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オオサカ・未完成闘争曲 山沢 麻美編 |
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大都市オオサカの西側に位置するハルセ。 そこには、オオサカの管理を行う市議会と呼ばれる機関がある。 私の名前は山沢麻美。かつて私は、その市議会に所属していた。 でも、今は市議会を辞め、ある人のもとで働いている…………。 私が市議会を辞めることになった事件。 それを思い起こして、今、私はペンを走らせている。 決して忘れることのないように、想い出が色濃く残っているうちに、 できる限り書いていこうと思っている…………。 |
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1話 『噂』 正和35年 5月 10日 正午 オオサカの全体を管理し、統治する市議会という機関が、ハルセにある。 管理課、福祉課、生活課、治安課という部署があり、市民のために、みんな、身を粉にして働いている。 そのため、今日も市議会には、色々な苦情の申し立てが殺到している、のだけど…………。 管理課・事務室。 ここは、管理課の職員の部屋。私の所属する管理課の人間が、事務などを行うときに使用する部屋だ。 私の目の前には、今しがた届けられた書類が、山のように積まれている。 麻美「はぁ…………」 鴉葉「麻美ちゃん、どーしたの?なんか元気がないみたいだね〜」 書類の山を見て、思わずため息をつく私に、同じ管理課に所属する鴉葉さんが、声をかけてきた。 鴉葉さんは、私より数ヶ月先に管理課に配属された人で、何というか、軽薄な人だと思う。 正直、こんな人がどうして公務員をやってるのか、いまだに疑問には思っているのだけど…………。 麻美「ここ最近、わかめ組の管轄地域からの苦情が、増加してるんです…………」 ノロノロと書類に目を通しながら、私は疲れた様子で返事をした。 ちなみに、書類が山積みになってるのは私の机だけだった。 鴉葉「ひょっとして…………、これ、全部苦情の書類なの?」 呆れたように言う鴉葉さんに、私はこくりと頷いた。 生活課で応対した市民の苦情は、その市民の所属する地区の、管理組合の責任ということになる。 管理組合への要請という形で書かれる苦情の書類は、そのまま管理組合の上にいる監督官である者のもとに、 届けられることになっている。 つまり、何事もなければ書類は一枚もないのだけど、現在、私の机の上にある書類は、軽く200枚を越えている。 ちなみに今日は、まだ少ないほうだ。 いくら処理しても、次から次へと苦情が殺到してくる状態が、ここ何日も続いている。 さすがに、いい加減イヤになってきたのも事実だけど…………。やめるわけにもいかない。 鴉葉「あらら…………、すごいね〜、こりゃ」 おかしそうに、鴉葉さんは私の持っていた書類を手にとって眺めている。 確かその書類は、マッハピヨの大群の退治依頼、だったかな…………? 数が多すぎて、もう、どれがどれだかわかんない…………。 麻美「おかげで最近、寝不足なんですよ…………」 そういって、私は机に突っ伏した。 もう何日も、まともに眠っていないような気がする。 一応、睡眠はとっているけど、身体が休みを受け付けていないみたい。あと頭も、かな…………。 鴉葉「まぁ、わかめ組のほうも色々とゴタゴタが続いているからねぇ〜」 ウンウンと頷く鴉葉さん。 鴉葉「でも、めんどくさいなら、ほっとけばいいのに。ど〜せ誰も文句を言うわけないんだし」 の〜んとした鴉葉さんの言葉に、私は返す言葉もない状態だった…………。 私の管轄しているわかめ組は、戦争が終わってから、現組長の市橋蘭さんに代替わりをした。 女性上位のウィミィの政策によるものなんだけど、そのせいで、わかめ組は先代のもとで働いていた部下と、 蘭さんの直属の部下との間での対立が起こっている。 ここ最近は、さらにその対立が酷くなっているらしい。 おかげで、わかめ組の本部のあるセンリから西の地域では、実質的に半独立の状態になってる。 混乱したわかめ組が、支配地域をしっかり管理できるはずもなく、 そのせいで、私へまわってくる書類が増えているというわけで…………。 なんか、考えてて哀しくなってきた…………。 麻美「はぁ…………」 机に突っ伏した状態で、再度ため息をつく私の耳に、鴉葉さんのポツリと漏らした呟きが聞こえた。 鴉葉「まぁ、これからもっと忙しくなるんだけどねぇ…………」 麻美「…………え?」 今…………、なにか聞き捨てならないことを聞いたような気がする。 麻美「もっと忙しくなるって…………?どういうことです?」 朦朧とした頭を奮い立たせ、身体を起こして、私は質問した。正直、嫌な予感はしていたけど…………。 鴉葉「あれ?知らないの?」 さも意外そうな声で、鴉葉さんが驚いた顔をする。 麻美「……………………何がです?」 怪訝な顔をする私に、鴉葉さんはいつも通りの笑顔で、とんでもないことを言ったのだ。 鴉葉「麻美ちゃんの管轄してるわかめ組と、僕の管轄の奉仕青年団との間で、近いうちにドンパチが始まるらしいよ」 麻美「…………どんぱち?」 鴉葉「戦争、ってこと」 麻美「ええっ!?」 文字どおり、初耳だった。いったい、どういうことなの!? 鴉葉「ま、うわさって言うか、ほぼ事実なんだけどねぇ」 驚いた様子の私に、鴉葉さんはざっと説明をしてくれた。 わかめ組の先代の名は山本百発という男の人で、現在は戦死したことが確認されている。 そのあとを継いだのが、現在の組長の市橋蘭さんだけど、前組長の部下達を束ねるのに苦労している。 そして、鴉葉さんの管轄する奉仕青年団。ここ1、2ヶ月の間に勢力を拡大していることは知っていたけど、 その原因は、一人の人物にあるらしい。 そして、その人こそが、わかめ組と奉仕青年団との対立の原因らしい。 麻美「山本…………悪司?」 鴉葉「そう。その悪司って人がなかなかのやり手でね、戦争にいってる間にわかめ組を乗っ取られたから、 奉仕青年団を使って取り返そうって、もくろんでるわけなの」 前組長の息子。その人が、現在の奉仕青年団を取り仕切っているらしい。 そして、彼がわかめ組と、一事を構えようとしているのは明白なのだとか。 麻美「そこまでわかってて…………、どうして止めようとかしないんです!?戦争なんですよ!?」 声を荒げる私に、鴉葉さんは肩をすくめた。 鴉葉「むりだって。監督官の僕の言う事なんて、ちぃ〜っとも聞いちゃくれないからねぇ。まぁ、こっちからは仕掛けない ようにって、釘は差しといたけど」 でもね、多分、わかめ組のほうから仕掛けるでしょ。と、ニコニコと邪気のない顔で、とんでもないことを言う。 戦争なんてやってる場合じゃないのに…………。 いまだ前大戦のきずあとの復興もままならないというのに、ニホン人同士で争うなんて…………。 麻美「止めなきゃ…………!」 私はいたたまれなくなって、立ち上がった。 鴉葉「あれ?どこにいくの?」 麻美「決まってます!わかめ組の本部に行って、戦争なんてやめさせないと…………!」 わかめ組の組長の蘭さんは、監督官になったばかりの新米の私に、親切にしてくれた人だ。 あの人なら話せばわかってくれるはず…………。そう考えて、私は部屋を飛び出した。 鴉葉「あ、ちょっと麻美ちゃん、この書類はどうすんの?」 麻美「お任せします!!」 鴉葉「……………………え!?」 さりげなく鴉葉さんに仕事を押しつけると、私は市議会本部を出た。 麻美「とにかく、急がないと…………」 鴉葉さんが言うには、今日か明日にでも、すぐに斬った撃ったの、ドンパチが始まってもおかしくないらしい。 手遅れにならないように願いつつ、私はわかめ組の本部のあるセンリへと駆け出していた。 …………しかし、すでに遅きに失したことを私が知るのは、それからすぐのことだった。 2話 『闘争』へ |