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クロードとユリーシャが塔に幽閉され、数ヶ月が過ぎた… その日、城の様子がおかしかった… 「クロード、城から火の手が…」 「………」 部屋唯一の窓から城のあちこちから煙がもうもうと立ち上っているのが見える。 「クロードこれは?」 「…簡単なことだ、レーベン軍がこの城に攻め入ったのだ」 「えっ!」 驚きの声とともにユリーシャがクロードに振り向く。 「どうしてですか?カルネアは…」 「……前線で戦っている軍は傭兵がそのほとんど…金で雇われている者たち… 愛国心などありはしない、負け戦となれば逃げ出す者も多い」 「それでは…」 「カルネアは…滅亡する」 クロードの言うとおりであった。 軍勢では数倍勝っていたカルネア軍であったが、その軍を指揮するものに雲泥の差があった。グレッグの作戦、指揮は最低のものであった。 それが百戦錬磨のレーベン軍に通じるはずもなく、カルネアは敗戦に敗戦を重ねた。統率の取れていない傭兵たちは烏合の衆に等しかった。 次第に軍から逃げ出す傭兵が増えた。しかし、自分の保身を考えたグレッグは最後までそれをエレーヌに伝えることはなかった… そして、その日は訪れた。 「どうするユリーシャ」 「どうする?」 ユリーシャはクロードの言葉の意味がわからず聞き返した。 「もう、逃げ出すことも叶わんぞ」 「………」 「…安心しろ、お前は仮にもカルネア国の王女…大人しくしておけば手荒なまねはされないだろう」 クロードのトーンはいつものものだが声には優しさがあった。 「クロードは?クロードはどうなるのです?」 「…私は…処刑されるだろう。レーベンを裏切り敵のカルネアについた男だからな。 そうしなければレーベンの民が納得しない」 「そんな…クロード…私にはあなたの……」 ユリーシャの言葉を掻き消すように階段を駆け上がってくる足音が聞こえてきた。 「……きたか」 数秒と経たないうちに扉に衝撃が走り、ドォンと音を立て倒れる。 風圧が部屋に積もった埃を舞い上げるが埃を意に介さず数人の男たちが部屋に入ってきた。 「見つけたぞ」 男の一人が言葉を発する。その声には殺気がありありと含まれていた。 「どこかで見た顔だな」 「貴様の元配下だ」 「そうか…」 「貴様のせいでたくさんの同胞が死んだ」 「そうか…」 「貴様だけは…貴様だけは!この手で殺す!」 「………」 「やめっ…」 ユリーシャがとめるより早く男の剣がクロードの胸を突き刺す。 「ぐっ…」 いやな音を立て剣が引き抜かれると同時にクロードが倒れこむ。 「…クロード?」 何が起こったのかよくわかっていないという顔でユリーシャはクロードに手を伸ばす。 ぬちゃ… クロードに触れたユリーシャの手に生暖かい赤い液体が付着した。 「うそ…いやっ…いや…いやああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 ユリーシャの絶叫が部屋に響き渡った……… 一年後… 「ふぁぁぁぁ…いい天気だな」 塔の出入口に兵士姿の男が立っていた。 「よう、交代だ」 「あれ?もうそんな時間か?」 「おいおい、まさか居眠りしてたのか?」 「まさか!しかし、こう天気がいいとな…」 不意に空を見上げた男の視界に塔の最上階の窓が入る。 「………」 「どうした?急に黙り込んで…」 「いや、ちょっとな…」 「…ああ」 男の視線の先にある窓を見てもう一人が納得した声を出す。 「カルネアの王女か…」 「ああ……」 「…しかしな……自分の子供を…」 塔の最上階で美しい歌声がする。 「〜〜〜♪」 ユリーシャの子守唄、子供を寝かしつけるためだ。 「…ふふっ、眠っちゃった」 ユリーシャは満足そうに微笑む。 「目は私似、口元はクロードかな?この眉の凛々しいところもクロードかな。ねえ、どう思うクロード―――」 麗らかな日差しは塔の狭い窓から部屋に広がり、部屋を暖かく包む。 その部屋でユリーシャが一人幸せそうに微笑んでいる…空の揺り籠揺らしながら……… byうきくじら |