をあげた向こうで、レイミアが余裕の笑みを浮かべていた。
「でも、状況は……
変わっていないんだよ」
真っ赤な唇を歪め、レイミアは鋭い牙をのぞかせた。
「ジェット・ストリーム・ファング!!!」レイミアの叫びとともに、水面下で無数の蛇が攻撃を開始した。
「きゃああああああああっ!!!」
大小、さまざまな蛇が、水中でエスカレイヤーに牙を剥く。
「いたっ!」肩を、腕を……
「あうっ!」
胸を、腹を……
「きゃああっ!!」尻を、脚を……
視界の効かない水中からの攻撃に、エスカレイヤーは無様に逃げまどうしかなかった。
ゆっくりと服が、皮膚が、肉が、食いちぎられてゆく。
エスカレイヤーの周囲の水が、赤く濁り始めた。
「ああっ……」絶望の声をあげたエスカレイヤーに、レイミアの悦に入った声が浴びせられた。
「そう……わかったようだね、エスカレイヤー。
お前に逃げ場は、ないんだよ。
あはっ……あはははははっ!!」
笑い声と共に、エスカレイヤーがびくん、と仰け反った。
全身に噛みついた蛇の牙から、なにかがエスカレイヤーの体内に染みこんできた。
「あぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!」
エスカレイヤーは激痛と快感に仰け反った。
「どうだい、ダイラスト特製の神経毒の味は……」ぴくぴくと痙攣するエスカレイヤーに、レイミアは説明した。
「苦しいだろうねぇ。
でも、死にはしない。
仲間の仇だ。
お前は、楽には殺さないよ
まずは、死ぬほどの屈辱を、味わってもらおうか」
レイミアの目が光る。「サーペント・ファング!」
四匹の大蛇が、エスカレイヤーを襲った。
動くことも出来ないエスカレイヤーの腕に、二匹の大蛇が牙を突き立てる。
「あうっ!!」それとほとんど同時に、それぞれの脚に二匹の大蛇が巻き付き、ふくらはぎに牙を埋め込んだ。
「ぎゃあっ!!」そのまま四肢を拘束し、レイミアはエスカレイヤーを海上に持ち上げた。
既に水中で、全身くまなく噛まれている。
あちこち破れた戦闘服をまとった、半裸の女体が、真夏の太陽の下に引きずり出される。
「いやあああああああああっ!!!」凧上げのように宙に浮かび、なすすべもないエスカレイヤーに向けて、レイミアの嘲笑が浴びせられた。
「いい格好だね、エスカレイヤー。
でも、これで終わりじゃないよ。
死にたいと思うほど……いたぶってあげる」
レイミアは舌なめずりした。
「喰らえ! サウザンド・ファング!!!」海面に、次々と水柱が出現した。
無数の小さな蛇が出現し、牙をきらめかせて、エスカレイヤーに迫った。
「いやっ!!」エスカレイヤーは目を閉じ、攻撃に耐えようと体を緊張させた。
数秒。
……攻撃は来なかった。
『……どうして?』おそるおそる目を開いたエスカレイヤーは、そこに竜胆色の戦闘服が翻るのを見た。
二つに分けた灰色の髪が、潮風にたなびいている。
左手で大蛇の頭を簡単に握りつぶすと、彼女は振り向いてウィンクした。「ななかちゃん!」
ななかはこぶしを握り、親指をびっと突きだした。
「お待たせ、お姉さま!」攻撃が途絶えていた。
エスカレイヤーの前に浮かんだななかが、両の手甲で全ての蛇をたたき潰したのだった。
ななかは宙に浮かぶ沙由香を守るように空中で停止すると、片手をかざしてポーズを決めた。
「エスカレイヤー2号、悪の現場にただいま参上!」
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