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アトラク・ナクア前章《お市》
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ふと目を覚ますと、再び宿主が落ち着かぬ様子である。 上質の血と気をすすり、疲れも回復していた。 まだ小さな蜘蛛であり、お市の若い身体は何ほども感じていない。 お市の意識をそっとのぞいて見ると、 なかなか面白い事が起こっていた。 信長は大きな賭けに出るつもりだった。 室町幕府末裔の将軍が見つかり、それを足がかりにすれば、 天下統一への道が開ける。しかし、それにはどうしても後一押し、 なにか手を打たねばならない。 不眠に青黒い兄の顔を見るのが、お市はつらかった。 何人もの侍女や家臣が、苛立ちに手打ちにされている。 この戦国で、兄は自分にだけは優しかった。 他の兄弟が女を見下げるような目をする中で、 兄だけは、自分ときちんと話し、愛情を注いでくれた。 父が兄を後継者にしたのは、当然と思う。 『兄様のお苦しみを解いてあげたい・・・』 それが男女の恋慕の情に近いことを、今のお市は知る由も無い。 蜘蛛は密かに笑った。自分にも、お市にも都合が良いではないか。 お市も十分に成長し、女として使える。 『出来るかも知れぬ、自分さえその気になれば。』 蜘蛛がそっとお市の心にささやきかける。 悪魔のような狡猾さで、まるでお市自身が思いついたかのように。 政略結婚は、協力を得るための常套手段である。 お市も戦国の女、そのような申し出があることは覚悟していた。 信長はお気に入りの妹を嫁にやることはひどく嫌っていたが。 『そうだわ、近江の浅井様なら、ご嫡男が未婚という噂を聞いたことがある。』 さすがは信長の妹、蜘蛛のささやきに周囲の勢力を即座に思い浮かべた。 蜘蛛は笑いをこらえるのに苦労した。 『なかなかの鋭さ、面白い女だ。』 「何事だ、市、話とは?」 信長はせっかちな上、自分の甲高い声が嫌いで、あまり長い話はしたがらない。 「兄様、私もそろそろ嫁ぎ先を考えねばなりませぬ。」 信長が急にむっとした顔をする。 お市を愛している兄としては、何となく面白くない。 「近江の浅井家のご嫡男様は、大変な武人で名高いとか。」 その言葉に信長は目を見開いた。 お市の結婚は極めて安全な道を作ることになる。 これこそが最上の一手であった。 大した能も無い部下たちに比べ、妹がこれほどの策を授けてくれたことに、 信長は深く感動した。 だが同時に、これほどの妹を嫁にやらねばならないかと思うと、 信長はたまらなく悲しかった。 思わずお市を抱きしめ、はらはらと涙を流す。 お市は、その涙だけで十分報われたと思った。 だが、実際嫁ぐ日が近づくと、お市は不安になった。 『自分ごときで、浅井長政様をつなぎとめることが出来るだろうか?』 蜘蛛はお市の胎内で密かに笑った。 『ククク・・・心配はいらぬ』 蜘蛛は母蜘蛛の記憶とともに、黒髪の女郎蜘蛛の記憶を受け継いでいた。 男がどうやれば喜ぶかも、よく覚えている。 そろそろ、成長のためには雄の精気も吸わねばならぬ。 そのためには、たくましい武将は好都合だった。 『ふむ、これなれば・・・』 婿の浅井長政は、さほど大柄ではないが、 頑強そうな身体をした、意外に素朴な顔立ちの男だ。 言ってみれば田舎くさいとも言えるが、扱いやすそうである。 頬を染め、白いかぶりものを飾り、輝くような美しさのお市に、 すっかりのぼせ上がっていた。 寝床で野獣のようにのしかかる男に、お市は少しおびえた。 恥じらいが白い肌を染め、美しいふくらみにごつい指が食い込み、 桃色の襞を、割り広げた。 「はう・・・っ!」 一筋の涙がきらめき、お市の頬に光った。 白い肌に破瓜の鮮血が鮮やかに流れる。 興奮しきった男が野獣のように腰を動かす、 「長政様、お市は、お市は壊れてしまいまする・・・。」 「お、おお、すまんすまん、そなたが余りに美しゅうて、 つい狂うてしもうた。」 きつく温かい胎内に、男の陽根がゆっくりと味わうように動く。 喘ぎ、痛みを堪えながら、お市は操られるようにしがみつき、 ゆっくりと腰を蠢かせた。 熱くたくましい陽根が、 妖しいまでの動きに、まきつくように締め上げられた。 たまらず男は呻き、震えた。 『くくく・・・うまい・・・・』 お市の胎内にじんと染み込む熱い精に、蜘蛛は思わず身を震わせた。 首筋の後れ毛の中の痣が、かすかに大きくなる。 お市の白い裸身がのけぞり、爪を食い込ませ、震えていた。 |