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第六章

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 『ちょっとマドカ、いったいどういうこと?』

 沙由香のクレームに、マドカは即答できなかった。
 ここは水着コンテスト控え室。
 沙由香は、審査員席のマドカと体内無線で連絡をとっていた。
  
 その目の前で、他の出場者達と恭平が談笑している。  
  
 『……恭平さんは、何をしてるんですか?』
 『知らないっ』
 
 恭平が控え室に現れたのは、ワンピース審査が終わり、ビキニ審査が始まるまでの休み時間だった。
 このコンテストは、伝統的にワンピース、ビキニ、フリースタイルの3種目を競う。
 控え室は、露出度の高いビキニの女性があふれていた。

 クーラーは効いていたが、女性の体臭でむせ返るようだった。
 その中心に恭平がいた。
  
 普通なら、審査員が入れるところではなかった。
 しかし、マドカの工作のせいか、なぜか恭平は見とがめられることもなく侵入できた。 そして、沙由香の目の前で女性達と談笑を始めたのだった。
 アイドル志望の出場者は、思いがけなく現れたこのチャンスに飛びついた。 
 
 「ねえ、今、誰がトップなの……」
 「それを言うわけには、いかないね……」
 「ああん、いじわるぅ」

 審査員を籠絡しようと、アイドル予備軍の女性は、集団で恭平を取り囲んだ。
 嬌声をあげながら、恭平の体に触れてくる。
 恭平は周囲を見回した。
 
 色とりどりの布につつまれたふくらみが、前後左右で揺れている。
 
 乳、乳、乳、乳、ちち……
 
 恭平は、火であぶったチーズのように、でろりと溶けていた。

 「いやあ、甲乙つけがたいねえ」
 「そんな事言って、もう誰にするか、決めてるんでしょう?」

 赤のビキニが、恭平の肩にしなだれかかった。
 恭平の肩の上で、球体が変形する感触。
 
 『おおお〜〜』
 
 鼻の穴をふくらました恭平を見て、沙由香の歯が、きりきりと鳴った。
 恭平は気づかないかのように、女性との会話を楽しんだ。

 「ね、例えば、アタシなんてどう?」
 「オレは、いち審査員に過ぎないからね……」
 「謙遜しちゃって、このぉ……」

 背後から、ピンクの布に包まれたふくらみが、恭平の後頭部におし当てられる。
 沙由香の手が、持っていたコーラの缶を握りつぶした。
 しゅわしゅわと、炭酸が沙由香の手を濡らした。 

 「あら、いち審査員さんは、どんな女の子が好みなの?」
 「そうだな、胸の形が……」
 「こんなのはどう?」

 女性の一人が、いきなり恭平の手を掴んだ。
 そのまま、黒のビキニに包まれたふくらみにおし当てる。

 「ちょっ!」

 沙由香が立ち上がろうとするのを、マドカの声が止める。
 
 『沙由香さん、やめてください』
 『でも……』
 『沙由香さんと恭平さんが、知り合いと気づかれてはマズイです』

 動きを止めた沙由香の様子に、事情を察したのか、恭平がにんまりと笑った。
 沙由香にむかって舌を突きだす。
 
 「…………っ!!!」

 沙由香の頬が紅潮した。
 文字通り、切歯扼腕する沙由香の前で、調子に乗った恭平は、手をにぎにぎさせた。
 黒い布につつまれた白い球体が、指の形に変形し、戻る。
 
 「あんっ!」

 尖った乳首をなでながら、恭平は感想を言った。
 
 「なかなか、張りのある、いいおっぱいだ。
  そういえばこのおっぱいを、みんな誉めていたよ。
  もうちょっと前屈みになってくれないかなってね。」
 
 恭平は適当な事を言いながら、更に大胆に揉みしだいた。
 
 「あぁ、やっぱりおっぱいは女性の優しさの象徴だね。
  どこかの意地悪な根暗女の、たれる寸前のとは大違いだ」
 
 びびびびびびびびび。
 
 沙由香の椅子のあたりで、合成皮革を引きむしるような音がした。
 沙由香の頭の中で、マドカの声が響く。
 
 『沙由香さん、気持ちはわかりますがもう少し抑え……』
 『わかってる!』

 マドカを一喝すると、沙由香は目を血走らせて恭平を睨んだ。
 その視線の先で恭平は、沙由香とは異なる乳房の感触を、じっくりねっとり楽しんでいた。
 いつまでも手を離そうとしない。
 
 『恭ちゃん!』

 レーザーのような沙由香の視線が飛ぶ。
 しかしバイオボディの目に、レーザーは装備されていなかった。
 恨みがましい目が、恭平を見つめる。
 恭平は、気づかないふりをした。

 恭平の別の手を、黒ビキニの女性がヒップに導いた。

 「ここは……どう?」
 「いいねぇ」 

 恭平は大胆になでながら言った。
 それだけではなく、水着と肌の境目につつっと指先を這わしてみる。
 
 「あっ……えっちぃ」
 「だっはっは」
 「……えっちな悪い人は、おしおきよっ」

 手の甲を軽くつねられて、恭平は上機嫌に笑った。
 懲りずに再び尻を撫でまくる。

 「お姉さん、いいお尻してるね。
  きゅっと締まって、形もいい。
  上位に入るのは間違いないよ。
  どこかの暴力的な妄想女の、でかくて不格好なのとは大違いだ」
 
 きぃぃぃぃぃぃぃぃ。
 
 沙由香の椅子のあたりで、まるで合成皮革の下の板を、むりやり爪で引っ掻いたような音が響いた。

 『沙由……』
 『うるさいわねっ!!』

 脳内でマドカに絶叫すると、沙由香は立ち上がった。


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