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「次は、エントリーナンバー12番、高円寺沙由香さんです」
アナウンスと共に、水着姿の沙由香が舞台の中央へと進み出た。
ライトグリーンのワンピースは、沙由香の成熟した肉体を、余すところ無く浮き彫りにしていた。
会場から無数の歓声と口笛が鳴り響く。
沙由香は恥じらうように胸の前で手を組み、顔を赤らめて俯いた。
その仕草に、更に歓声が大きくなる。
「どうやら沙由香さんは一番人気のようですね」
審査員席でマドカが隣の席にささやいた。
隣で恭平は、不機嫌そうに唸った。
ここは閂ビーチの水着コンテスト会場。
芸能プロダクションが協賛するこのコンテストは、過去に有名芸能人を生み出した実績がある。
そのため、アイドルを目指す女性の参加が多く、毎年盛況であった。
そのコンテストに、沙由香は出場者として。恭平とマドカは審査員として潜り込んでいた。
恭平はオーソドックスなトランクス型の水着にパーカー。
マドカは胸と腰にフリルのついたワンピース。
なぜか浮き輪も装備していた。思い切り怪しかったが、マドカの工作は完璧らしく、誰もクレームをつけなかった。
水着コンテストの審査員になれると知った恭平は、最初こそ喜んでいたものの、出場者のリストに沙由香の名前を見つけた時から、不機嫌に沈黙していた。
「……なにを怒っているのですか?」
「なんでもねぇよ」
「沙由香さんの人気はダントツといっていいでしょう」
「大したことねえよ」
「……恭平さん」
マドカは下から覗き込むように尋ねた。
「……嫉妬してらっしゃるのですか?」
「なっ!」
大声を上げた恭平に、他の審査員が怪訝な目を向ける。
恭平はこそこそとマドカに反論した。
「なんでオレが」
「……今まで自分が独占していた女性が、他の男性からスケベな視線を浴びている……
それで、恭平さんは、平気なのですか?」マドカの口調は、恭平をそそのかすようだった。
ちらりと恭平に流し目を送り、絶句する恭平に、更に語りかける。「ほら、他の審査員のいやらしい目を見てください。
明らかに沙由香さんを視姦しています。」
「…………」
審査員の目は、沙由香の豊満な乳房を、股間の陰翳を、大きめの尻を、水着に浮き出るへその跡を、なめ回すように見ていた。「…………」
それに気づきもせず、沙由香はセクハラ寸前、いやセクハラそのものの質問に恥じらいながらも答えている。
にやけた司会者が、沙由香に何か話しかけた。
「あの野郎……」恭平の目に、司会者は必要以上に沙由香に近づいているように見えた。
何かの冗談を聞かされたのか、沙由香がころころと笑った。
「……危なっかしくて見てられん」
「でも、楽しそうですよ?」
「……司会者にくっつき過ぎじゃないか?」
「あのくらい、普通です」不意に、カメラ小僧のストロボが、連続して発光する。
沙由香が軽く悲鳴をあげ、あわてて体の向きを変えた。
胸の双丘が弾み、先端がWの軌跡を描いた。
反対側から別のストロボが発光する。
「今、撮られた写真は、高値がつくでしょうね」
「…………」
「投稿雑誌に載せられれば、オカズにする男性はおそらく万を越え……」
「かーーーっ!」
恭平は小声で叫んだ。
マドカに向かって詰問する。
「これはなにか? 朝の仕返しなのか?」
「なんの事を言ってらっしゃるのか、わたしにはさっぱり……」
「とぼけるな!」
「しかし、これを機会に、沙由香さんにも新しい出会いが……」
「人の話を聞け!」
「きっと、恭平さんと違って、浮気なんかしない、誠実で素晴らしい男性が……」
「くぅーーーっ!」
恭平は頭をかきむしった。
本人は、絶対に認めていないが、恭平は明らかに嫉妬に苦しんでいた。
マドカは恭平に見えないように、無表情にべーっと舌を出した。
それが、作戦成功のサインだった。沙由香がいかに素晴らしく、魅力ある女性であるか。
そして、世の男性の注目を浴びる存在であるか。
それを、恭平に再認識させる作戦は大成功といってよかった。
マドカがあおったせいで、恭平の危機意識は、これ以上ないほど高まった筈だった。
これで、恭平は沙由香に優しく接するに違いなかった。
沙由香の不安も解消されるだろう。
ステージの沙由香はマドカの合図を確認すると、観客と審査員に満面の笑顔を披露して、控え室へ戻っていった。
「……ふ、ふふふ」
不意に、恭平が不気味に笑った。何事かと見守るマドカの前で、恭平は顔をあげた。
「そうか、沙由香だな? 沙由香の差し金なんだな?」
「……恭平さん?」予想外の反応に、マドカがとまどった声を上げる。
「そうだ。そうに決まってる。……くそっ!」
「……あの、もしもし?」「いいだろうっ!」
恭平は力強く宣言した。
「そっちがその気なら……
あくまでななかの言い分を信じて、ちくちくオレを責めるというのなら……
やむをえん!
やってやる。
ああ、やってやるとも!
沙由香に、本当の浮気がどんなものか、教えてやるっ!」「……は?」
マドカの目が、点になった。恭平は目の中に炎を宿し、魂の叫びを放った。
「あれしきの事で、ねちねちいう妄想爆発の根暗女に、
浮気者のなんたるかを教えてやるっ!
今までのオレがどんなにやさしい、誠実な紳士だったか、
それを見て思い知るがいいっ!
泣いて謝ったって、もう許してやらんからな!」
「…………」
マドカの肩から、スクール水着のひもが、ずるっと滑りおちた。
ぴー
電子音が響いた。
『システムエラーが発生しました』
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