バイオレンス・ヒーローズ
第一話「幼き日の夢」
「……ねえ、悪司。そろそろ目指しましょうか。子供の頃、二人で言い合ってた夢」
「そうだな…、よっしゃ、この浜を起点にしてはじめるか」
「ここを?」
「おう、向こうの崖の上にリゾートホテル張りのでっけぇ事務所をおっ建ててよぉ」
「くすっ、楽しそう」
「ああ。トコと二人だったら絶対やり切れるさ。…世界制覇の一度や二度ぐらいはな」
「……」
…
それは、一つの物語の終焉。
これは、もう一つの物語の序曲。
正和40年、春。
悪司・元子が海を越え、中国にやってきた。あの沖縄で日本制覇を果たした後、久しぶりの休暇に飽きてきた二人は、悪司の
「平穏すぎるな…」
この一言で、二人はその足で船に乗り、そのまま中国のコウシュウまでやってきた。
このときの中国もすでにウィミィに敗戦した後で、世界は事実上ウィミィがすべて統治しているという状態に近い。
正和38年、夏。ウィミィはようやくニホンから負ったダメージが癒え、中国に対し宣戦布告した。そして次々と最新型の兵器を戦場に投入した。
しかし、中国もニホンと同様よく戦った、それはたとえば中国古来伝わる「武功」の達人たちが白兵戦、そして要人の暗殺などに活躍したからだ。さらには剣一本だけ持って爆撃機を落とした達人も居るといううわさもあったが、そっちのほう定かではない。
「武功」といえと体術でしかないのだが、その人間離れした中国兵の「武功」を、ウィミィ兵達は「オリエンタル・マジック」と呼んで恐れた。
その「武功」の達人たちの鬼神の如き奮戦によって、最先端兵器を次々に投入したウィミィでさえ押しに押された。
このままではニホンのときと同じように損害がひどくなりすぎる、そう判断したウィミィ上層部はすかさず新型爆弾をシャンハイ・ナンキンの両箇所に投下。オオサカで使ったときよりも改良された新型爆弾は、巨大な中国大陸そしてその膨大な人民の心をも揺るがせた。
この二発で中国の高官たちは戦意を喪失し、投下の三日後には降伏を申し出た。
船から下りて、そのまま観光気分で市内をぶらついていた二人は、日が遅れるのと同時に疲れを感じて、そのまま近くの宿に入った。
人間、身振り手振りで結構意志が伝わるんだなと、悪司は思った。さっき宿屋の主人とのやり取りのせいなのだろう。
「コウシュウの町もなかなかじゃねぇか」
「そうね、町のみんなも親切そうだったし」
「じゃあ手始めに、この町から手なずけるか」
「ええ。でも悪司、一つだけ問題があるの」
「ん、なんだ」
「言葉のことよ、悪司もわたしも中国語なんてできないでしょう、どうするの?」
元子には、先ほど悪司が宿屋の主人とのやり取りを思い出していた。それはとても会話とは言えないレベルのもので、結果的には悪司の叩きつけたお金のほうが通じていたとさえ思った。
「ああ、そんなことか、心配ねぇよ、ちゃんとあてはある」
「あて?」
「ああ、今夜そのことで一働きをするんだ、トコも来るか?」
「うん、そりゃ悪司が行くのならどこまでも付いて行くけど、でもいったい何をするの?」
「まあ、そのうちわかるから、今はちょっと休むわ。トコはどうすんだ、やることねぇんだったら添い寝してくれるか」
ポゥ。
と元子の頬が朱に染まる、これだけの事ならすでに照れるほどではないのだが、なぜかちょっと気恥ずかしくなったのだ。
それを見て、悪司は
「そんなに照れなくてもいいからよ、後でこますのに体力が必要だからな、いまは本当の“添い寝”だけだ」
と、そう言う。だけど、それを聞いた元子のベットの上に居る悪司に体を寄せた。顔色は元通りに戻ったが、今度はいくつもの「?」マークを浮かべてしまった。
「こますって?さっそく部下にする人を見つけたの」
「まあ、後でわかるって」
それだけ言うと、悪司は何もしゃべることなく瞼を閉じ、浅い眠りについた。元子もそれ以上聞く事はなかった。
春のコウシュウはまだ少し寒さが残っていたが、信頼しあい、お互い理解しあっている二人のあいだは暖かった、それはお互いの体温からなのかもしれないが、それ以上のものが二人にあったのだ、体温を超えたぬくもりが…。
「うまく入れたな」
夜もふけ、悪司と元子の二人は宿屋から抜け出して、町のはずれにある巨大な建物にきていた。それはオオサカにあるエデンのような建築物であった。
二人はすでに建物の敷地内に侵入して、その中の木の陰に隠れていた。
「ええ、でもここのウィミィ兵は何をしてるのかしら、エデンよりずっと警備がぬるいわ」
「そうだな」
「それで悪司、司令官室の場所はわかってるの?」
悪司は話してないが、ここに来た時点で、元子は悪司のやりたい事がわかった、恐らくはウィミィの司令官(女性上位のウィミィには女の司令官しか居ないだろう、エデンのときのように)をこまして自分達の言いなりにする気だろう。
中国語はむりだが、ウィミィ語なら悪司は話せるのだ。
「いや、適当にウィミィ兵をとっ捕まえて聞き出すさ」
「そうね」
「おっと、さっそくきた、ちょうどいい、足音は一つみたいだな」
その言葉どおり、遠くからウィミィ兵士の歩く音がする、しかも段々こちらに近づいてくるのだ。
「悪司、私に任せて」
「ああ」
そう言って、元子はその愛用の鞭を取り出すと、じっと息を潜め、チャンスをうかがった。そしてウィミィ兵が射程内に入ると、元子はなれた手つきで鞭を振り出した。
それはまるで蛇のように撓り、瞬きするまにそのウィミィ兵の首に絡み付いた、突然の出来事に驚愕し、首をしめられているので、声も出せずにウィミィ兵はもがいている。
「静かにしろ!死にたくなきゃな」
低く、ドスの効いた声で、悪司はウィミィ兵の耳元でこうしゃべった、それはかなり殺気をこめた一声で、そのウィミィ兵も命の危険を察したのか、鞭を解こうと首にある手もそのまま動かず、言われた通り静かにした。
だが苦しいのか、それとも恐怖からなのか、息が荒いのはどうしようもなかった。
「一つだけ聞く、ここの司令官はどこにに居るんだ?」
「う…え……、さ…い上…階だ…」
「ほんとうか、そりゃ?」
悪司のその言葉に合わせるかのように、元子の鞭はさらにそのウィミィ兵の首をしめた。
結婚して数年、常に悪司の傍らに居て彼をサポートしてきた元子には、簡単なウィミィの単語をいくつも覚えていた。
たとえば今の「本当か」かそうだ、悪司がウィミィ人から情報を聞き出すために幾度も使った事を聞いたことがあるため、自然と理解してしまったのだ、そしてほぼ本能的に悪司の助けになるような行動を身につけていた。
すでに声をあげる事もままならない、その不運なウィミィ兵は頭を上下に振り…頷く事しかできなくなった。
その反応から、恐らく真実であると判断した、すると悪司はさっとウィミィ兵の延髄に手刀を入れ、気絶させた。
「どうやら一番上らしいが、どうやっていこうか…」
「そうね…」
悪司も、そしてなれた手つきで鞭をしまう元子も、今回の作戦の一番の難関であるだろう建築物の内部侵入に頭を悩ませる。
やがて、元子先に提案した。
「こう言うのはどう、悪司がこの軍服に着替えて、ウィミィ兵のふりをするの、夜は中でも暗いから恐らく大丈夫だわ」
「ふんふん、それで」
「それでね……」
建物内の一室、ドアのところには「司令官室」と書かれている。
そのなかで、憂いだ顔をした一人の女性が居た。
「悪司…」
その女性は、確かにそうつぶやいた。
続く… 第二話「少林僧」
後書き
どもども、皆さんはじめまして、高森です。
こうしてアリスソフト様に投稿させていただいたのははじめてです、今ゲームでは三週目ですが、二週目の元子シナリオで創作意欲がどっと湧いてきたために書いたのがこれです。
さて、このSSは基本的に元子EDの後のストーリーということで、わたしのプレイしたデータをもとに出場人物を決めています。中心になる人物は山本夫妻、OO夫妻(もう少し伏せておきますが、恐らくはばれますでしょう)、OO姉妹(これも伏せ)、そして某教団の皆さん…。
以上が決まっているキャラ達ですね、あとはオリキャラも出ると思いますし、さらにはタイトルのさす…………いけない、ちょっとしゃべりすぎました、とにかくこんな物語ですが、よかったら最後まで付き合ってください。では、まだ第二話で。
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