アトラク
アトラク・ナクア前章《お市》


『プロローグ』

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□□□ 3章 □□□

ふと目を覚ますと、再び宿主が落ち着かぬ様子である。
上質の血と気をすすり、疲れも回復していた。
まだ小さな蜘蛛であり、お市の若い身体は何ほども感じていない。


お市の意識をそっとのぞいて見ると、
なかなか面白い事が起こっていた。


信長は大きな賭けに出るつもりだった。
室町幕府末裔の将軍が見つかり、それを足がかりにすれば、
天下統一への道が開ける。しかし、それにはどうしても後一押し、
なにか手を打たねばならない。


不眠に青黒い兄の顔を見るのが、お市はつらかった。
何人もの侍女や家臣が、苛立ちに手打ちにされている。


この戦国で、兄は自分にだけは優しかった。
他の兄弟が女を見下げるような目をする中で、
兄だけは、自分ときちんと話し、愛情を注いでくれた。
父が兄を後継者にしたのは、当然と思う。


『兄様のお苦しみを解いてあげたい・・・』

それが男女の恋慕の情に近いことを、今のお市は知る由も無い。


蜘蛛は密かに笑った。自分にも、お市にも都合が良いではないか。
お市も十分に成長し、女として使える。


『出来るかも知れぬ、自分さえその気になれば。』

蜘蛛がそっとお市の心にささやきかける。
悪魔のような狡猾さで、まるでお市自身が思いついたかのように。

政略結婚は、協力を得るための常套手段である。
お市も戦国の女、そのような申し出があることは覚悟していた。
信長はお気に入りの妹を嫁にやることはひどく嫌っていたが。

『そうだわ、近江の浅井様なら、ご嫡男が未婚という噂を聞いたことがある。』


さすがは信長の妹、蜘蛛のささやきに周囲の勢力を即座に思い浮かべた。
蜘蛛は笑いをこらえるのに苦労した。
『なかなかの鋭さ、面白い女だ。』



「何事だ、市、話とは?」
信長はせっかちな上、自分の甲高い声が嫌いで、あまり長い話はしたがらない。

「兄様、私もそろそろ嫁ぎ先を考えねばなりませぬ。」
信長が急にむっとした顔をする。
お市を愛している兄としては、何となく面白くない。


「近江の浅井家のご嫡男様は、大変な武人で名高いとか。」


その言葉に信長は目を見開いた。
お市の結婚は極めて安全な道を作ることになる。
これこそが最上の一手であった。


大した能も無い部下たちに比べ、妹がこれほどの策を授けてくれたことに、
信長は深く感動した。
だが同時に、これほどの妹を嫁にやらねばならないかと思うと、
信長はたまらなく悲しかった。

思わずお市を抱きしめ、はらはらと涙を流す。

お市は、その涙だけで十分報われたと思った。



だが、実際嫁ぐ日が近づくと、お市は不安になった。

『自分ごときで、浅井長政様をつなぎとめることが出来るだろうか?』

蜘蛛はお市の胎内で密かに笑った。

『ククク・・・心配はいらぬ』

蜘蛛は母蜘蛛の記憶とともに、黒髪の女郎蜘蛛の記憶を受け継いでいた。
男がどうやれば喜ぶかも、よく覚えている。
そろそろ、成長のためには雄の精気も吸わねばならぬ。
そのためには、たくましい武将は好都合だった。


『ふむ、これなれば・・・』

婿の浅井長政は、さほど大柄ではないが、
頑強そうな身体をした、意外に素朴な顔立ちの男だ。
言ってみれば田舎くさいとも言えるが、扱いやすそうである。

頬を染め、白いかぶりものを飾り、輝くような美しさのお市に、
すっかりのぼせ上がっていた。


寝床で野獣のようにのしかかる男に、お市は少しおびえた。

恥じらいが白い肌を染め、美しいふくらみにごつい指が食い込み、
桃色の襞を、割り広げた。

「はう・・・っ!」

一筋の涙がきらめき、お市の頬に光った。
白い肌に破瓜の鮮血が鮮やかに流れる。

興奮しきった男が野獣のように腰を動かす、

「長政様、お市は、お市は壊れてしまいまする・・・。」

「お、おお、すまんすまん、そなたが余りに美しゅうて、
つい狂うてしもうた。」

きつく温かい胎内に、男の陽根がゆっくりと味わうように動く。

喘ぎ、痛みを堪えながら、お市は操られるようにしがみつき、
ゆっくりと腰を蠢かせた。

熱くたくましい陽根が、
妖しいまでの動きに、まきつくように締め上げられた。

たまらず男は呻き、震えた。

『くくく・・・うまい・・・・』

お市の胎内にじんと染み込む熱い精に、蜘蛛は思わず身を震わせた。
首筋の後れ毛の中の痣が、かすかに大きくなる。

お市の白い裸身がのけぞり、爪を食い込ませ、震えていた。