【 京夜のドリル日記 】
第2話「君の名は」
著:夕凪

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夜:深海宅(リビングルーム)


「本当に気持ちよさそうに眠ってるわ」
天使のように眠る少女。
京夜が苦労して怪しげな研究所から救い出してきた少女だ。
リビングルームですやすや眠るその少女の寝顔に京夜と結衣は見とれていた。

「しかし、こいつ本当によく眠るな。起きている事とかあるのか?」
「うん、時々寝ぼけたように起きてるよ。それがまた、
かわいいのよねぇ〜

しみじみ語る結衣。なにかメロメロといった感じだ。

「それなら安心だ。寝たままだとチト心配だからな」
ソファに腰掛け、少し気がかりそうに言う京夜。
「大丈夫よ、お兄ちゃん。体が悪いなら、あの子あんな素敵な寝顔な訳ないもの」
京夜の隣に腰掛け、確信したように言う結衣。
「それは、そうだな」
納得しソファから振り向き、その眠り姫に見とれる二人。
そんな、日が続いていた。


「ねえ、お兄ちゃん」
「ん?なんだ?」
あまり二人で眠り姫を見とれていてもキリがないので話題をふる結衣。
「今、”あいつ”とか”あの子”とかで呼んでるけど、私しっくりこないのよね。もう家族みたいな感じじゃない。あの子」
「そりゃ、そうだが」
「だから、私達であの子の仮の名前を付けようよ」
「それは、かまわないが。何かいい名前でもあるのか?」
いかにも前から狙っていたと思われる結衣の提案だ。

「それが、いろいろ考えたんだけど、イマイチあの子にぴったりなのが浮かばなくて.....お兄ちゃん。どう?」
”おいおい、こっちに振るのかい”と思いつつ京夜は考え込む。
「名前か...う〜む。そう考えると名前付けるのも難しいな〜」
「でしょ。だからお兄ちゃんもあの子に合いそうな素敵な名前を考えてよ」


はっきり言って京夜は名前付けには自信がなかった。
子供の頃、飼っていた雌猫に”シャア専用ザクレロ”と名前を付けようとして、結衣にブーブー文句言われた記憶もある。
「素敵...素敵....素敵な名前か〜〜〜?????」
「何かいい名前ないかな〜」
考え込む二人。

その時、
”コ..ト....リ.....コトリ....”
京夜の脳裏に何かが響く。

「ん?結衣。今、お前何か言ったか?」
「何も言ってないわよ」

「今...確か.....ハナコって。
そうだ!花子だよ。山田花子にしよう!
!!?
何それ〜〜??お兄ちゃん。まじめに考えてよ!」

「いいじゃないか。愛嬌があって慕われそうな名前だろ?あいつにぴったりだ。よし!山田花子に決定!

呆れて、こんな提案した事を後悔する結衣。
「やめようよ〜そんな名前。
あの子、
絶対トラウマになるよ

「そんな事ないって、とりあえず山田花子でいいじゃないか。
もう遅いし、俺達も寝るぞ」
「私、絶対イヤだからね。もー」
ブーブー文句を言いながら自分の部屋に戻る結衣。

「じゃあ、花子♪おやすみ」
リビングの電気を消した京夜は、その言葉に眠り姫のこめかみがピクピク反応していたことに気づいていなかった......


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

翌日
夜:深海宅(リビングルーム)

「お兄ちゃん。ベッドの運び込み終わったの?」
リビングルームに戻って来て一息つく京夜に結衣が声をかけた。
「ああ、なんとかな....」
力なさげに返答する京夜。

思えば今朝はひどい状態だった。
結衣がいつまでも起きてこない京夜を不審に思い京夜の部屋を覗いたところ
京夜とベッドがなかった
窓枠ごとベッドと京夜が二階の部屋から外に落ちており、ベットの下敷きで京夜が気絶していたのだ。


「もーびっくりしたわよ。あんな寝相の悪い人見たことないよ」
「そんな事言われても、俺にも訳がわからないんだよ」
”自分がベッドごと外に落ちる程、寝相がわるかったか?
と、いくら考えても解せない京夜。
とりあえず、朝は時間がなかったので、帰ってきてから外に落ちたベッドを分解して自分の部屋に運び、組み直し終えた所だった。

「きっと、あの子に変な名前付けたからバチが当たったのよ」
京夜にコーヒーを出しつつ、結衣は責めるように言った。
「それとこれは関係がないだろ。それに変な名前じゃないぞ」
「とにかく、あの名前はやめて!もっと素敵な名前にしてよ。本当に女の子の気持ちがわからないんだから」
キッパリ!反論は許さぬ感じで断言する結衣。
「わかったよ。別の名前か....う〜〜〜〜ん」
考え込む京夜。

その時、
”コト....リ.....コトリ....コトリ...コトリコトリ”
京夜の脳裏に何かが響く。

「ん?結衣。今、お前何か言ったか?」
「何も言ってないわよ」

「今...確か.....マチャミって。そうだ!マチャミだよ
久本マチャミにしよう!
!!!!!!?

「お兄ちゃん。いい加減にしてよ!

「いいじゃないか。明るくて活発そうな名前だろ?俺はあいつにそんな人気者になってほしい。よし!久本マチャミに決定!

目が点の結衣。
「やめてよ〜そんな名前。
あの子、絶対グレるよ

「そんな事ないって、とりあえずマチャミでいいじゃないか。
もう遅いし、俺達も寝るぞ」
「私、断固反対!だからね。もー」
不満タラタラで自分の部屋に戻る結衣。

「じゃあ、マチャミ♪おやすみ」
リビングの電気を消した京夜は、その言葉に眠り姫の拳がプルプル震えていた事に気づいていなかった......


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

翌日
夜:深海宅(リビングルーム)


「お兄ちゃん。あの壁どうするの?」
リビングルームで考えこむ京夜に結衣が声をかけた。
「シンナーか何かで落とすしかないだろ」
怒気がこもる口調で返答する京夜。

思えば今朝はひどい状態だった。
京夜が朝目覚めると、部屋の壁一面にまるで暴走族がスプレーで書きなぐったような
”サノバビッチ!”
”ファック!オフ!”
”ゴーッーヘル!”

の文字や絵の落書きがされていたのだ。
部屋の隅にはカラースプレーが3コ転がっていた。

「お兄ちゃん。誰かに恨まれてるの?
「今まで根が曲がった奴は数人シメた事はあるんだが....一体誰がやりやがったんだ?」
”今まで、ここまでやる度胸のある奴がいたか?”
いくら考えても心当たりがない京夜。

「あの子も居ることだし、変な揉め事もちこまないでよ」
「お前やマチャミに手ェ出す奴は問答無用でブッ潰す!安心しろ」

「.....ねえ、お兄ちゃん。そのマチャミやめようよ」
京夜に梅こぶ茶を出しつつ、結衣は責めるように言った。
「何でだ?いい名前じゃないか」
「とにかく、その名前はやめてよ。もう!」
「わかったよ。別の名前か....う〜〜〜〜ん」
考え込む京夜。

その時、
”コトリ...コトリ..コトリコトリコトリ”
京夜の脳裏に何かが響く。


「名前ねぇ〜〜〜〜〜〜〜」

”コトリ..コトリ!コトリ!コトリ!コトリ!!
再び、京夜の脳裏に何かが響く。


「何か面倒くさくなってきたな〜〜〜
 ああ、もういいよ。
ノック!だ。横○ノックに決まり!
!!!?

呆れてモノが言えない結衣。
「将来、知事になるような。俺はあいつにそんな立派な人間になってほしい。よし!横○ノックに決定!


冷ややかな視線の結衣。
「あの子がスケベハゲになったらどうするのよ!
お兄ちゃん、
絶対あの子に刺されるよ

「そんな事ないって、とりあえずノックでいいじゃないか。
もう遅いし、俺達も寝るぞ」
「いい加減にしないと縁切るからね!お兄ちゃん!」
プンプン怒りながら自分の部屋に戻る結衣。

「じゃあ、ノック♪おやすみ」
リビングの電気を消した京夜は意気揚々自分の部屋に戻っていった。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

翌日
朝:深海宅(リビングルーム)


「お兄ちゃん。おはよ......ええっ!
朝、リビングルームに入ってきた結衣は絶句した。



ハゲがいた。
ハゲがソファに腰掛けていた。
それは京夜だった。

両側に不自然に毛を残して中央はツルツルの剃られており、その中央部分にはマジックでバーコードの様な横線が描かれていた。
脱力した感じでソファに腰掛け、眠り姫をぼんやり見つめる京夜。

「どうしたの!?お兄ちゃん!その頭?」
「朝起きたらこうなってた....」
力無く返答する京夜。
「呪いだわ!ノックの呪いだわ!
ヒステリックに叫ぶ結衣。

「呪いか....」
京夜は眠り姫の枕元にしゃがみこむと、そっと枕の端を上げてみた。
そこには案の定、電動バリカンとマジックがはさまっていた。

そうかもしれねぇな........
京夜はそうポツリつぶやくと、天を仰いだ。



★ ★ ★ ★ ★ ★

京夜は電話で螺旋にカツラの注文をしつつ、
”人の名前を面白半分に考えるモンじゃないな”
と深く反省せざるおえなかった。


その後、
結衣が彼女(のゼスチャー)から名前が琴里であることを聞き出した後、連日連夜、京夜を襲った謎の怪奇現象はピタリとおさまったという。
 


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